実施 2024.07 ・ 更新 2026.08.17
自動運転レベル4の牽引車が1.0人工分を削減、コマツ茨城工場の構内搬送自動化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 工場内の運搬に人手を取られている
- 重い荷物の運搬で体への負担が大きい
- 危険を伴う構内作業を減らしたい
どのようなAIの取り組み?
センチメートル級の測位とAI制御による自動運転レベル4の牽引車で工場構内の搬送を無人化し、1.0人工分の工数削減につながったAI取り組み
業種
建設機械製造(製造業)
取り組み領域
工場構内の搬送業務
使ったAI
自動運転制御AI(物体認識+高精度測位)
主な成果
搬送業務で1.0人工分の工数を削減
コマツの茨城工場では、2024年7月から自動運転レベル4の自動走行牽引車が構内の搬送を担っています。車両はマクニカのグループ会社であるNAVYA Mobilityが提供するトラクターソリューション「AT135」で、最大17.9トンの牽引能力を生かして重量物を運ぶ生産設備として稼働しています。周囲の状況はレーザーセンサー(LiDAR)で360度スキャンし、地図作成と自己位置推定をリアルタイムに行いながら、ディープラーニングによる物体認識で障害物を判定して走行を判断する仕組みです。その判断の土台となる位置情報は、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill」がセンチメートル級で供給しています。走行ルートは最大約1.2キロメートル。実運用を通じて、搬送業務における1.0人工分の工数削減と、作業者の身体的負担の軽減という効果が得られています。
出典:コマツ茨城工場における自動運転レベル4による自動走行牽引車の実運用を支援~ ichimillを活用したAI制御により、構内搬送の自動化を推進~ | 法人のお客さま | ソフトバンク 発行元:ソフトバンク株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
製造業では労働力不足への対応や脱炭素化の推進が経営課題となり、人手依存度の高い構内搬送では、安全性の確保と効率化の両面から自動化のニーズが高まっています。コマツ茨城工場でも、搬送業務の自動化と工場のデジタル化を進める手段として自動走行牽引車が選ばれました。
ただ、ここでの困りごとは「運ぶ人が足りない」という数の問題にとどまらないというのが編集部の見立てです。注目したいのは、置き換えの対象になった作業が約400メートルのバック走行を伴っていた点。後ろ向きで長い距離を運ぶ作業は身体への負担が重く、周囲を確認し続ける緊張も伴うため、任せられる人は自然と限られます。重量物を安全に扱えるフォークマンを、負担の大きい定型的な移動に張り付け続けざるを得ない——この配置の硬直こそが、自動化に踏み切る本当の理由だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
AIの走行判断そのものではなく、判断の前提となる自己位置の精度を外部の空間データ基盤に委ねた切り分けが、この構成の要と考えられます。車載側はLiDARで周囲を360度スキャンして地図作成と自己位置推定を同時に行い、ディープラーニングの物体認識で障害物を判定しますが、そこにGNSS(全球測位衛星システム)とRTK補正によるセンチメートル級の測位データが重なることで、走行の基準が二重に確保されます。屋外の工場構内は、天候や周囲の構造物の影響で車載センサーだけでは位置がぶれやすい環境です。周辺認識と測位を別々の仕組みで支える設計は、AI制御の安定性を実運用に耐える水準まで引き上げる現実的な解と言えます。
もう一つの要因は、この牽引車を試験的な導入物ではなく「生産設備」として位置づけた点にあります。最大17.9トンという牽引能力を重量物搬送という本来の業務にそのまま充てているため、人の作業を部分的に手伝うのではなく、工程の一区間をまるごと引き受ける形になっています。走行ルートを最大約1.2キロメートルに定めたことも、特定の走行環境条件を満たす限定領域で運転操作を代替するレベル4の要件と、現場の運用範囲を噛み合わせる判断だったと読めます。
導入して終わりにせず、運用開始後も現場の運用に合わせた調整を重ねながら実運用フェーズへ移した進め方も見逃せません。自動走行は、経路や周辺の作業手順といった現場側の条件が変わるたびに挙動の見直しが必要になります。稼働させながら調整の余地を残す運び方が、生産活動に組み込んだ状態での安定稼働を支えたのでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
実運用を通じて、搬送業務では1.0人工分の工数削減につながり、フォークマンの稼働を確保できる状態が生まれています。約400メートルのバック走行を伴う搬送作業が置き換わったことで作業者の身体的負担も軽くなり、労働安全衛生の改善に結び付いています。NAVYA Mobilityのトラクターソリューションを用いた国内初の導入・実運用事例でもあり、今後はセンシングしたデータを現場へフィードバックする仕組みの整備も検討されています。
うちでも使える?
この構成が生きるのは、搬送の起点と終点、通る経路がおおむね決まっていて、敷地の出入りを管理できる現場です。走る範囲を限定できるからこそレベル4の条件が成立し、位置の把握と障害物の判定という役割にAIを絞り込めます。逆に、荷物の置き場所が日によって変わる、通路に人や車両が不規則に入り込む、屋内で衛星からの電波が届かないといった条件が重なると、同じやり方をそのまま持ち込むのは難しくなります。搬送が短距離の細かな往復で構成されている現場も、重量物を長距離運ぶ本事例とは前提が異なります。
まず確かめたいのは、自社の構内で人が繰り返し同じ経路を走っている区間があるかどうか。フォークリフトの動きを半日だけ追いかけ、距離と往復回数を書き留めてみると、自動化の候補になる区間が輪郭を持ってきます。
この事例は2024年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ソフトバンク株式会社
GNSS(全球測位衛星システム)とRTK(リアルタイムキネマティック)技術を活用し、センチメートル級の高精度測位データをリアルタイムに提供するサービス「ichimill」を提供する電気通信事業者。高精度測位サービスや通信、AI技術を組み合わせた空間データの活用により、製造現場の自動化・高度化を支援する製造業向けIoTプラットフォーム構想を進めている。
株式会社小松製作所(コマツ)
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
