実施 2025.01 ・ 更新 2026.08.18
医療用語に強い音声認識と生成AIで、薬局の会話から服薬記録をつくる仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 会話の内容を後から手で記録している
- 専門用語が多く音声入力が使えない
- 外部サービスに機微な情報を出せない
どのようなAIの取り組み?
医療用語に対応した音声認識APIと生成AIを組み合わせ、患者と薬剤師の会話から服薬指導と記録作成を支援する機能を、調剤薬局向けサービスに組み込んだAI取り組み
業種
調剤薬局向けシステム開発(IT・通信)
取り組み領域
服薬指導・薬歴作成の支援
使ったAI
音声認識API「AmiVoice API」と生成AIの連携
主な成果
医療用語を高い精度で文字化し、薬剤師から高評価
三菱電機デジタルイノベーションは、調剤薬局向けの次世代コミュニケーションサービス「AnyCOMPASS」をクラウド基盤で提供しており、2023年から電子薬歴サービスを展開しています。この基盤の上に、2025年1月に「AIアシスタント」機能を公開しました。患者と薬剤師のやり取りを音声認識でその場で文字に起こし、生成AIにつないで服薬指導と薬歴作成を支える仕組みです。音声認識には、アドバンスト・メディアが開発者向けに提供する「AmiVoice API」を採用し、医療分野の言葉に対応したエンジンを利用しています。2024年の展示会に出したデモでは無料で使える音声認識APIで実装していましたが、医療情報を扱う以上はセキュリティの担保が外せず、接続先を限定したうえで暗号化通信を行える条件を満たすAPIへと切り替えています。
出典:導入事例 三菱電機デジタルイノベーション株式会社 - AmiVoice Cloud Platform 発行元:株式会社アドバンスト・メディア
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
患者と薬剤師の会話を薬歴に反映するには、話された内容を正確に、しかも待たせずに取得しなければなりません。加えて医療情報を扱うサービスであるため、開示するURLを限定し、セキュアなプロトコルで暗号化通信を行うという条件も課されていました。展示会に出したデモは無料で使える音声認識APIで組まれており、この条件を満たせていませんでした。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「音声認識の精度が足りない」ことではなく、医療という領域で製品として世に出せる水準の要件を、一度に満たす部品が見つからなかったことにあります。リアルタイム性、通信の安全性、専門用語への強さは、どれか一つを妥協しても薬局の現場では使えません。動くものを作れるかどうかではなく、動くものを医療現場に置けるかどうかが壁になっていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
音声認識そのものを自前で開発せず、外から調達する部品として位置づけた切り分けが、この構成の出発点になっています。AIアシスタントで価値が生まれるのは、会話の内容をもとに服薬指導や薬歴作成を助ける生成AI側の設計であり、声を文字に変える工程は品質の定まった既製の仕組みに委ねる。API方式で自社サービスへ簡単に連携できることを採用理由の一つに挙げている点からも、実装の負担を軽くして本来注力すべき領域に手をかける意図が読み取れます。
汎用ではなく医療分野に特化したエンジンを選んだ判断も、後ろの工程まで見通したものだったと考えられます。文字起こしの結果は、そのまま生成AIへの入力になります。薬の名称や症状の言い回しを取り違えれば、その誤りは薬歴の文面にまで流れていくため、入口の精度が出力の精度を決めるという連鎖が働く。専門用語に強いエンジンの採用は、精度を一段上げる工夫というより、崩れの起点をふさぐ設計と読めます。
選定の入口が、オンプレミス型の調剤薬局向けパッケージ「Melphin」で同じ提供元の医療向け製品をすでに使っていた点にあることも見逃せません。社内のどこかで動いている技術を起点にすれば、精度の傾向や運用上のクセといった判断材料が最初から手元にあり、要件に合うかどうかを短い時間で見極められます。医療情報を扱う以上、接続先の限定や暗号化通信は譲れない前提であり、そこを満たす選択肢に早く行き着けたことが、デモ止まりだった機能を製品として出せる段階へ押し上げたのだと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
医療用語を含む会話が高い精度で文字に変換され、その内容をリアルタイムに画面へ表示できるようになっています。文字起こしの精度が高いぶん、受け取った生成AIによる薬歴の自動生成の精度も高くなり、サービスを使う薬剤師から非常に高い評価が寄せられています。運用面では、管理画面で薬局ごとの利用時間と課金金額を把握できるため、薬局への請求金額の計算も素早く行える点が利点として挙げられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、その場の会話や口頭のやり取りが、そのまま業務記録の元データになっている現場です。相談を受けて記録を残す窓口、点検や修理の受付、訪問先でのヒアリングなどは、話し終えた時点で記録の材料がそろっているため、文字化と生成をつなぐ構成が素直にはまります。業界特有の言葉が多い領域ほど、汎用のエンジンと専門エンジンの差が結果に表れやすい点も、この事例と共通します。
一方で、記録の型が相手ごとにばらばらで、何を書き残すかが担当者の判断に委ねられている業務では、文字起こしができても後段の生成が安定しません。会話以外の情報、たとえば手元の書類や表情から状況を読み取って判断している業務も、音声だけを入口にすると抜けが生じます。機微な情報を扱う場合は、通信経路や保存先の条件を先に固めないと、そもそも検証を始められません。まず試すなら、自社で日常的に交わされる会話を数分だけ録音し、社内で使う言葉や商品名がどこで崩れるかを聞き比べてみる。崩れる箇所が特定できれば、専門用語への対応を求めるべきか、記録の型を先に決めるべきかが見えてきます。
この事例は2025年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:音声・音響
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社アドバンスト・メディア
日本語の音声認識を長年自社で研究・開発し、開発者向けの音声認識API「AmiVoice API」や、医療向けパッケージ製品を提供している。医療・保険・金融など業界専門のエンジンを用意し、AmiVoice Cloud Platformを通じて各種音声認識サービスを提供している。
三菱電機デジタルイノベーション株式会社
出典・参考情報
導入事例 三菱電機デジタルイノベーション株式会社 - AmiVoice Cloud Platform
発行元:株式会社アドバンスト・メディア
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
