更新 2026.08.17
介護記録をスマホ音声入力に、札幌のグループホームで残業がほぼ消えた理由
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 手書きの記録に毎日追われている
- 職員ごとに書き方がバラバラ
- 申し送り漏れでヒヤリとする
どのようなAIの取り組み?
スマートフォンへの音声入力で介護記録をデジタル化し、記録時間の短縮と残業の解消につなげた介護現場のAI取り組み
業種
認知症対応型共同生活介護(介護・福祉)
取り組み領域
介護記録・申し送り/情報共有
使ったAI
音声入力対応の介護記録アプリ「CareViewer」(音声AI)
主な成果
記録時間が大きく減り、残業がほとんど解消
北海道札幌市でグループホーム(認知症対応型共同生活介護)「満快のふる郷さくら発寒」を運営する株式会社さくらコミュニティサービスが、手書き中心だった介護記録を、スマートフォンで扱う介護記録アプリ「CareViewer」に切り替えました。職員は利用者のそばにいたまま、スマホに話しかけるだけでその場の様子を残せます。CareViewerは介護事業所を運営する立場から現場の使いやすさを重視して開発されたアプリで、紙の記録のデジタル化、テンプレートと音声による入力、計画と記録の連携、健康予測AIによるリスク検知、AIを使った個別介護計画書の作成支援といった機能を備えます。記録が楽になったことで、職員に心の余裕が生まれています。
出典:職員の笑顔が戻った。記録業務の負担軽減で、心に余裕が生まれた 発行元:株式会社さくらコミュニティサービス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前の現場では、職員が毎日の記録業務に追われ、管理者から見ても消耗が明らかな状態が続いていました。手書きのため書き方は人によってばらつき、前の勤務者から情報が伝わっていない場面もあって、ヒヤリとすることがあったと語られています。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は記録の量そのものではなく、記録が「ケアの外側」に置かれていた点にあります。紙と手書きを前提にすると、書く行為は利用者のそばを離れたあとの後工程になり、記憶をたどって再構成する作業になります。そうなると、何をどこまで書くかは個々の職員の判断に委ねられ、書式も粒度もそろわない。認知症のケアで残したいのは、その日その時の心の動きや小さな変化という、言葉にしにくく、時間が経つほど薄れていく情報です。後追いで書く仕組みのままでは、最も残したい情報から先に落ちていったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
入力の手段をスマホへの音声入力に置き換えた設計が、記録の位置づけそのものを変えています。話しかけるだけで残せるため、記録はケアが終わってからの作業ではなく、ケアと並行して行える動作になりました。利用者のそばを離れずに「今」を残せる形にしたことで、記憶をたどり直す工程が丸ごと不要になります。認知症ケアで拾いたい細かな変化は、あとから思い出して書こうとすると真っ先に抜け落ちる部分であり、そこを構造的に守った点が効いたと考えられます。
ソフト選びの基準を、機能の豊富さではなく「パソコンが苦手なベテラン職員でも触れるか」に置いた判断も見逃せません。介護記録は特定の担当者だけが書くものではなく、全員が書き手になります。一部の職員が使えないままだと紙が残り、結局は紙とデジタルの二重運用に落ち着いてしまう。人数が増えても料金が変わらない契約形態は、使う人を絞らずに全員へ配れる前提を金銭面から支えており、操作性と料金体系の両方から「全員が使う」状態を成立させにいった組み立てになっています。
もう一つは、介護事業所を運営する側が現場の使いやすさを起点に開発し、地域密着型サービスに範囲を絞った設計です。汎用の記録システムに寄せず、グループホームの業務で実際に発生する書式や動きに合わせたテンプレートを用意し、計画と記録を連携させて帳票作成の手間を抑える。さらに健康予測によるリスク検知や個別介護計画書の作成支援といったAI機能も、記録を入力する画面と地続きに置かれています。書いた情報がそのまま計画づくりや変化の察知に流れていく構造は、記録を「提出物」から「使うデータ」へ引き上げる設計思想として読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
職員からは記録が本当に楽になったという声が上がり、記録にかかる時間は大きく減って、残業もほとんどなくなりました。情報が即座に全員へ届くようになったことで、利用者の様子をめぐる職員同士の会話も増えています。管理者が最も価値を置いているのは、こうした時間の変化そのものより、職員の心に余裕が生まれ、利用者一人ひとりと向き合う時間を取り戻せた点でした。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、記録の対象が目の前で次々に発生し、その場では書けないので後でまとめ書きしている業務です。訪問先での対応記録、施設や店舗での日々の申し送りなどは、入力の場所と時刻を出来事の発生時点に近づけるだけで、精度と負担の両方が変わる可能性があります。書き手が特定の担当者ではなく現場全員という業務ほど、効果は広がりやすいでしょう。
一方で、そのまま持ち込みにくい場面もあります。音声入力は声を出せる環境が前提なので、周囲に聞かれたくない内容を扱う場や、常に静粛が求められる場所では使いどころが限られます。また、記録の中身が長い分析や判断の説明を含み、口頭では言い切れないものであれば、入力手段を変えても負担は残ります。この事例が成り立ったのは、残したい情報が「その時の様子」という、口に出せる粒度だったことも大きいはずです。
まずは一勤務ぶんの記録を見返し、どの項目なら利用者や顧客の前で声に出して残せるかを見極めてみる。そこからが現実的な出発点になります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社さくらコミュニティサービス
認知症対応型共同生活介護「満快のふる郷さくら発寒」などの介護事業所を運営し、介護現場の紙をなくすことを掲げた地域密着型サービス特化の介護記録アプリ「CareViewer」を開発・提供する企業。
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