実施 2026.03 ・ 更新 2026.08.17
出版取次の新物流拠点で出荷処理が約3倍、倉庫管理システムとロボット連携
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 紙の伝票を見ながらの作業に時間がかかる
- 同じ商品でも出荷単位がバラバラでミスが出る
- 拠点ごとに作業のやり方が違って統一できない
どのようなAIの取り組み?
倉庫管理システムと自動倉庫ロボットを連携させ、新物流拠点で1人1時間あたりの出荷処理を約3倍に高めたAI取り組み
業種
出版取次(卸売・流通)
取り組み領域
物流センター/倉庫の入出荷・ピッキング
使ったAI
自動倉庫システム ラピュタASRS(搬送ルートをAIが判断)+倉庫管理システムSLIMS
主な成果
1人1時間あたりの出荷処理が90行から300行へ約3倍
出版取次で国内最大手の日本出版販売は、文具・雑貨の物流を担う3つの拠点を統合し、新物流拠点「N-PORT新座」を立ち上げました。拠点ごとに分かれた運用と紙伝票中心の作業を見直すにあたり、複数社の比較を経て、セイノー情報サービスの倉庫管理システムSLIMSと、ロボットの動きを管理するRMSを採用しています。あわせて自動倉庫システムのラピュタASRSを導入し、650平方メートルに9階層の棚、91台のロボットと8台のエレベーターが動く環境を構築。ロボットの搬送ルートやエレベーターの選択はAIが自動で判断し、SLIMSからの出荷指示はRMSを経由してロボットへ渡ります。倉庫全体で扱う約4万アイテムのうち、一部の保管・入出庫・ピッキングが自動化されました。
出典:WMS×ASRSで進化する物流基盤~3PL事業拡大による外部収益の獲得~|物流システムのセイノー情報サービス|物流システムのセイノー情報サービス 発行元:セイノー情報サービス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
文具・雑貨の出荷では、鉛筆1本、消しゴム1個といったバラ単位のピッキングが日常的に発生していました。しかも同じ鉛筆でもケース単位で出す商品と1本単位で出す商品が混在し、メーカーからの直接納品も入り混じります。伝票を先に発行する運用のため、ピッキング後に数量不足や傷が見つかれば伝票の修正が生じ、確認とやり直しが重なっていました。拠点ごとに運用もシステムも異なり、旧システムはISBNを前提に設計されていたため、非出版商材の在庫や出荷単位を正確に扱いきれない状態でした。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は出荷量の多さではなく、「この商品はどの単位で出すのか」という判断が、システムではなく紙と人の記憶の側に残されていたことにあります。書籍だけを扱う限り、ISBNを軸にした設計は十分に機能します。しかし文具・雑貨が加わった瞬間、商品を識別するコードも販売単位の情報も足りなくなり、その不足を現場の人が経験で補うほかなくなる。属人化とピッキングミス、そして人材確保の難しさは、この情報の欠落から派生した症状だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
物流機能を疎結合化し、拠点ごとに分かれていた仕組みを全社で統一できる基盤へ置き直した設計が、この取り組みの土台になっています。ISBN前提だったコード設計を改め、JANコードをはじめ多様なコード体系を扱えるようにしたことで、出版物と非出版商材を同じ土俵で管理できる状態が生まれました。機能を細かく切り分けておく構成は、新しい商品ジャンルや処理ルールを足すときに既存の仕組みへ波及させないための備えでもあり、3PLサービスへの展開という先の構想と地続きになっています。
ロボットを現場任せにせず、RMSというロボット管理の仕組みを挟んで倉庫管理システムと接続した構成も効いています。出荷指示はSLIMSから出て、RMSがそれをロボットの動きへ置き換える役回りを担い、搬送ルートやエレベーターの選択はAIが自動で判断します。作業者が搬送の段取りを気にせずに済むのはこのためで、自動化を「機械を置くこと」ではなく「業務の流れの中に機械を組み込むこと」として設計した点が、既存の運用を崩さずに導入できた要因と考えられます。
作業者が歩き回るのをやめ、定位置で指示に従う形へピッキングを作り替えた点も見逃せません。モニターには商品画像と数量、取り出すビンと投入先が表示され、対象のビンは発光し、取り違えればその場で点滅して警告される。判断を人の注意力からシステム側の表示へ移すこの設計は、販売単位が商品ごとに違うという厄介さを、覚えて対処する問題から見れば分かる問題へと置き換えたものです。ビンに段ボール製を採用し、商材サイズに応じて構成を変えられるようにした工夫も、現場側で扱いやすさを調整できる余地として働いています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
移動や探索の作業がなくなったことで、出荷明細の処理能力は1人1時間あたり90行から300行へ、約3倍に伸びました。ラピュタASRSが管理するエリアでは棚卸時の誤差率がゼロとなり、作業の流れが単純になったことで、その日入った人でも作業できる環境になっています。システム面でも、繁忙期に出荷明細が増えてもレスポンスは低下せず、月間70万行規模の処理に対応できる状態です。今後は他社商品を扱う3PLサービスの拡大に向けて、この運用を広げる方針が示されています。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、扱うアイテム数が多く、同じ商品でも出荷単位が分かれていて、その判断を紙の指示書と作業者の経験で埋めている現場です。商品コードの体系が古い業務に合わせて固定されていて、新しい商材を足すたびに例外処理が増えているなら、ロボットより先にコード設計と業務の切り分けを見直すほうが、結果として効いてくるでしょう。
一方で、650平方メートルに9階層の棚と91台のロボットを収める設備は、まとまった物量と出荷頻度があって初めて釣り合います。商品が大型・不定形でコンテナに収まらない場合、拠点が小さく分散していて1拠点あたりの出荷が少ない場合、繁忙期の波がほとんどない場合は、同じ形をそのまま持ち込むのは現実的ではありません。その場合でも、出荷指示をデータで持ち、販売単位の情報をシステム側に持たせる部分だけなら切り離して実行できます。まずは自社の出荷指示書を1枚手に取り、そこに書かれていない情報を作業者が何回頭の中で補っているか、現場に立って数えてみるところから。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
セイノー情報サービス
物流システムを手がけるIT企業。倉庫管理システムSLIMSやロボット管理の仕組みRMSなど、物流ITクラウド・物流業務クラウドのサービスを提供している。
日本出版販売株式会社
出典・参考情報
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