実施 2026.06 ・ 更新 2026.08.18
ウィンブルドン、AIエージェント活用でコンテンツ移行を1人4週間に短縮
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- アプリで知りたい情報にたどり着けない
- 古いサイトの作り直しが進まない
- ためた記事や写真を活かせていない
どのようなAIの取り組み?
AIエージェントを使った開発とデータ基盤の刷新により、15,000点超のコンテンツ移行と対話型のファン向けAI機能を用意した取り組み
業種
スポーツ大会運営(メディア・広告・コンテンツ)
取り組み領域
公式アプリ・Webサイトのファン向けデジタル体験
使ったAI
IBM watsonx/AIエージェント(IBM Bob)
主な成果
コンテンツ移行のマッピングを技術者1人・約4週間で完了
テニスのウィンブルドン選手権を主催するオール・イングランド・ローンテニス・クラブとIBMが、2026年大会に向けたファン向けデジタル機能の強化を発表しました。公式アプリとwimbledon.comは全面的に再設計され、IBM watsonxのAIを土台に、試合の流れを左右したプレーとその理由を示す「Key Moments」、自然な言葉での質問に会話形式で答える「Match Chat」が加わります。あわせて、ファンや選手、放送関係者、メディアがデジタル上でどう関わっているかを調べたデータ分析をもとにデータ・アーキテクチャーを見直し、記事・動画・写真など15,000点以上のデジタル資産と、それらを結び付けるメタデータの関係性を新しい基盤へ移しました。この移行では、AIエージェント駆動の開発支援「IBM Bob」を使い、コンテンツ間の関係を表すナレッジ・グラフの構築と、コンテンツ構造を組み替えるワークフローの開発が進められています。
出典:ウィンブルドンとIBM、2026年大会に向け、AIを活用した新たなファン体験と刷新されたデジタル・プラットフォームを発表 | 日本アイ・ビー・エム株式会社のプレスリリース 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
公式アプリとwimbledon.comは、試合のスコアや統計をファンに届ける場として長く使われてきました。ただ、知りたい数字を探し、複数の画面を行き来する——この手間は、試合が動いているわずかな時間の中では決して小さくありません。編集部の見立てでは、ここでの困りごとは情報の量ではなく、必要な瞬間に必要な形で届いていなかったことにあります。
もう一つ、蓄積した側の事情もあります。記事・動画・写真を含む15,000点以上のデジタル資産は、それ自体より、資産同士を結び付けるメタデータの関係性のほうが移しにくい。関係性を保ったまま新しいアーキテクチャーへ載せ替えられなければ、パーソナライズも刷新も設計図の段階で止まってしまいます。
どうやって、うまくいったのか
ファンの自由な質問を受け止める「Match Chat」は、汎用の対話AIをそのまま置くのではなく、ウィンブルドンの編集スタイルとテニス特有の表現に基づいて学習された複数のAIエージェントと、用途に応じたモデル群を組み合わせる形で構築されました。回答の中身はライブの試合データ、分析情報、過去のパフォーマンス情報を拡張したデータ・セットから引き出し、語り口はエージェント側が担う。この「根拠を出す層」と「話し方を決める層」を分けた設計が、何を聞かれるか分からない入力を許しながら大会としての一貫した表現を保つ条件になったと考えられます。一部の回答に関連する写真や動画を添える作りも、文字だけでは伝わりにくい場面の理解を補う工夫です。
「Key Moments」が既存の「Likelihood to Win」を置き換えず、拡張として設計された点も見逃せません。勝利確率という数字は、算出の理由が見えないと眺めて終わりがちで、試合の流れを左右したプレーとその理由を並べて示すことで初めて、数字が読み解きの手がかりに変わります。予測モデルを作り直すのではなく、その出力に説明を足す方向を選んだ判断は、既存資産を活かしたまま納得感を高めるやり方として応用範囲が広い。
基盤側では、機能より先に構造を整える順番が取られました。誰がどのようにデジタル・エコシステムに関与しているかというデータ分析と調査を出発点にユーザー・ジャーニーを組み立て、コンテンツ間の関係はナレッジ・グラフとして再構成し、そのうえでコンテンツ構造を新プラットフォーム向けに組み替えるAI駆動のワークフローを開発しています。人手で図解しきれない関係性をグラフとして持たせた設計が、パーソナライズを機能単体の工夫ではなくデータ構造の側から成り立たせています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
移行作業では、従来はIBMの専門家4〜5人のチームで数カ月を要する可能性があったマッピングを、エンジニア1人が約4週間で完了し、15,000件のコンテンツ資産の抽出は47分で終えています(いずれも実測値で、環境によって結果が異なる旨が注記されています)。一方、Key MomentsやMatch Chatといったファン向け機能は6月29日から7月12日の大会で提供される段階にあり、その効果はこれから確かめられます。オール・イングランド・クラブによると、2025年には一連の取り組みで全プラットフォームのエンゲージメントが前年同期比16%増、myWIMBLEDONの登録者数は過去1年で39%増となっています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、長年ためた記事や画像、資料を新しい基盤へ移したい場面です。ファイルを運ぶだけなら人手でも済みますが、資料同士の関係やタグ付けのルールを引き継ぐ作業は量が増えるほど破綻します。関係性をグラフとして表現し、組み替えの手順をAIに任せる進め方は、資産の点数が多いほど効いてくるはずです。
逆に、元の資料にメタデータやカテゴリの一貫性がほとんどない場合は、移行前に整える工程が必要になり、この事例のようには進みません。対話型のAI機能についても、Match Chatが成り立っているのは、スコアや統計のように答え合わせができるデータが常時そろっているからです。回答の正しさをその場で照合できる記録がない領域では、同じ形をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。
まず試すなら、手元の資料10件ほどについて「どれとどれが関連しているか」を書き出し、その関係をAIに再現させてみる。人が持っている暗黙のつながりが機械で追える形になっているか、そこで見えてきます。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本アイ・ビー・エム株式会社(IBM)
情報通信分野の企業。AI基盤「IBM watsonx」やAIエージェント駆動の開発支援「IBM Bob」などを提供し、ウィンブルドン選手権のデジタル・プラットフォーム構築を担う。資本金1053億円、代表者は山口明夫。
オール・イングランド・ローンテニス・クラブ
出典・参考情報
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