実施 2025.03 ・ 更新 2026.08.21
宇都宮市の水道管の漏水をAIで判定する実証、漏水判断の8割置き換えが目標
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 熟練者しかできない判断がある
- 技術者の高齢化と後継者不足
- 点検や巡回に人手を取られている
どのようなAIの取り組み?
水道管の漏水調査を「音の収集」と「診断」に切り分け、AIによる漏水判定の有用性を官民連携で検証する実証に取り組んだ事例
業種
上下水道事業(公共・公益事業)
取り組み領域
水道管の漏水調査
使ったAI
AI漏水検知ツール「SuiDo」(漏水音の解析AI)
主な成果
漏水判断の80%をAIに置き換えることを目標に実証を開始した段階
宇都宮市上下水道局の漏水調査エリアを舞台に、KDDIとwavelogyが2025年3月1日から、水道管の漏水をAIで見つける実証を始めています。検証の柱は、漏水調査を「漏水音の収集」と「漏水診断」の2つに分け、簡便なツールで音を集められるようにしたうえで、集めた音をモバイルネットワーク経由で分析環境へ送り、wavelogyのAI漏水検知ツール「SuiDo」が診断を担う流れが実務で機能するかどうかにあります。専門の漏水調査技術者がAIの診断結果を分析してフィードバックし、判定の確度を高められるかどうか、また判定結果と漏水音データを統合して可視化する仕組みが技術者の育成にどう寄与するかも、検証項目に含まれています。初年度はデータ収集の運用確立と蓄積に充て、2028年度の実用化を目指す段階的な計画です。
出典:宇都宮市の水道管の漏水をAIで発見する実証を官民連携で開始 | トピックス | KDDI株式会社 発行元:KDDI株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
高度経済成長期に整備された水道インフラの経年劣化により、年間2万件以上の漏水・破損事故が起きています。ところが漏水調査に必要な技術は専門性が高く、人口減少による人手不足のなかで技術者の確保・育成・技能の伝承が難しくなり、地震などの災害時には調査・復旧の長期化も課題になっていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は調査に当たる人数の不足そのものではなく、「現場で音を集める作業」と「漏水かどうかを見極める判断」が、一人の熟練技術者のなかで不可分に結びついていた点にあります。判断が耳という個人の技能に閉じている限り、人を増やしてもすぐに戦力にはならず、育成には年月がかかる。事故の増加に育成が追いつかない構造そのものが、解くべき対象だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
漏水調査を「漏水音の収集」と「漏水診断」の2つに切り分けた設計が、この実証の起点になっています。集音は簡便なツールで担えるようにし、判断はAIと専門技術者の側に寄せる。この分解によって、人手を必要とする部分と熟練を必要とする部分が別々に扱えるようになり、それぞれに違う打ち手を当てられるようになりました。特定の技術・技術者によらない収集手法の検証をわざわざ独立した検証テーマに立てているところに、切り分けを本気で成立させようとする意図がうかがえます。
専門技術者がAIの診断結果を分析してフィードバックする工程を、検証項目そのものに組み込んだ点も見逃せません。熟練者をAIで置き換えるのではなく、熟練者を評価者の側に配置し、その知見をAIの診断確度の向上に還流させる位置づけになっています。現場に残る技能を、個人の中にとどめず判定の精度という形で蓄えていく作り。技能の伝承という課題と、AIの精度向上という課題を、同じ一つの工程で扱おうとする設計だと読み解けます。
データの通り道と役割分担の決め方も、この取り組みを実運用に近づけている要素です。現場で集めた漏水音はモバイルネットワークで分析環境へ迅速に伝送され、判定結果と音データはGIS(地図上に情報を重ねて表示する仕組み)のプラットフォーム上で統合・可視化されます。フィールドと管路情報の提供は宇都宮市上下水道局、伝送のための通信提供と実証の設計はKDDI、機器提供とデータの蓄積・解析、AIアプリの提供はwavelogyという分担が明示されており、どこが詰まったときに誰が動くのかが最初から見える形になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現時点は実証の開始段階であり、効果はこれから確かめられていく段階です。2025年3月1日から2026年3月31日までは漏水音データ収集の運用確立とデータの蓄積、2026年度はAI漏水判定の確度向上と、年度ごとにテーマを区切りながら、2028年度の実用化を目標に置いています。ツール側が掲げる目標は、現在行っている漏水判断の80%をAIに置き換え、集音業務は誰でも行えるように、漏水判断業務は現在のリソースで4倍以上を識別できるようにすること。いずれも達成済みの実績ではなく、実証を通じて確かめる目標値として示されています。
うちでも使える?
この事例の考え方が応用しやすいのは、熟練者の判断のもとになる情報が音や画像として記録でき、かつ作業を「集める」と「見極める」に分けられる業務です。設備の異音点検や機器の巡回点検のように、現場を回る手間と判断の難しさが別々に存在している仕事であれば、収集の部分を誰でもできる形にするだけでも効き目が見込めます。
一方で、判断の材料が手ざわりや現場全体の空気といった記録しにくい感覚に寄っている場合は、同じようには進みません。掘削して初めて漏水の有無が分かるように、判定が当たっていたかどうかを後から確かめるのにコストがかかる業務では、この実証が初年度をまるごとデータ収集の運用確立に充てているように、学習させる材料をそろえる段階に相応の時間を見込む必要があります。
最初の一歩として現実的なのは、熟練者が「おかしい」と感じた場面の音や状況を、そう判断した理由とセットで記録に残しておくこと。AIに学ばせるかどうかを決めるのは、その材料が溜まってからでも遅くありません。
この事例は2025年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:音声AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDI株式会社
本実証では、収集した漏水音データを伝送するための通信提供と実証全体の設計を担当。AI漏水検知ツール「SuiDo」の機器提供、漏水音データの蓄積・解析、AIアプリの提供を担うwavelogy株式会社(本社:東京都文京区)とともに、宇都宮市上下水道局と連携して実証を進めています。
宇都宮市上下水道局
出典・参考情報
宇都宮市の水道管の漏水をAIで発見する実証を官民連携で開始 | トピックス | KDDI株式会社
発行元:KDDI株式会社
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
