実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.24
水圧データのAI分析で水道設備の異常を早期検知、神戸市水道局との研究から実用化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 設備の故障が起きてから対応している
- 点検にまわす人手が足りない
- センサーの数値を活かせていない
どのようなAIの取り組み?
水圧や流量のIoTデータをAIで分析し、正常時の基準値からの逸脱として水道設備の異常を早期に捉える仕組みを、自治体との共同研究からサービスへ広げたAI取り組み
業種
上水道事業(公共・公益事業)
取り組み領域
水道設備の監視・保全
使ったAI
AI異常検知サービス(IoTデータ分析)
主な成果
研究で配水減圧弁の故障予兆検知を実現し、オプションサービスとして提供開始
日立システムズは、水道事業体向けの「CYDEEN 水インフラ監視サービス」のオプションとして、AI異常検知サービスの提供を2025年5月に開始しました。配水管やマンホールなど住民の生活圏に近い場所に設置したセンサーから水圧や流量のデータを集め、過去一定期間の値をAIで分析して正常時に取りうる基準値を生成します。そのうえでリアルタイムのIoTデータと突き合わせ、基準値からどれだけ離れているかをレポートの形で可視化し、配水状態の微細な変化から異常を捉える構成です。もとになったのは、2023年7月から水圧監視システムを運用してきた神戸市水道局との共同研究で、配水減圧弁の故障予兆を検知した研究成果を、他の弁やポンプ類、流量データによる漏水可能性の分析にも使える仕様に広げてサービス化しました。
出典:AIを活用した水道設備の異常検知サービスの提供を開始:ニュースリリース:2025年:株式会社日立システムズ 発行元:株式会社日立システムズ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
日本の配水管は高度経済成長期に整備されたものも多く、老朽化が進んでいます。漏水・破損事故は年間2万件以上発生し、水の安定供給のために事故の未然防止や早期復旧が求められる一方、給水人口の減少にともなう水道事業の経営悪化、水道局員や事業者の人手不足、地域や地形による個々の設備維持・管理の難しさが重なっていました。メンテナンス作業の効率化と精度向上が急務、という状況です。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は事故の件数そのものではなく、限られた人数で広い管路のどこを先に見るべきかを決める材料がなかった点にあります。神戸市水道局では2023年7月から市内60か所以上で水圧データが取得されていましたが、数値が手元にあることと、それが「いつもと違う」と判断できることの間には距離があります。人手が減り続ける前提に立てば、見るべき場所を絞り込む作業そのものを機械側へ渡さないかぎり、点検は事故の後追いから抜け出せなかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
すでに稼働している監視サービスのデータに新しい役割を与える、という入り口の取り方が起点になっています。神戸市水道局の配水減圧弁付近で運用されてきた水圧データの二次活用として検討が始まったため、検証に必要な実測値が最初から手元にありました。新たな計測網を一から敷く必要がなく、投資判断の前に「そのデータで何が見えるか」を確かめられる状態から出発できた点は大きいと考えられます。
取り組むテーマを現場のニーズから絞り込んだ進め方も効いています。神戸市水道局をはじめとする自治体へのヒアリングで、水の流れの通常と異なる挙動を事前に検知して故障予知につなげたいという要望を把握し、研究の対象を配水減圧弁の故障予兆という一つの設備・一つの事象に限定しました。異常検知は対象を広げるほど何を異常と呼ぶかが曖昧になりますが、狙いを一点に定めたことで、検証の合否をはっきり判定できる形になったはずです。
判定の基準そのものをAIに作らせる設計も、この手法の勘所でしょう。過去一定期間のデータから正常時に取りうる水圧・流量の幅を生成し、リアルタイムの値がそこからどの程度逸脱しているかを見る構成にすると、「何度以上なら異常」といったしきい値を人が事前に決め切る必要がなくなります。さらにサービス化の段階で、研究対象の配水減圧弁に限らず他の弁やポンプ類、流量による漏水可能性の分析にも適用できる仕様へ広げており、一つの設備向けの作り込みで終わらない拡張の余地が確保されています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
神戸市水道局との研究では、水圧データのAI分析によって配水減圧弁の故障予兆を検知することが実現し、その結果は2024年10月の令和6年度日本水道協会全国会議(水道研究発表会)で神戸市水道局から発表されました。これを反映したAI異常検知サービスは2025年5月に提供が始まった段階です。水道管破裂のような大きな事故の前に早期メンテナンスができること、住民への突発的・長時間の断水の影響を減らせること、水道局員の復旧作業の負担軽減やメンテナンス効率化につながることは、いずれもサービスが見込む効果として示されている内容になります。
うちでも使える?
応用しやすいのは、設備の状態が数値として継続的に取れていて、平常時の値がある程度の幅に収まる対象です。水圧や流量のように、時間帯や季節による変動を含めても正常な範囲を過去データから描ける現象であれば、基準値との差を見る考え方は業種を問わず転用の余地があります。すでに監視システムやIoT機器を入れている企業であれば、新しい計測器を増やさずに検討を始められる点も現実的でしょう。
一方で、稼働条件が案件ごとに大きく変わる設備や、そもそも計測器が付いていない現場では、データを取るところから費用が発生するため同じようには進みません。検知した後に誰がどの順番で現場へ向かうかを決められない組織でも、通知が増えるだけで終わってしまいます。異常を見つける仕組みと、見つけた後に動く体制は、必ず対で考える必要があります。
試すなら、いま計測できている値を一つ選び、過去1年分を並べて平常時がどの範囲に収まるかを眺めてみるところから。その幅がきれいに描ければ、逸脱を捉える仕組みは成り立ちやすくなります。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:機械・設備・位置
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立システムズ
さまざまな業種の課題解決で培った業務知識やノウハウを持つ人財が、日立グループ各社やビジネスパートナーと連携し、Lumada事業を中心に顧客のデジタル変革を支援するIT企業。水道事業体向けには「CYDEEN 水インフラ監視サービス」を提供している。
神戸市水道局
出典・参考情報
AIを活用した水道設備の異常検知サービスの提供を開始:ニュースリリース:2025年:株式会社日立システムズ
発行元:株式会社日立システムズ
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