実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.17
約16万人の教員と生徒へ生成AIを展開、東京都が専用環境の構築
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 生成AIを全員に配りたいが情報漏えいが不安
- 使う人によって権限を分けたい
- うまいAIの使い方が個人の中に埋もれている
どのようなAIの取り組み?
入力データが再学習に使われない専用環境として、都立学校の教員と児童生徒約16万人が使う生成AI基盤の構築から保守・運用までを外部に委託した事例
業種
公立学校教育(教育サービス)
取り組み領域
学校教育/教員・児童生徒の生成AI利用環境
使ったAI
対話型生成AI(GPT-4o mini以上の性能を要件とする専用環境)
主な成果
教員・児童生徒約16万人が使う基盤の構築・保守を受託した段階
東京都教育庁は、全都立学校の教員と児童生徒が生成AIを使える環境を整えるため、2024年度に研究校20校で構築した利活用環境基盤を作り直し、機能を広げる業務を一般入札にかけました。公示は2025年1月31日で、要件は三つ。入力したデータが再学習に利用されない専用環境とし、GPT-4o mini以上の性能を使えること。教員と児童生徒それぞれにアカウントを分けて付与し、教員だけがAIに参照させるデータをアップロードできること。そして、作成したプロンプト(AIへの指示文)を蓄積・共有する機能を、使用目的と教科ごとに分類して探しやすくすることです。この委託をコニカミノルタジャパンが受託し、構築と機能拡張に加えて保守・運用までを担います。対象となる教員と児童生徒は約16万人にのぼります。
出典:東京都の「都立学校向け生成AIサービスの構築 及び機能拡張・保守・運用等業務委託」を受託 | コニカミノルタ 発行元:コニカミノルタ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2024年度に用意されていた生成AIの利活用環境基盤は、研究校20校という限られた範囲で組まれたものでした。今回の入札は、その基盤をそのまま広げるのではなく、再構築したうえで機能を拡張するという内容になっています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は、生成AIを使わせるかどうかという判断ではなく、20校で成立していた設計が約16万人の規模には耐えられない、という点にあったのではないでしょうか。少人数であれば運用の気配りでカバーできる権限の線引きも、教員と児童生徒にアカウントを分けて全都立学校へ配るとなれば、仕組みとして解かざるを得ません。使う相手が児童生徒である以上、安全面の担保も選択肢ではなく前提条件になります。作り直すという判断は、規模が変われば設計そのものが変わるという現実を受け止めた結果と読めます。
どうやって、うまくいったのか
入札要件が、AIモデルの性能比べではなく「どう使われるか」の三点に整理されている点が、この取り組みの起点になっています。まず入力データが再学習に利用されない専用環境であることを置き、そのうえでアカウントを教員と児童生徒で分け、教員側にだけAIに参照させるデータのアップロードを認める。この順序は、学校で生成AIが止まる原因が性能不足よりも情報の扱いへの不安と権限の曖昧さにあることを踏まえた切り分けだと読めます。
プロンプトライブラリを、ただ貯めるのではなく使用目的と教科ごとにカテゴライズして検索しやすくするという要求も、実運用を左右する部分です。生成AIは指示文の書き方で結果が大きく変わるため、うまくいった指示文が個人の手元に留まったままだと、同じ教科を担当する別の教員は毎回ゼロから試すことになります。分類の軸を目的と教科に定めた設計には、共有を善意まかせにせず、探せば見つかる状態へ移す狙いがあるのではないでしょうか。
構築だけを切り出さず、機能拡張と保守・運用までを一つの委託にまとめた点も見逃せません。学校側に情報システムを継続的に面倒みる専任体制は置きにくく、作って渡すだけでは使われないまま止まる危うさがあります。受託側には、2019年から学習支援サービスを教育現場で提供してきた蓄積があり、対話型生成AIでは有害ワードのフィルタリングや児童生徒の利用状況・履歴の確認といった、学校で必要になる管理機能を作り込んできました。運用まで含めて任せる発注の形は、そうした蓄積を引き出しやすくする組み立て方といえます。
具体的に、どんな成果が出たのか
推進したこと
この事例で出た成果
現時点で公表されているのは受託と契約締結までで、削減時間や利用率といった数値の成果はまだ示されていません。確定しているのは、全都立学校の教員と児童生徒約16万人を対象とする基盤の構築・機能拡張から保守・運用までをコニカミノルタジャパンが担い、東京都とともに事業構想を進めていくという枠組みです。成果の評価はこれからで、要件に定められた三つの機能が現場でどこまで使われるかが、最初の判断材料になると考えられます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、多数の人にまとめて生成AIを配る必要があり、かつ立場によって許される操作が違う組織です。教員と児童生徒という関係は、企業でいえば管理職と一般社員、本社と店舗・工場のように読み替えられます。誰がAIに読ませるデータを登録してよいのかを先に決めておけば、利用者を増やしても管理が崩れにくくなります。
一方で、そのまま持ち込みにくい部分もあります。入力が再学習に使われない専用環境を自前で用意する形は、利用者が数十人程度なら費用が見合わないことが多く、既製サービスに備わる管理機能で足りる場面も少なくありません。今回の要件も、研究校20校で一度動かした経験を踏まえて書かれたもので、検証を経ないまま同じ細かさの要件を書けるわけではない点は差し引いて見る必要があります。
最初の一歩は、社内ですでにうまく使われているAIへの指示文を、業務の種類別に並べて見比べてみること。仕組みを買う前に、共有する値打ちのある使い方が自分たちの手元にどれだけあるかが見えてきます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
コニカミノルタジャパン株式会社
コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区)のグループ企業。教育分野では、生成AIやデータ分析を活用した学習支援サービス「tomoLinks」を2019年より展開し、協働的な学びを支える「学習支援」サービスと個別最適な学びを提案する「先生×AIアシスト」サービスを教育プラットフォームとして提供している。対話型生成AI「チャッともシンク」では、有害ワードのフィルタリングや利用状況・履歴確認など、学校現場での安全な利用を支える機能を備える。
東京都教育庁
出典・参考情報
東京都の「都立学校向け生成AIサービスの構築 及び機能拡張・保守・運用等業務委託」を受託 | コニカミノルタ
発行元:コニカミノルタ株式会社
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