実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.17
衛星データとAIで農地の見回り調査を73%削減、静岡県の効果検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現地確認の全数調査に時間を取られている
- 紙の地図と写真の整理が毎年の負担
- どこを優先して回るか見当がつかない
どのようなAIの取り組み?
衛星データとAIの解析で現地確認が必要な農地を絞り込み、調査業務時間の73%削減を試算した自治体のAI取り組み
業種
農業委員会(公共・行政)
取り組み領域
農地の利用状況調査(農地パトロール)
使ったAI
衛星データ解析AI(農地パトロールアプリ「アクタバ」)
主な成果
調査業務時間の73%削減(884時間→236時間)を試算
全国の農業委員会は毎年夏に農地の利用状況調査(農地パトロール)を実施し、従来のルールではすべての農地を現地で確認する必要がありました。静岡県では令和5年度に県内5市が、衛星データとAIを使う農地パトロールアプリ「アクタバ」を先行導入し、その効果検証を踏まえて令和6年4月に「静岡県荒廃農地調査DX化推進研究会」が発足しています。事務局は一般社団法人静岡県農業会議が担い、アクタバを使う農業委員会の契約をまとめてサグリ株式会社と結ぶ窓口となるほか、操作研修会や情報交換会、改善意見の集約、複数委員会の参加を前提とした利用料の割引交渉までを引き受けました。県も会員として加わり、活用できる補助事業を整理して各農業委員会へ情報提供と提案を行っています。県内A市を対象とした効果検証では、地図の準備から結果の取りまとめまでの作業時間の削減効果が試算されました。
出典:静岡県が実証する「農地DX」ーアクタバ導入で荒廃農地調査を73%効率化 – サグリ株式会社 発行元:サグリ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
調査の本来の目的は荒廃農地を解消することにあるのに、その手前にある発見と調査の工程に労力が集中していました。静岡県農業会議からは、すべての農地を現地確認しなければならない負担に加え、8月の厳しい暑さのなかで作業せざるを得ない現場の実情が課題として挙げられ、県への要望活動でも調査を効率化する支援が求められています。
編集部の見立てでは、この困りごとは「人手が足りない」という量の問題にとどまりません。全数を回るという前提が動かせないために、どこに荒廃農地がありそうかという当たりをつける工程が業務の中に存在せず、労力をどこに厚く配分するかを現場が設計できなかった点に本質があるのではないでしょうか。作業量の多さは、その構造から生まれた結果と考えられます。
どうやって、うまくいったのか
効き目が大きかったのは、調査そのものを減らす発想ではなく、現地に足を運ぶ対象を事前に選び分ける工程を業務に足した設計です。衛星データの解析結果から現地確認が必要な農地だけを画面上で抽出できるようにし、紙の地図を用意して紙の上で候補を絞るという準備作業を置き換えました。実際、効果が大きく出たのは地図の準備と荒廃農地候補の絞り込みであり、調査の中でも成果に直結しにくい下ごしらえの部分に狙いを定めた点が、この手法の勘所と言えます。
導入を県域の共同事業として組み立てたことも、単発の効率化で終わらせない要因になったと考えられます。研究会が契約窓口を一元化して個々の農業委員会が交渉や事務を抱え込まずに済む形をつくり、会費制の運営に加えて国庫の機構集積支援事業や市町村の単独事業費といった予算の道筋まで整理されました。導入していない委員会も準会員として情報収集の段階から参加できる設計は、検討中の組織を置き去りにせず横展開を進める仕掛けとして機能したのではないでしょうか。
弱点を早い段階で数字として可視化し、改善の対象に据えた運用も見逃せません。田では約7割が絞り込みに使える一方、茶園では樹木に関する農地が一律に耕作放棄地率50%と判定され、管理された茶園と荒廃した茶園が区別しにくいという弱点が検証で明らかになりました。使えない領域を把握したうえで、研究会とサグリ社が協力して茶園の判定精度の検証と向上に取り組み、解析アルゴリズムの改善を続ける体制へつなげています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
静岡県内のA市(農地面積約1,000ha)でモデル地区を設定して行われた試算では、地図の準備から結果の取りまとめまでの作業時間が884時間から236時間となり、648時間・73%の削減効果が見込まれる結果となりました。研究会の取り組みとは別にサグリ社が聞き取った令和6年度の袋井市の事例では、農業委員の利用率が100%となり、現地調査の期間が約2か月から約1か月へ短縮されています。判定精度の面では、田で約7割の絞り込みが確認され、課題が残っていた茶園も令和6年度には荒廃茶園の87%が高い耕作放棄率として正しく分類されるまで改善しました。
うちでも使える?
応用しやすいのは、対象の全数を確認する決まりがあり、そのうち問題があるのはごく一部という業務です。点検や巡回のように、確認そのものより「どこを見るべきか」を決める手前の作業に時間を取られている現場であれば、外部データで候補を絞る発想は移しやすいでしょう。一方で、この事例の効果は衛星から見て状態の差が出る対象だからこそ成り立っています。茶園のように上から見た姿が似ていて判別が難しい対象では精度が伸び悩んだように、外形に差が現れにくい業務では同じようには効きません。また、複数の自治体が集まって契約と予算の道筋を整えた点が導入を後押ししており、単独の組織で同じ条件をつくれるかは別に考える必要があります。
まず試すなら、直近の調査や点検の記録を開いて、実際に問題が見つかった件数と回った総件数の比率を出してみてはいかがでしょうか。この比率が小さいほど、絞り込みの余地は大きいはずです。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
一般社団法人静岡県農業会議
出典・参考情報
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