実施 2025.07 ・ 更新 2026.08.17
100隻超を運航する日本郵船、配船計画をAIで自動化し10分で数百万通り試算
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 計画づくりがベテラン頼みになっている
- 条件が多すぎて最適な組み合わせを選べない
- 毎回の計画作成に何日も取られている
どのようなAIの取り組み?
最大数百万通りの配船を10分程度で試算し、属人的だった自動車専用船の計画立案を自動化・最適化したAI取り組み
業種
外航海運(運輸・物流)
取り組み領域
配船計画・運航計画
使ったAI
配船計画の最適化AIシステム(共同開発)
主な成果
最大数百万通りの配船を10分程度で試算し最適計画を作成
日本郵船は世界最大規模となる100隻超の自動車専用船を運航しており、数カ月先までの数百航海をどの船に割り当てるかという配船計画は、長く複雑で属人的な業務でした。同社は、船舶運航技術や情報技術の研究開発を手がけるMTI、AIエンジン開発のグリッドと共同で、この計画立案を自動化・最適化するシステムを開発し、2025年7月から本格運用を開始しています。システムは顧客ニーズ、船隊の稼働状況や修繕予定、港での滞船リスクといった条件を踏まえ、最大数百万通りの配船を10分程度で試算して最適な計画を作成します。船舶稼働率・輸送効率・輸送コストの最適化に加え、次世代燃料船の有効活用やカーボンプライスの考慮によるGHG(温室効果ガス)排出量の削減も期待されています。
出典:日本郵船・MTI・グリッド 自動車専用船AI配船システムを開発・本格導入 | 日本郵船株式会社 発行元:日本郵船株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
日本郵船が運航する自動車専用船は100隻を超え、計画の対象は数カ月先までの数百航海に及びます。そこに顧客の要望や船の状態など多様な条件が絡み合うため、配船計画の立案は極めて複雑で、属人的な業務になっていました。
困りごとの芯にあったのは、航海の数の多さそのものよりも、判断の根拠が担当者の経験の中に溶けたまま外から見えない状態だったことではないでしょうか。条件の重みづけが言葉になっていなければ、出来上がった計画が本当に良いのか、もっと良い案があり得たのかを確かめる手立てもありません。3社が最初に掲げた目標が、配船業務に関わる情報や判断要素を整理・構造化することだった点は、課題の所在が計算の速さではなく判断の可視化にあると見ていたことをうかがわせます。
どうやって、うまくいったのか
起点がAIモデルの選定ではなく、配船業務に関わる情報や判断要素を整理・構造化するところに置かれた設計は、この取り組みの土台にあたります。数百航海分の計画を人が組み立てるとき、何を優先し何を避けるかの重みづけは、担当者の頭の中で暗黙のうちに処理されています。それを条件とKPI(評価に使う指標)の形に書き出す作業を先に済ませたからこそ、船舶稼働率・輸送効率・輸送コストという物差しで計画の良し悪しを機械的に比べられるようになったと考えられます。
評価に織り込む制約として、顧客ニーズだけでなく、船隊の稼働状況や修繕予定、港での滞船リスクまで並べた設計も、実務で使えるかどうかを分けた要素でしょう。計画は、数字の上で最適でも現場が無理だと判断すれば動きません。修繕で船が抜ける期間や、港が混んで待たされる可能性といった、運航の現場が必ず確認する条件を候補づくりの内側に最初から入れておく作り方は、机上の最適解が結局使われずに終わる事態を避ける現実的な選択です。
環境対応を別立ての施策にせず、次世代燃料船の有効活用やカーボンプライスを日々の計画評価そのものに組み込んだ点も特徴的です。排出削減を目標として掲げるだけなら計画業務の外側で管理する話になりますが、評価軸の一つに据えれば、通常の配船判断がそのまま排出量の抑制につながる余地が生まれます。3社が共同開発という形をとったことも、この構造と切り離せません。実際の配船実務を持つ日本郵船、船舶運航技術・情報技術の研究開発を担うMTI、AIエンジン開発を手がけるグリッドという顔ぶれからは、業務知識・海事技術・AI実装のどれが欠けても成立しない設計だったことがうかがえます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
開発されたシステムは2025年7月から日本郵船で本格運用に入っており、数カ月先までの配船候補を最大数百万通り、10分程度で試算して最適な計画を作成します。人手では現実的に比べきれなかった選択肢の幅を、日常の業務時間の中に収めた点が実務上の変化です。船舶稼働率や輸送効率、輸送コストの最適化に加え、次世代燃料船の有効活用やカーボンプライスの考慮によるGHG排出量の削減も期待されていますが、こちらは効果が実績値として示された段階ではありません。
うちでも使える?
この型が効くのは、選択肢が組み合わせで膨れ上がり、良し悪しを数値で比べられる計画業務です。トラックの配車、人員のシフト、生産順序の決定など、条件を式の形に書き下せる領域であれば、規模が小さくても考え方は流用できます。逆に、取引先との力関係や口頭でしか共有されない事情が計画を左右し、評価軸を数値に落とせない業務では噛み合いません。
この取り組みが動いている前提には、船隊の稼働状況や修繕予定、港の混雑といった条件が、日々更新される情報として組織の中で管理されている点があります。前提となるデータが担当者の手元の表計算ファイルに散らばったままでは、最適化の手前でつまずきます。まず試すなら、直近の計画で担当者が却下した案を一つ取り上げ、なぜ却下したのかを条件の形に書き下してみる。そこが構造化の入口です。
この事例は2025年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
プロジェクト実施・導入企業
株式会社グリッド
AIエンジン開発、AIフレームワークReNomの開発・提供、量子コンピュータソフトウエア・アルゴリズム研究開発を手がける企業。代表取締役社長は曽我部完氏。日本郵船・MTIとともに自動車専用船のAI配船システムを共同開発した。
日本郵船株式会社
出典・参考情報
日本郵船・MTI・グリッド 自動車専用船AI配船システムを開発・本格導入 | 日本郵船株式会社
発行元:日本郵船株式会社
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