更新 2026.08.21
1通1時間の診断書作成を短縮、精神科クリニックが生成AIを書類下書きに転用
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 書類作成で一日がつぶれる
- 診断書の下書きに時間を取られる
- 提出先ごとに書式が違って手が回らない
どのようなAIの取り組み?
カルテ要約を主用途とする医療AIを書類の下書き作成に振り向け、1通1時間かかっていた精神科の書類業務を大幅に短縮したAI取り組み
業種
心療内科・精神科クリニック(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
診断書など医療書類の作成業務
使ったAI
medimo(医療向け生成AIサービス)
主な成果
1通1時間かかっていた書類作成の時間を大幅に短縮
千葉市中央区の心療内科・精神科クリニックであるたびするクリニック千葉は、医療現場向けAIサービスのmedimoを、本来の主用途である診察時のカルテ要約ではなく、書類の下書き作成に振り向けています。精神科では障害年金や障害者手帳、自立支援医療、傷病手当金、障害福祉サービス関連の指示書など作成すべき書類の種類が多く、自治体や保険組合によって書式も変わります。同院では月に165件ほどの書類作成業務が発生し、1通に1時間ほどかかるものもありました。運用は、院長があらかじめ作成したプロンプトをスタッフが応用して下書きを出力し、医師が内容を確認・修正して完成版に仕上げる流れです。医療情報を扱う都合から、一般的な生成AIでの要約は導入前の検討段階で見送られています。
出典:カルテ要約ではなく「書類作成」に活用 ー 業務を大幅削減するAIの活用法 ー 発行元:medimo inc.
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
精神科の書類は種類が多いうえ、自立支援医療や障害者手帳は自治体ごと、傷病手当金は加入する保険組合ごとに書式が異なります。院長は、診療日を一日つぶして書類を作っているクリニックもあるのではないかと語り、その時間が空けばより多くの患者を診察できるという問題意識を持っていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は書類の枚数そのものではなく、書式差を吸収する作業が医師の頭の中でしか処理できなかったことにあります。医学知識が要るため事務スタッフに丸ごと任せられない一方、記載内容には定型的な部分も多く、医師が最初から手を動かす価値が高いとも言い切れない。この分担しづらい中間的な作業が、外来の合間に積み上がっていたのではないでしょうか。さらに、カルテという機微性の高い情報を扱うため、手軽な生成AIに渡すという逃げ道が最初から塞がれていた事情も重なります。
どうやって、うまくいったのか
ツールが想定する主用途をあえて外し、書類の下書き一点に使い道を絞った判断が、この取り組みの起点になっています。medimoは診察時のカルテ要約を主な使い方として提供されていますが、同院の院長はタイピングが速く、患者の話を聞きながら頭の中で情報を整理して打ち込むことに大変さを感じていませんでした。標準的な使い方と、その現場で最も重い工程が一致していなかったわけです。自院で時間が張り付いている作業はどこかを見極め、そこにだけAIを充てる用途選定が効いたと考えられます。
院長が設計したプロンプト(生成AIから狙った出力を引き出すための指示文)をスタッフが実行する、という役割の組み方も見逃せません。書類の下書きは一定の医学知識を前提とするため、知識のない人材を採用して任せられる仕事ではありませんでした。指示の中身をプロンプトという形で固定したことで、判断は医師、実行はスタッフ、最終確認は再び医師という分業が成立しています。作業を丸ごと自動化するのではなく、判断・実行・検証に切り分けた設計が、誤りの許されない医療の現場で実運用に耐えた要因ではないでしょうか。
プロンプトを作って終わりの資産ではなく、調整し続ける対象として扱った点も特徴的です。導入直後はプロンプトを作る工数そのものが持ち出しになりましたが、同院の要望に合わせた修正をベンダー側と重ねながら精度を上げていく進め方がとられました。この事例では、契約した時点ではなくプロンプトが自院の書式に馴染んだ時点が、実質的な導入完了だったと見るのが妥当です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
1通に1時間ほどかかっていた書類の作成時間は、下書きをAIに任せることで大幅に短縮されています。月165件という書類量を抱えるなかで、プロンプト整備に要した当初の工数と、精度の高い下書きが得られるようになった効果を比べて、収支はプラスに転じつつある段階だと院長は評価しています。今後については、書類のフォーマットをスキャンするだけで必要なカルテ情報が自動抽出され、ボタン一つで下書きが完成する仕組みへの発展が期待されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、提出先ごとに様式は違うのに書き込む中身はほぼ同じで、そのたびに元の記録を読み返して書き写している業務です。士業の申請書類、保険や補助金の申請、行政向けの報告書などは構造が近く、指示文をいったん整えれば繰り返し使えます。逆に、書き手の判断そのものが成果物になる文書、つまり結論を出すこと自体に価値がある書類では、下書きの効果は限られます。最終確認を担える有資格者や熟練者が社内にいない場合も、この形はそのままでは成り立ちません。個人情報や機微情報を含むなら、汎用の生成AIではなく扱えるサービスかどうかが入口の条件になります。
小さな一歩としては、いつも自分が書いている書類の書き出しと定型フレーズを、そのまま指示文の形に書き直してみるところから。うまくいく指示文は、たいてい自分が無意識に守っている手順の写しです。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
medimo inc.
医療現場向けのAIサービス「medimo」を提供。患者との会話をもとに短時間でカルテを作成する機能を備え、利用側でプロンプトを比較的自由に変更できる。導入医療機関の要望に応じたプロンプトの修正対応も行っている。
たびするクリニック千葉
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