実施 2025.11 ・ 更新 2026.08.21
水道管1,062kmをAI診断、掛川市が耐用年数頼みの更新計画を見直しへ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 老朽化した設備の更新順を決めきれない
- 点検や維持管理に回す人手が足りない
- 限られた予算の使い先に迷う
どのようなAIの取り組み?
AIによる管路劣化診断で市内全域約1,062kmの水道管の破損確率を算出し、耐用年数頼みだった更新計画の考え方を切り替えに取り組んだ事例
業種
水道事業(公共・公益事業)
取り組み領域
水道管路の維持管理・更新計画
使ったAI
AI管路劣化診断サービス「AIEyes」(機械学習による劣化予測)
主な成果
市内全域約1,062kmの管路をAI診断し、更新判断の基礎データを整備
掛川市の水道事業は給水開始から100年を超え、法定耐用年数40年を過ぎた管路が全体の18.7%に達する一方で、有収水量と料金収入は減り、水道課の職員も減り続けています。この状況に対し、NTTビジネスソリューションズとFracta Japanは、市内全域の水道管路およそ1,062kmを対象に、Fractaが提供するAI管路劣化診断サービス「AIEyes」を使って管路ごとの破損確率を算出しました。管路データや漏水履歴に加え、環境に関する大規模データ、他自治体で蓄積された学習データを組み合わせ、診断結果はオンラインのツール上で地図として確認できる形になっています。敷設からの経過年数だけで更新時期を決めてきた従来の考え方を、診断結果に基づく計画へ切り替えていく取り組みです。
出典:20251127.pdf 発行元:NTTビジネスソリューションズ株式会社、Fracta Japan株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
掛川市の水道事業は2025年で104年目を迎え、管路のおよそ2割が法定耐用年数を超えています。更新率は年々下がり、有収水量は2005年の日量43,975立方メートルをピークに減少して、2040年にはピーク時の約81%まで落ち込む見通しです。水道課の職員数もピーク時から22%減っています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの中心は「古い管が多いこと」そのものではありません。収入が細り、人も減っていくなかで、限られた予算と人手をどの管に振り向けるかを決めなければならないのに、判断のよりどころが法定耐用年数40年という一律の物差ししかなかった。同じ40年でも、土壌の性質や水圧、過去の漏水の起こり方によって傷み方には差があるはずで、一律の基準では優先順位が付きません。更新率の低下という数字は、その行き詰まりが表面化した姿だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
一律の年数ではなく、管路一本ごとの破損確率という形で結果を出す設計が、この取り組みの核心にあります。確率で表せば、同じ築年数の管であっても危ない順に並べ替えられ、どこから手を付けるかという議論が具体的な対象を伴って進みます。耐用年数という基準は分かりやすい反面、判断が「超えたか、超えていないか」の二択に固定されてしまう。連続した数値へ置き換えたことで、予算の規模に合わせて着手範囲を伸縮させる余地が生まれた点が効いていると考えられます。
学習に使うデータの組み合わせ方にも工夫が見えます。自市の管路データと漏水履歴だけでなく、環境ビッグデータと、他の自治体で蓄積された学習データが併せて使われています。一つの事業体に残る漏水履歴は、予測の材料としては決して量が多くありません。他自治体のデータで母数の不足を補い、土壌や気象といった環境条件で地域ごとの差を吸収する組み立てが、自前のデータが限られていても予測を成り立たせる条件になっていると読み取れます。
診断結果を、用途の異なる二つの見せ方に分けている点も見逃せません。管路単位の劣化予測は更新計画の基礎データとして、エリア単位の漏水リスクは漏水調査の行き先を決める材料として、それぞれオンラインツール上で可視化されています。計画づくりと日々の現場作業では、必要な粒度も、画面を開く人も違う。役割分担もこれに対応しており、AI診断サービスの提供と技術開発をFracta Japanが、活用の提案とプロジェクト統括、導入支援をNTTビジネスソリューションズが担う形で進められています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
市内全域およそ1,062kmという水道管路の全体が診断の対象となり、管路ごとの劣化予測とエリア別の漏水リスクが、オンラインツール上で確認できる状態になりました。投資効率の向上や漏水防止、維持管理の効率化は、この診断結果を更新計画へ反映していく過程で目指される段階にあり、現時点で数値として示されているものではありません。両社は今回の診断結果をもとに、さらに分析と活用を進める方針を示しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、設備が一本一本、あるいは一台一台の単位で台帳に登録されていて、そこに故障や修繕の履歴がひも付いている領域です。水道管に限らず、埋設配管や電線、長く使い続ける生産設備など、「どれがいつ壊れたか」が記録として残っていれば、劣化の傾向を確率として表す発想はそのまま持ち込めます。
一方で、この方式が効きにくい場面もあります。今回の診断は、自前の漏水履歴に加えて他自治体の学習データを併用することで成り立っています。同業の組織どうしでデータを持ち寄る仕組みがない分野や、設備の構成が組織ごとにまるで異なる分野では、同じようにデータ量を補うことができません。台帳の位置情報が曖昧で、故障記録がどの設備のものか特定できない場合も、予測の前提そのものが崩れます。
まず確かめたいのは、直近数年の故障・修繕の記録が、設備の個体と結びついた形で残っているかどうか。結びついていないなら、次の1件からその紐付けを始めるだけでも、数年後の判断材料は確実に増えます。
この事例は2025年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NTTビジネスソリューションズ株式会社/Fracta Japan株式会社
NTTビジネスソリューションズ株式会社は静岡ビジネス営業部が本件を担当し、AI診断の活用提案・プロジェクト統括および導入支援を担当。Fracta Japan株式会社はAI管路劣化診断サービス「AIEyes」の提供と技術開発を担当している。
掛川市(水道事業)
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