実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.17
計画策定の時間を50%以上削減、太平洋セメントがAIで組む船の輸送計画
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの経験頼みの計画づくり
- 輸送や配車の計画作成に時間がかかる
- 輸送コストと在庫のバランスに悩む
どのようなAIの取り組み?
AIが膨大な輸送データから船の輸送計画を組み立て、計画策定の時間を50%以上削減したセメント物流のAI取り組み
業種
セメント製造(製造業)
取り組み領域
海上輸送の配船計画・物流
使ったAI
配船計画最適化システム(AIによる計画最適化)
主な成果
計画策定時間を50%以上削減
太平洋セメントと、AI技術を手がけるグリッドが共同で、船の配船計画を最適化するシステムを開発し、2025年5月から運用を始めました。国内のセメント業界では初の取り組みになります(両社調べ)。各工場から全国の物流拠点へセメントを運ぶ計画は、組み合わせが10の1,400乗通りに及び、これまでは熟練担当者が経験をもとに組み立ててきました。新しいシステムでは、AIが輸送データを解析し、多数の制約条件を踏まえたうえで計画を導きます。積載量や航路の見直しによって計画段階の燃料使用量等は約10%減り、計画づくりに要する時間は従来の人手による方法と比べて50%以上短縮されると示されています。あわせて、各拠点の適正在庫や船員の労働条件への配慮も、計画に織り込まれています。
出典:250804_2.pdf 発行元:太平洋セメント株式会社、株式会社グリッド
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
セメントは各工場から全国の物流拠点へ船で運ばれ、その配船計画の組み合わせは10の1,400乗通りに及びます。熟練担当者が膨大な条件を考慮しながら経験に基づいて計画を組んできましたが、最適化には限界がありました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は計画づくりに手間がかかることではなく、組んだ計画が良いものかどうかを比べる手立てがなかったことにあります。組み合わせの規模が人間の検討できる量をはるかに超えている以上、担当者がどれだけ経験を積んでも、目の前の案より輸送費が安く、拠点の在庫も安定し、船員の負担も軽い案が他にあるかどうかは確かめようがありません。熟練の技量が足りなかったのではなく、比較の土俵そのものが用意できなかった。そう捉えると、この取り組みが人の置き換えではなく計画の評価環境づくりであることが見えてきます。
どうやって、うまくいったのか
配船の難しさを担当者の熟練度の問題ではなく、条件をどう書き出すかの問題として捉え直した点が、この取り組みの起点にあります。積載量、航路、各物流拠点の在庫水準、そして船員法に沿った船員の勤務条件は、いずれも熟練担当者が頭の中で同時に見比べていた要素です。それらを機械が扱える制約として明文化できたからこそ、10の1,400乗という規模の組み合わせが、初めて計算の対象に載ったと考えられます。
目的を輸送コストの一点に絞らなかった設計も効いています。費用だけを最小にする計画なら解きやすい一方、拠点の在庫が薄くなったり、船員に無理のかかる行程になったりすれば、現場では採用されません。適正在庫の実現と船員法への対応を最初から要件に含めたことが、机上の最適解ではなく実際に回せる計画を出すための条件になったのではないでしょうか。
荷主である太平洋セメントと、AI技術を提供するグリッドが共同で開発にあたった役割分担にも触れておきたいところです。どの条件を外してはいけないかという判断は輸送を担う側にしか持ちえず、膨大な組み合わせを解く技術は開発側にあります。加えて両社は運用開始後もシステムの高度化を続ける方針で、計画業務のように前提条件が変わり続ける領域では、作って終わりにしない構えが精度を保つ鍵になります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
示されている効果は大きく三つです。積載量と航路の最適化により、計画の段階で燃料使用量等が約10%削減され、それに伴って温室効果ガス等の排出量の低減も見込まれています。計画策定に要する時間は、人が組む従来の方法と比べて50%以上の短縮。さらに各物流拠点の適正在庫が実現し、安定供給の体制がより強固になった点も挙げられています。数字の大きさ以上に注目したいのは、コスト、在庫、環境負荷という別々に語られがちな指標が、一つの計画の組み直しで同時に動いたことです。
うちでも使える?
応用しやすいのは、選択肢が膨大でも、案の良し悪しを数値で判断できる計画業務です。トラックの配車、工場の生産順序、人員のシフトなど、費用・時間・法令上の上限といった尺度で複数の案を比較できるなら、同じ考え方が働く余地があります。
反対に、この事例の前提が崩れる場面もあります。取引先との力関係や長年の経緯によって行き先や順番が事実上決まっているような業務では、計算で導いた案が現場を通らず、システムが弾き出した計画は使われないまま終わります。条件が数えられるかどうかより、その条件を守る決定権が自社にあるかどうかが分かれ目になります。
最初の一歩は、いま計画を組んでいる担当者に、案を決めるとき必ず守っている条件を口に出してもらうこと。積載率の下限、寄港の順序、勤務時間の上限といった数え上げられる条件がいくつ挙がるかで、この手のアプローチが自社の業務に噛み合うかどうかの見当がつきます。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社グリッド
AI技術を提供する企業。太平洋セメントと共同で、AI技術を活用した配船計画最適化システムを開発した。代表取締役社長は曽我部完。
太平洋セメント株式会社
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