実施 2025.02 ・ 更新 2026.08.17
生成AIで観光の市場分析を効率化、熱海市の実証で工数を最大15分の1に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 海外向けの情報発信が追いつかない
- 翻訳の手直しに時間を取られている
- 資料を集めるだけで手一杯
どのようなAIの取り組み?
生成AIで観光マーケティングの分析と多言語での情報発信を効率化し、作業工数の削減幅を検証した実証実験の事例
業種
地方自治体の観光振興(公共・行政)
取り組み領域
観光マーケティング/インバウンド対応
使ったAI
生成AI(ChatGPT4o等)・AI翻訳
主な成果
マーケティング分析の工数を最大約15分の1に削減できると実証
株式会社リクルートの観光分野の調査・研究機関であるじゃらんリサーチセンターは、自治体やDMO(観光地域づくり法人)がインバウンド推進を効率よく進めるための生成AI活用実証実験を、静岡県熱海市をモデルケースに実施しました。観光庁の「観光DXにおける生成AIの適切かつ効果的な活用に関する調査事業」として行われた取り組みで、位置情報データを提供するブログウォッチャーが協業に加わり、生成AIツールはリクルートとブログウォッチャーの共同開発という体制がとられています。検証されたのは三つの領域で、台湾・香港・アメリカ市場を対象とした訪日旅行者の分析、観光案内所に集まる問い合わせデータの要約と共有、既存の観光情報を英語・繁体字(中国語)へ展開する多言語発信。いずれも作業時間と出力品質の両面から効果が測られました。
出典:生成AI活用でインバウンド対応を効率化 マーケティング分析工数を最大15分の1に削減、熱海市で実証 | 株式会社リクルート 発行元:株式会社リクルート
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2024年の訪日外国人旅行者数が2019年比115.6%まで戻るなかで、観光庁は自治体やDMOに対してデータ活用の高度化と多言語対応の強化を求めてきました。ただ現場のリソースは限られ、熱海市も国内外から観光客が集まる人気エリアでありながら、インバウンド対応はこれから本格化させる段階にありました。訪日客の動向を示すデータそのものが不足し、多言語対応では品質とコストの折り合いがつきにくい状態が続いていました。
編集部の見立てでは、ここでの詰まりは作業量の多さそのものというより、判断に必要な材料が揃わないまま、その材料を集める作業に人手が吸い取られていく循環にあったのではないでしょうか。多言語の記事や口コミを手作業で収集し、訳して要約する段階で力を使い切ってしまえば、肝心の「どの市場に、何を、どう訴えるか」を考える時間は残りません。データ不足と作業過多は別々の課題に見えて、実際には一本の線でつながっていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
自前の誘客実績データが十分になくても判断材料を組み立てられるようにした設計が、この実証の起点にあります。ネット上に散らばる口コミや掲載記事、検索トレンドといった外部の定性情報と、観光案内所が日々受け取る問い合わせ履歴という地域固有の記録を組み合わせ、台湾・香港・アメリカという市場ごとに競争優位性や訴求ポイント、キーメッセージ、ビジュアル案までを切り出しています。位置情報データを提供するブログウォッチャーが協業に加わり、生成AIツール自体をリクルートと同社が共同で開発するという役割分担も、この材料づくりを支えた要素。持っていないデータを嘆くのではなく、すでに手の届く情報の解像度を上げにいった発想の切り替えが効いた部分ではないでしょうか。
AIの出力をそのまま採用せず、妥当性を確かめる手順を実証の中に組み込んだ点も見逃せません。市場分析では、台湾・香港・アメリカ市場への訪日プロモーションを手がける専門家へのヒアリングを行い、さらに台湾人・香港人を対象とした定量調査の結果と突き合わせています。翻訳でも、機械翻訳システム、日本語の原文をChatGPT4oで多言語化する方法、日本語の原文を用意せずプロンプト指示だけで多言語の文章を新規に作る方法という三通りを並べ、ネイティブチェックによる5段階評価で比べる形がとられました。
続けられる形に落とし込むことを目標に据えた点も、この取り組みの性格をよく表しています。人手とAIの担当範囲を切り分け、プロンプト設計を工夫して出力の精度を高め、低コストで始められる「スモールスタート型」のモデルとして整理する。観光案内所のデータを要約して自治体やDMOの関係者へ高い頻度で配る仕組みまで含めていることからも、一度きりの検証ではなく日々の業務の回転に乗せることを前提に組まれた設計だと読み取れます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
業務内容を細かく分類し、生成AIを使わない場合の想定時間と比較する形で工数が算出され、マーケティング分析は約15分の1、旅ナカ(滞在中)データの分析は約4分の1、翻訳作業は約12分の1に削減できることが示されました。翻訳品質はネイティブチェックの5段階評価で、機械翻訳システムが英語2.9・繁体字3.0だったのに対し、ChatGPTで日本語文章を多言語化した方法は4.0・4.4と上回っています。市場分析の結果は台湾人・香港人を対象とした定量調査とほぼ一致し、専門家からも高い納得感を得ました。今後はサービス化や他エリアへの展開の可能性が検討されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、外部に判断材料が散らばっていて、それを集めて訳して要約する工程が重い業務です。口コミやレビュー、業界メディアの記事、窓口に寄せられる問い合わせ記録といった、形式の揃っていない情報を毎回人手で整えている現場なら、同じ構図が当てはまります。海外向けの発信を抱える事業者にとっては、翻訳を三つの方式で比べて評価するという進め方自体が、そのまま持ち帰れる手順ではないでしょうか。
一方で、この実証は専門家ヒアリングや定量調査、ネイティブチェックという「答え合わせの相手」を用意できたからこそ、出力の妥当性を判定できています。評価する物差しを持たない領域や、成果の良し悪しが公開情報から確かめられない業務では、同じようには進みにくいはずです。数値も実測ではなく、AIを使わない場合の想定時間との比較で出されている点は、自社に置き換えるときに踏まえておきたいところ。
まず試すなら、直近の一件で構いません。翻訳や要約を人が手作業でやったときの所要時間を控えておき、同じ材料を生成AIに渡した結果と、時間と出来ばえの両方で並べてみる。この一往復があるかないかで、次の判断の確からしさが変わります。
この事例は2025年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社リクルート
観光に関する調査・研究、地域振興を行う機関『じゃらんリサーチセンター』を擁する企業。本社は東京都千代田区、代表取締役社長は北村吉弘。本実証では自治体・DMOのインバウンド推進を支援し、ブログウォッチャーと生成AIツールを共同開発した。
熱海市
出典・参考情報
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