実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.21
衛星とAIで漏水箇所を絞り、現地調査を約4分の1に。和歌山市の水道管路調査
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 点検する範囲が広すぎて手が回らない
- どこから調べるか決められない
- 人が減る中で設備の維持を続けたい
どのようなAIの取り組み?
人工衛星の観測データをAIで解析して漏水の疑いがある場所を絞り込み、現地調査の作業量を従来の約4分の1に抑えた水道管路の調査事例
業種
水道事業(公共・公益事業)
取り組み領域
水道管路の漏水調査
使ったAI
人工衛星データのAI解析(アステラ)
主な成果
現地調査の作業量を従来の約4分の1に削減
和歌山市の水道事業では、令和7年度の漏水検知業務において、アステラ社が開発した人工衛星とAIによる解析システムが一次調査に組み込まれました。衛星からLバンドと呼ばれるマイクロ波を照射し、土壌に染み出した水道水特有の電磁波の反射をとらえることで、漏水が疑われる箇所を半径約100メートルの円(POI)として絞り込みます。絞り込まれた地点は専用アプリの地図上で共有され、二次調査ではその範囲内の管路を対象に、聴診器のような機器で異音を聞き分ける従来の音聴調査を実施。あわせて、アルゴリズムで漏水疑似音を広範囲に拾うデジタル機器も併用されました。事業の運営主体は和歌山市で、NTT西日本が企画・調整とプロジェクト管理、東亜グラウト工業がシステムによる検知箇所の特定、東日本漏水調査が現地調査を担う分担が取られています。
出典:和歌山市における「アステラ(人工衛星+AI)」を活用した漏水調査について | NTT西日本株式会社のプレスリリース 発行元:NTT西日本株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
和歌山市の有収率は令和6年度時点で84.0%と、全国平均の89.3%を下回っていました。有収率は、浄水場から送り出した水のうち料金収入につながった水の割合を示す指標で、これが低いと収益の減少と維持管理費の増加が同時に進み、水道事業の収支を圧迫します。漏水はその要因のひとつですが、箇所を特定して管路を更新するには専門的な知識と技術、そして時間が必要で、財政面の負担も避けられません。
編集部の見立てでは、この困りごとの核心は「漏水を見つける技術がなかった」ことではなく、探す範囲を決められなかったことにあります。総管路延長2,325キロメートルに対し、令和6年度に現地調査できたのは1,229キロメートル。裏を返せば、半分近い管路は手つかずのまま年度を越えていた計算になります。人員も予算も有限である以上、精度の高い調査手法を持っていても、どこに投入するかを決める材料がなければ全体の有収率は動きません。優先順位を付けるための情報こそが不足していた、という構図です。
どうやって、うまくいったのか
一次調査と二次調査をはっきり切り分け、AIには「どこを見るか」の絞り込みだけを担わせた設計が、この取り組みの土台になっています。衛星から照射したマイクロ波の反射を解析する手法が示すのは、半径約100メートルという範囲であって、漏水そのものを一点で言い当てるものではありません。最終的な特定は、水が噴き出す微細な異音を聞き分ける専門技術者の音聴調査に委ねられています。AIの出力精度を極限まで高めることを目指すのではなく、人の技能が活きる大きさまで対象を狭めることへ役割を限定した点が、実際の業務に乗せられた理由ではないでしょうか。
二次調査の側にもデジタル機器を組み込み、人の耳だけに頼らない構えを取ったことも効いています。漏水挙動(漏水疑似音)をデジタルデータとアルゴリズムで広範囲に検知するこの機器は、管種や水圧などの条件によっては100メートル程度先の漏水も捉えられることが確認されており、これは一次調査が示すPOIの半径とほぼ同じ寸法です。絞り込みの単位と、現場が一度の測定で探れる範囲が噛み合っているため、POIをひとつずつ潰していく反復可能な作業へ落とし込めたと考えられます。
四者が最初から役割を分けた体制も、手法として参考になる部分です。調査フィールドの提供と事業運営を市が担い、企画・調整とプロジェクト管理をNTT西日本、システムによる検知箇所の特定を東亜グラウト工業、デジタル機器を用いた現地調査を東日本漏水調査が受け持つ形になっています。衛星データの解析、地中の音を扱う現場技術、事業全体の進行管理は、必要とされる能力がまったく異なる仕事です。これらを一社で抱え込まず、工程ごとに接続した設計が、単年度の業務として成立させる条件になったという見方ができます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
一次調査で特定された613箇所のPOIに対して現地調査を行い、147箇所で漏水が確認されました。総管路延長2,325キロメートルのうち、令和6年度の現地漏水調査は1,229キロメートルでしたが、令和7年度は調査範囲を全管路へ拡大しながら現地調査対象は592キロメートルとなり、現地調査の作業量は従来の約4分の1に抑えられています。この取り組みは、アナログ規制の見直しが新技術活用につながった事例として、2026年6月30日にデジタル庁のホームページへ掲載されました。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、点検や確認の対象が広い面に散らばっていて、現地に人が行かなければ確定できない業務です。加えて、絞り込んだあとに白黒を付ける手段と技能がすでに社内や委託先にあることが、実は重要な条件になります。この事例でも、範囲を狭めるのが衛星データとAIの役割で、漏水を確定させているのは従来から続く音聴の技術でした。絞り込みだけを導入しても、その先を確かめる手立てがなければ結果にはつながりません。
一方で、そのまま真似できない部分もあります。ここで衛星が捉えているのは、土壌に混入した水道水が示す特有の電磁波反射という物理現象であり、探したいものが地表や地中に何の痕跡も残さない業務には、同じ仕組みは持ち込めません。範囲を絞れる粒度が現場の作業単位と合っているかどうかも、事前に確かめておきたいところです。
まず試すなら、自社の点検対象全体の量と、実際に年間で回れている量を並べてみることから。その差が大きいほど、絞り込みに投資する価値は出てきます。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NTT西日本株式会社
情報通信を手がける企業。NTT西日本グループとして、地域社会や地域産業が抱える課題に対しICTを活用した課題解決に取り組み、持続可能な地域社会の実現をめざしている。本事業は和歌山支店が担当。資本金3120億円。
和歌山市
出典・参考情報
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