実施 2026.07 ・ 更新 2026.08.18
北海道中央バスの都市間高速バス、AI需要予測で運賃を変動させる価格設定
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 繁忙期に満席で売り逃している
- 閑散期の空席が埋まらない
- 価格の決め方が経験頼り
どのようなAIの取り組み?
AIによる需要予測をもとに都市間高速バスの運賃を変動させる、北海道の高速バスとして初のダイナミックプライシングに取り組んだ事例
業種
都市間高速バス(運輸・物流)
取り組み領域
運賃設定・収益管理
使ったAI
需要予測AI(ダイナミックプライシングサービス「D+」)
主な成果
2026年7月運行便から運用開始、収益の最適化を見込む
ダイナミックプラスは、自社のダイナミックプライシングサービス「D+(ディープラス)」が、北海道中央バスの共同運行する都市間高速バスに導入されると発表しました。対象は札幌と釧路を結ぶスターライト釧路号、札幌と帯広を結ぶポテトライナー、札幌と北見・網走を結ぶドリーミントオホーツク号、札幌と函館を結ぶ高速はこだて号の4路線で、くしろバス、阿寒バス、十勝バス、北海道拓殖バス、ジェイ・アール北海道バス、北都交通、網走バス、北海道北見バス、函館バスが路線ごとに共同運行しています。仕組みとしては、過去の販売実績や予約状況、季節性といったデータをもとにAIが需要を予測し、その予測から運賃を算出します。予約開始は2026年5月1日、運用は同年7月1日の運行便から始まります。北海道の高速バスでダイナミックプライシングが導入されるのは、これが初めてとなります。
出典:北海道中央バスの都市間高速バスにてダイナミックプライシングサービス「D+(ディープラス)」導入 - 価格の未来をつくる|ダイナミックプラス株式会社 発行元:ダイナミックプラス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
発表資料には、期待される効果として繁忙期における機会損失の抑制と閑散期の利用促進が並んでいます。裏返せば、季節や曜日によって乗車率が大きく振れる路線を、ひとつの決まった運賃で売り続けてきたということです。満席になる便では収受できたはずの分を取りこぼし、席が空いたまま走る便では固定された運賃が利用のきっかけを生まない、という状態が続いていたと読めます。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は運賃が高いか安いかではなく、需要の山と谷を運賃の側で受け止める手立てがなかったことにあります。札幌と道内各都市を数時間かけて結ぶ路線は、帰省や観光の時期に需要が集中しやすく、その波を運行本数の増減だけで吸収するには限界があります。価格が一定であるかぎり、混む便はさらに混み、空く便は空いたまま。需給のズレが放置される構造そのものが、取り組みの出発点だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
価格の算出に使うデータを、過去の販売実績・予約状況・季節性という、運行事業者の手元にすでに蓄積されている情報に絞った設計が効いていると考えられます。座席の売れ行きは予約システムを通じて日々記録されるため、新たにセンサーを置いたり現場に入力作業を増やしたりしなくても、予測に必要な材料がそろいます。データを集めるところから始めなくてよいという条件は、AI活用の取り組みが立ち上がるまでの時間を大きく左右します。
複数事業者が共同運行する路線をまとめて対象にした点も見逃せません。4路線にはそれぞれ2社から5社が関わっており、運賃の考え方を各社が個別に判断していては、同じ便に別々の理屈が持ち込まれかねません。価格の算出を共通のサービス側に置く構成は、担当者の勘や交渉に頼らない一本の基準を路線全体に通すやり方であり、関係者が多い事業ほど価値が出る使い方です。
予約開始を5月1日、運用開始を7月1日と、2か月の間隔をとった進め方にも意味があります。需要に応じて価格を動かす仕組みは、予約が積み上がっていく過程を観測して初めて働くもので、販売期間が短ければ価格を動かす余地そのものが生まれません。売り始めてから出発までの時間を確保する組み立ては、仕組みを機能させる前提条件を先に整えた判断だと言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
運用は2026年7月1日の運行便から始まるため、発表時点では実績としての成果は示されていません。挙げられているのは、繁忙期における機会損失の抑制、閑散期の利用促進、価格の納得感の向上、安定した運行収益の確保という期待される効果です。あわせて、予約・販売状況に応じた柔軟な価格設定によって、混雑の分散や空席の有効活用といった需給バランスの適正化に寄与するとされています。利用者側の「価格の選択肢が増える」という位置づけを効果に含めている点は、収益側だけを見た施策ではないという整理として読めます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、事前予約で売る商品を扱い、席や部屋のように供給量が短期的に増やせず、いつ・いくらで売れたかが記録として残っている事業です。宿泊、興行、貸切スペースのように、需要が日付単位で大きく振れる商材であれば、この事例と同じ考え方が当てはまります。逆に、当日その場で売れるかどうかが決まる商売や、販売期間が数日しかない商材では、予約の積み上がりを見て価格を動かすという前提が成り立ちにくく、効果は出にくいでしょう。運賃や料金の変更に社外との合意や事前の周知が必要な事業でも、仕組みより先に合意形成の設計が必要になります。
まず確かめたいのは、自社の販売データが「いつ売れたか」まで残っているかどうかです。合計金額だけが月次で残っている状態では需要の波は見えません。直近1年分の予約を出発日・利用日ごとに並べ、残席や空きがどう減っていったかを一度図にしてみる。そこに山と谷がはっきり出るなら、価格を動かす余地はあります。
この事例は2026年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ダイナミックプラス株式会社
AIや数理モデルを活用したダイナミックプライシング(価格変動制)システムの開発事業と、企業の価格戦略や販売戦略の高度化を支援するコンサルティング事業を手がける。「価値と価格を科学して、価格の未来をつくる」をミッションに掲げる。
北海道中央バス
出典・参考情報
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