実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.17
肥育牛約16,000頭にセンサーを装着、勘に頼る飼育管理をデータ主導へ変えた畜産現場
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘に管理が頼りきり
- 数が多くて異変を見落とす
- 担当者ごとに判断がばらつく
どのようなAIの取り組み?
牛に装着したセンサーで活動量を記録し、経験や勘に頼っていた飼養管理をデータに基づく管理へ切り替えていったAI取り組み
業種
肉用牛肥育(農業・畜産)
取り組み領域
飼養管理/牛の健康状態の監視
使ったAI
U-motion(センサーを使った牛の行動モニタリング)
主な成果
死亡事故率が事故ゼロに近づく水準まで大幅に改善
鹿児島に本社を置く水迫ファーム・水迫畜産グループは、グループ全体で肥育牛約16,000頭を飼養し、年間9,000頭前後を出荷しています(2023年1月時点)。同グループは「牛に優しく、人に優しく、環境に優しい」というテーマのもとで様々な取り組みを進めており、その一環として2019年に、デザミスが提供する牛向けの行動モニタリングシステム「U-motion」を導入しました。肥育牛にセンサーを装着し、出勤直後のルーティンとしてアラートだけでなく活動量のグラフや散布図まで確認したうえで、実際の牛を見に行く運用が続いています。牛舎構造の工夫や各種機器の活用と組み合わせながら、少ない人数で多くの牛を管理できる体制を模索する取り組みでもあります。
出典:U-motionの導入で従業員が成長、経験や勘からデータ実績に基づく管理へ変化 | 導入事例 | デザミス株式会社 発行元:デザミス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前の現場では、明らかに具合の悪い牛は当然目に留まっていた一方で、「多少悪いくらい」の牛は気に留められないまま通り過ぎていました。約16,000頭という規模で、一頭ずつの小さな変化を人の目だけで拾い切るのは容易ではありません。
編集部の見立てでは、この事例の困りごとの中心は頭数の多さそのものではなく、「どこからが異変か」という線引きが、個々の従業員の経験の内側にしか存在しなかった点にあったのではないでしょうか。ベテランなら気づく微妙な変化が、経験の浅い担当者には見えない。基準が人の中にしかない限り、人手を足しても管理の精度は揃いにくく、1人あたりの担当頭数を増やす方向にも踏み出しづらくなります。グループが掲げる「牛に優しく、人に優しく」というテーマを日々の運用へ落とし込むうえで、判断のよりどころを人の外側に置けるかどうかが分かれ目になっていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
アラートだけで判断を終わらせず、活動量のグラフや散布図まで目を通したうえで実際の牛を確認する、という手順を出勤直後のルーティンに固定した運用が、この取り組みの土台になっています。通知は異変の可能性を知らせる入口にすぎず、グラフや分布の形を見て初めて、どの牛がどのくらいいつもと違うのかが読み取れます。データを見る行為を担当者の裁量や気分に委ねず、毎朝必ず通る導線に組み込んだ設計が、導入したまま使われなくなる状態を遠ざけたのではないでしょうか。
気になる牛を見つけたらU-motionで確認する、という順序も見逃せません。AIの示す値をそのまま結論として受け取るのではなく、人が抱いた違和感の裏取りにデータを使い、データ側の指摘には現物確認で応じる。人の観察とセンサーの数値を互いの検算に用いる往復の形が、判断の根拠を現場に残しながら、担当者自身の見る目を鍛える方向へ働きます。手法として捉えるなら、判断そのものをAIに明け渡さず、人が判断するための材料の解像度を上げることに用途を絞った点が効いていると読めます。
センサー活用を単独の施策として切り出さず、牛舎構造の工夫や他の機器の活用と束ねて、1人あたりの管理頭数という具体的な体制目標に接続している点も、この取り組みの性格をよく表しています。設備・道具・データをまとめて「少人数で回る現場をどう作るか」という問いに寄せているため、評価の軸が機能の多さではなく、現場の回り方がどう変わったかに置かれます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
もともと高い水準にあったわけではない死亡事故率が、事故ゼロに近づくと表現されるところまで大幅に改善しています。あわせて、最も良かった変化として従業員の成長が挙げられており、少し気になる牛を見つけたらU-motionで確かめるという行動が定着し、経験や勘による管理からデータの実績に基づく管理へと移りつつあります。1人で1,000頭を管理する体制については、現在も試行錯誤を重ねている途上であり、目指している段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、対象の数が多く、状態の変化が数値として継続的に取れる現場です。牛の活動量のように、平常時のパターンがデータとして積み上がり、そこからのずれ自体が意味を持つ対象であれば、常時測って変化を人の確認につなぐという形は、業種を問わず成り立つ余地があります。
一方で難しいのは、センサーの装着や設置にかかる手間に対して見返りが読みにくい場合や、異変を捉えても現場がすぐ動けない場合です。この事例では、朝の時間帯に確認の手順を差し込む余地があり、気になる個体を実際に見に行ける人員と動線がありました。検知の仕組みだけを入れても、確認と対処の担い手がいなければ、通知はただ流れていきます。
試すなら、現場の誰かが「なんとなく気になる」と感じた対象を1週間分だけ書き留め、その違和感がどのデータのずれと重なっていたかを後から突き合わせてみてはどうでしょうか。測るべき指標は、その重なりの中から見えてきます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:機械・設備・位置
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
デザミス株式会社
牛向けの行動モニタリングシステム「U-motion」を提供する企業。
水迫ファーム・水迫畜産
出典・参考情報
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