更新 2026.08.17
五島市のマグロ養殖、ドローンとAIで赤潮通知の時間を約98%削減した実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 熟練者の目に頼った判定が不安
- 異常の発見から連絡までが遅い
- 広い現場を人手で見回るのが限界
どのようなAIの取り組み?
ドローンとAIの画像解析で有害プランクトンを判別し、漁業者への赤潮リスク通知までの時間を約98%削減した実証に取り組んだ事例
業種
クロマグロ養殖(農業・林業・漁業)
取り組み領域
赤潮監視/養殖海域のリスク管理
使ったAI
画像解析AI(有害プランクトン判別)+ドローン
主な成果
実証実験で漁業者への赤潮リスク通知までの時間を約98%削減
長崎県五島市はクロマグロ養殖を地域の基幹産業に育てる構想を掲げていますが、クロマグロは赤潮の影響を受けやすく、発生をどれだけ早くつかめるかが被害の大きさを左右します。従来は船から海面の色を目視で確かめ、採取した海水を顕微鏡で観察して有害なプランクトンの量を計測するという手順を踏んでいました。この一連の流れを、五島市、長崎大学、システムファイブ、KDDIによる産官学連携で組み替えたのが本事例です。広域を飛行するドローンが海面の着色具合を捉えて疑わしい地点を絞り込み、採水ドローンが多深度から海水を採取。その海水をAIの画像解析にかけて有害プランクトンを識別・計数し、危険性ありと判断されればリアルタイムで漁業者へ通知が届きます。実証実験として実施され、採水から検知、通知までの所要時間が大きく縮まりました。
出典:長崎県五島市 ドローン・AIを活用しマグロ養殖漁業者の事業リスク軽減と作業を効率化|地域共創 (Te to Te)|KDDI株式会社 発行元:KDDI株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
赤潮の判定には、船を出して海面の着色を目で確かめ、採ってきた海水を顕微鏡で観察し、悪玉プランクトンの量を数えるという工程が必要でした。手間がかかるうえに、どこまで見極められるかは検査する人の経験に左右され、判定が出てから現場へ共有されるまでにも時間が空いていました。
編集部の見立てでは、困りごとの中心は作業量そのものではなく、判定する力が特定の人と特定の場所に固定されていた点にあります。赤潮は海域全体で動く現象であるのに、監視の単位は船一隻から見渡せる範囲と、顕微鏡を覗ける検査者一人が処理できる量に縛られていました。市の担当者が、事業者単独ではなく海域全体での対応が必要という強いニーズがあったと述べているのは、この規模の食い違いを言い当てたものと読めます。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、海を広く見る工程と、疑わしい場所を詳しく調べる工程を分けた二段構えの設計です。まず広域を飛行するドローンが養殖海域全体の海面の着色具合を検知し、赤潮発生のリスクがある個所を特定します。そのうえで採水ドローンが、絞り込まれた地点から深さを変えて海水を採取する。全域を一律に精密検査するのではなく、粗く広く探してから細かく確かめる順序にしたことで、限られた機材でも海域全体を守備範囲に置ける構造になりました。
次に、経験差が出やすい工程だけをAIに委ねた点です。採取された海水はAIの画像解析にかけられ、有害プランクトンの識別と計数まで機械の側で処理されます。ここで自動化の対象になっているのは「何が写っているかを見分けて数える」という、判断基準をそろえやすい部分に限られており、どこで採水するか、通知を受けた後にどう動くかという判断は人の手元に残されています。線を引く位置を、経験がものを言う判断ではなく反復精度が求められる作業に定めた設計が、現場で使える形につながったのではないでしょうか。
三つ目は、検知の精度を上げるだけで終わらせず、漁業者に情報が届くところまでを一続きの流れとして組んだことです。長崎大学が海水サンプリングおよび画像収集ロボットシステム、システムファイブが有害赤潮リアルタイム判別システム、KDDIが判別結果を漁業者に周知する通知システムと、開発主体は得意分野ごとに分かれています。それでいて採水から判別、通知までが途切れずにつながっており、情報は現場に届いて初めて価値になるという前提が、体制の組み方そのものに表れています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、海水の採水から赤潮の検知、漁業者への通知までの所要時間が従来より大幅に短縮され、漁業者への赤潮リスク通知までの時間を約98%削減という水準が示されました。あくまで実証段階での結果ですが、KDDIの担当者は、五島市、長崎大学、システムファイブを核とする産官学連携がかみ合ったことで新しい価値を創造できたと振り返っています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、良し悪しの判断が画像で見分けられ、しかもその結果が早く伝わるほど損失が小さくなる業務です。有害プランクトンのように、拡大して見れば形で識別でき、数を数えれば危険度が判断できる対象があったからこそ、画像AIが判定の担い手になれました。逆に、匂いや手触り、複数の要因を突き合わせた総合判断で決まる領域では、同じ置き換えは成り立ちにくいでしょう。
体制面のハードルもあります。広域探索用と採水用のドローン、判別システム、通知システムがそろって初めて機能する仕組みであり、一事業者が単独で抱えるには重い構成です。この事例では、海域全体という共有の対象があったからこそ自治体が旗を振り、大学と専門企業が役割を分けて加われました。似た条件を持つのは、複数の事業者が同じ環境や同じ設備を共有している業種です。
まずは、現場で誰かが目で見て可否を決めている工程を一つ選び、その判断材料が写真一枚に写り込むかどうかを確かめてみる。写り込むのであれば、画像AIに寄せられる余地があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
長崎県五島市
出典・参考情報
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