実施 2023.11 ・ 更新 2026.08.17
対話AIロボットが高齢者と会話、ケアマネジャーの面談負担軽減を検証する介護実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 高齢者の状況確認と記録に時間を取られている
- 人手が足りず一人ひとりに向き合えない
- 離れて暮らす家族と様子を共有できない
どのようなAIの取り組み?
対話AIを搭載したコミュニケーションロボットで高齢者の健康状態を聞き取り、ケアマネジャーの面談業務の負荷軽減を検証する介護実証に取り組んだ事例
業種
介護サービス(介護・福祉)
取り組み領域
介護モニタリング/ケアマネジャーの面談・記録業務
使ったAI
対話AIシステム「MICSUS」を搭載したコミュニケーションロボット(マルチモーダル音声対話AI)
主な成果
業務負荷軽減の効果を実証で検証中(先行実証では面談・記録時間を約7割削減)
KDDI、シャープ、日本総合研究所、やさしい手の4社は、2023年11月17日から12月18日まで、対話AIを載せたコミュニケーションロボットを高齢者の居室に設置する実証を実施しています。使われるのは、シャープの小型ロボット「RoBoHoN」に、介護モニタリングの一部を代替する対話AIシステム「MICSUS」を搭載した端末です。ロボットはあらかじめ設定された時刻に高齢者へ話しかけて健康状態を尋ね、それ以外の時間帯も高齢者からの呼びかけに応じて雑談を交わします。やり取りの履歴と要約は専用サイトでケアマネジャーと家族の双方に共有され、健康面で注意すべき回答があった場合には警告画面で知らせます。対象は、やさしい手が東京都内で運営するサービス付き高齢者向け住宅の入居者と棟外利用者、計10名です。
出典:介護人材不足解消に向け、対話AI搭載型ロボットによる介護実証を実施 | KDDI ニュースルーム 発行元:KDDI株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
介護業界では2025年度に約32万人、2040年度には約69万人の人手不足が見込まれており、ケアマネジャーが担う高齢者の状況確認は、需要が増えるほど時間を圧迫していきます。一人暮らしの高齢者の増加に伴う社会からの孤立や、会話の不足による健康状態悪化のリスクも、この事例が挙げる課題です。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は訪問や面談の回数が足りないという量の問題だけではありません。KDDIが2022年6月から2023年1月にかけて実施した先行実証では、ぬいぐるみ型の専用端末によって面談と記録に要する時間を大きく減らせた一方、端末に対する関心度の低下、雑談内容の充実度、会話内容を家族へ共有できないことが課題として残りました。聞き取りを機械に肩代わりさせるところまでは到達しても、高齢者が話し続けたくなる状態と、集めた情報を人へ渡す経路が欠けていたわけです。負荷軽減を阻んでいたのは聞き取りそのものの効率ではなく、その前後にあった。
どうやって、うまくいったのか
使い続けてもらう仕掛けを、対話の中身だけでなく端末そのものの側に持たせた点が、この設計の起点になっています。先行実証で見えた関心の低下に対し、今回は身ぶり手ぶりで反応する小型ロボットに対話AIを載せ、言葉のやり取りに非言語の要素を重ねました。さらに、モニタリングのための質問と、Web情報やニュース記事をもとにした雑学対話をシームレスに切り替える構成にしています。会話を業務上の聞き取りに閉じず、高齢者の側から話しかける余地を残したことが、日常の中に置かれ続ける条件をつくったと考えられます。
聞き取る内容を「適切なケアマネジメント手法」に準拠させた判断も、実運用を強く意識したものです。これは厚生労働省の補助事業の一環で整理された、アセスメントやモニタリングの項目をまとめた枠組みで、疾患や状態によらず共通して重視すべき基本ケアに沿った対話が可能になります。AIに質問を自由に組み立てさせるのではなく、ケアマネジャーが本来把握すべき項目を土台に据えたことで、聞き取り結果がそのまま業務の記録として意味を持つ形に落ちました。
情報の出口を二方向に分けた設計も見逃せません。対話履歴と要約は専用サイトでケアマネジャーと家族の双方に共有され、家族はスマートフォンなどからチャット形式で日々のやり取りをたどれます。介護事業者側には、健康に関する注意すべき回答があった際に画面上でアラートを発出する機能が加えられました。履歴をすべて読む時間がなくても異変に気づける導線を用意した点は、確認作業を増やさずに見守りの密度を上げる工夫だと読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本実証は2023年11月17日から12月18日まで、計10名を対象に実施される段階にあり、業務負荷軽減や家族とのコミュニケーション活性化への効果はこれから検証されます。先行して行われたぬいぐるみ型端末による実証では、高齢者の健康状態や生活状況の変化を集める面談と記録の業務時間を約7割削減しています。今回はそこで残った関心維持や情報共有の課題に手を入れた構成であり、モニタリング業務の作業効率向上が見込めるとされています。数字が出るのはこの先ですが、検証項目が業務時間だけでなく家族とのやり取りの活性化にも置かれている点は、効果の測り方として押さえておきたいところです。
うちでも使える?
応用しやすいのは、確認すべき項目があらかじめ決まっていて、それを定期的に人が口頭で聞き取っている業務です。この事例のように、聞くべき内容が公的な枠組みとして体系化されていれば、AIの質問設計はその写しとして組み立てられ、結果もそのまま記録に載せられます。
一方で、相手の反応を見ながら質問を組み替える判断が中心の場面や、聞き取った内容の解釈自体が専門職の力量に左右される場面では、同じ形をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。居室に端末を置き続けるという前提も、相手が日常的に同じ場所にいるからこそ成り立つもので、移動の多い相手や短時間の接点しかない相手には当てはまりません。
まず試すなら、いま定期確認で毎回同じ順序で尋ねている質問を並べ、そのうち何問が相手の答えを見ずに聞けるものかを数えてみる。その比率が高いほど、機械に任せられる範囲は広がります。
この事例は2023年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDI株式会社
本実証では全体とりまとめと対話AIシステム「MICSUS」の運用保守を担当。MICSUSは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIP第2期「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の一テーマ「高度マルチモーダル対話処理技術」として、KDDI、情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータとともに採択され、日本総研の協力を得て開発された。実証はシャープ(RoBoHoNの提供・運用保守、RoBoHoN用MICSUSアプリ開発)、日本総研(実証の設計、監修)、やさしい手(実証環境の提供)との4社体制。
株式会社やさしい手
出典・参考情報
介護人材不足解消に向け、対話AI搭載型ロボットによる介護実証を実施 | KDDI ニュースルーム
発行元:KDDI株式会社
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