実施 2018.06 ・ 更新 2026.08.17
介護の送迎計画をAIで自動作成、ツクイとパナソニックが挑んだ現場基準の設計
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 計画づくりがベテラン頼みになっている
- 毎日の配車とルート決めに時間を取られる
- 現場の細かい事情まで自動化できるか不安
どのようなAIの取り組み?
介護施設の送迎計画をAIで自動作成し、ベテラン一人に集中していた計画づくりを複数人で担える形に変えたAI取り組み
業種
通所介護(介護・福祉)
取り組み領域
送迎計画の作成・配車
使ったAI
送迎計画自動作成システム(クラウド上のAIによるルート算出)
主な成果
送迎人数の少ない日はクリック1つで計画作成でき、担当者が1名から3名に広がった
通所介護を展開するツクイと、パナソニック カーエレクトロニクスが共同で、介護施設向けの「送迎計画自動作成システム」を作り上げた取り組みです。土台になったのは、同社がすでに手がけていたカーナビ連携型の業務車両管理システム「DRIVEBOSS」。そこへ、車椅子の利用や同乗禁止・同乗希望の指定、施設の受入時間帯といった介護現場ならではの制約情報を利用者ごとに設定できる仕組みを組み合わせ、クラウド上のAIが全車両分の割り当てとルートをまとめて算出する形にしています。プロジェクトは2017年春に始動し、東京のツクイ世田谷上祖師谷事業所を舞台に2018年1月から実証実験を実施。2018年6月から基本機能の提供が始まりました。
出典:介護現場の人手不足を救うAI活用の送迎計画自動作成システム・株式会社ツクイ 様 |DRIVEBOSS(ドライブボス) 発行元:パナソニック カーエレクトロニクス株式会社(DRIVEBOSS)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
通所介護では、1日の業務の約3割を送迎が占めます(経済産業省の調査)。曜日ごとに誰が利用するかの基本データはあるものの、道順の効率に加えて、利用者同士の仲の良し悪し、車椅子の要否、入浴時間、その日のスタッフ配置まで見ながら組み立てる必要があり、手作業の計画づくりは難易度の高いパズルに近い作業でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの核心は作業時間の長さそのものではなく、まともな解を出せる人が事業所内で事実上ひとりに限られていた点にあります。業務全体と利用者の顔ぶれを把握している人でなければ組めない、という前提がある限り、人手不足が深まるほど計画作成は代替のきかない工程になっていきます。介護分野の有効求人倍率が3.02倍(2016年)という採用環境の下で、その一人に負荷が集まり続ける構造こそが問題だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
最も効いたのは、効率が最も良いルートを出すアルゴリズムを最終形にせず、人間の判断を組み込む方向へ設計を切り替えた点です。計算だけを突き詰めると、1人だけを乗せて帰ってくるようなコースが提案されることがあり、数字の上では速くても現場では無理が出ます。効率の最大化ではなく「担当者が納得できる計画かどうか」を到達点に置き直したことで、はじめて日々の運用に耐える仕組みになったと考えられます。
現場の複雑さを、感覚ではなくデータとして持たせた作りも要点です。制約情報の設定画面には「車椅子利用」「同乗禁止指定」「同乗希望指定」「施設受入時間帯」といった項目が細かく用意され、利用者を一人ずつセットアップしたうえで、その日の要件を重ねて計画を組み立てます。これまで頭の中にあった条件を入力項目として明示したことが、経験の差を埋める土台になっています。
進め方そのものにも工夫がありました。大阪のパナソニック本社から研究開発員が事業所へ何度も足を運び、必要な情報と不要な情報を洗い出しながら操作画面の構成を詰めており、説明書を見なくても扱える簡便さや誤認識を防ぐ表示にも配慮が及んでいます。作成した計画は訪問先リストとしてカーナビへ転送されるため、ドライバーが行き先を入力する手間も残していません。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
送迎人数の少ない日曜などはクリック1つで計画が作成できるようになり、現場の管理者からは「本当に望んでいたもの」との評価が出ています。作業が標準化されたことで、1人の頭の中で完結していたノウハウが可視化され、計画作成の担当は管理者以外に2名が加わりました。仮運用中の施設からは操作の簡単さや「もう以前のやり方には戻れない」といった声も寄せられ、ツクイ側では本来の業務に時間を振り分けられる点を働き方改革の具体策の一つとして位置づけています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、条件が多くて複雑に見えるものの、その条件を一つずつ言葉にして書き出せる種類の計画業務です。誰と誰を同じ車に乗せないか、何時までに到着すべきか、といった判断が項目として並べられるなら、自動化の対象にできる余地があります。配送、訪問サービス、教室や施設の割り当てなど、人と時間と移動が絡む段取りは近い構造を持っています。
反対に、その場の利用者の体調や天候で計画を組み替える判断まで含めて任せようとすると、この事例の延長線上ではうまくいきません。ここで機能したのは、あらかじめ決めておける条件をAIに渡し、当日の機微は人が握るという役割分担です。また、条件を入力する手間が計画作成の手間を上回るようでは本末転倒なので、設定項目の設計は慎重に見極めたいところ。
はじめの一歩としては、直近1週間分の計画を作った人に「どこで迷ったか」を聞き取り、その迷いどころが入力項目として表現できるかどうかを確かめてみてはどうでしょうか。
この事例は2018年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
パナソニック カーエレクトロニクス株式会社
カーナビ連携型の業務車両管理システム「DRIVEBOSS」を開発・販売し、モビリティ向けの課題解決型ソリューションを手がけるパナソニックグループの企業。ソリューション事業統括部などの体制で、社用車の安全運転支援・業務効率化から介護施設向けの送迎計画自動作成システムまで展開している。
株式会社ツクイ
出典・参考情報
介護現場の人手不足を救うAI活用の送迎計画自動作成システム・株式会社ツクイ 様 |DRIVEBOSS(ドライブボス)
発行元:パナソニック カーエレクトロニクス株式会社(DRIVEBOSS)
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