実施 2025.11 ・ 更新 2026.08.17
衛星データとAIで農地の現地確認54%減を試算、自治体の作付け調査実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 炎天下の見回り作業が重い負担
- 確認を頼む地域の担い手が高齢化
- 紙の地図を持って現場を回っている
どのようなAIの取り組み?
衛星データとAIで農地の作付け状況を判定し、現地確認業務の54%削減という見込みを導き出した自治体の実証の取り組み
業種
地方自治体(公共・行政)
取り組み領域
農政/交付金申請にともなう農地の現地確認
使ったAI
作付け調査アプリ「デタバ」(衛星データ解析AI)
主な成果
現地確認業務の54%が不要になると試算
兵庫県丹波市は、国の交付金申請にともなう農地の現地確認業務を、市内272の農会の会長に依頼する形で進めてきました。作業が集中する7〜8月の酷暑期の負担や、会長職の世代交代が課題となるなか、市はサグリ株式会社が提供する衛星データ活用の作付け調査アプリ「デタバ」を、国の推進事務費を使った実証実験として使い始めます。デタバは衛星から得たデータをもとに、申請された作物と実際の作付けが食い違っている可能性を、圃場ごとに「乖離率」という数値で示します。市はこの数値と職員が現地で確かめた結果を突き合わせ、麦では乖離率50%以下の農地はおおむね申請どおりに作付けされていることを把握。この水準を基準に据えれば、全体の54%で現地確認が不要になるという試算に至りました。
出典:兵庫県丹波市が目指す衛星データとAIで現地確認業務を54%省力化——272の農会と築く持続可能な農業DXモデル – サグリ株式会社 発行元:サグリ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
現地確認を担ってきたのは、市内272の農会それぞれの会長です。作業が集中するのは7〜8月の酷暑期で、炎天下を歩く負担は年々重くなり、世代交代によって農業経験のない人が地域の役割として会長職に就くケースも出てきました。年に3回開かれる説明会では、「作業が大変」「もっと効率化できないか」という声が直接寄せられています。
編集部の見立てでは、この困りごとの芯にあるのは作業量そのものではなく、確認の質が担い手個人の経験と体力にまるごと預けられていた点です。272の農会があれば、何をもって「問題なし」とするかの感覚も272通りに分かれます。誰が見るかで結果が揺れる状態のまま件数だけを削っても、交付金事務としての説明責任は満たせません。負担を軽くすることと、すべての農地を同じものさしで見ることを、同時に解かなければならない課題だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
圃場ごとに乖離の可能性を確率として示す設計が、この取り組みの軸になっています。地図上に農地を並べて表示するだけであれば手段は他にもありますが、申請された作物と衛星から読み取れる状況のズレを数値で出せると、すべての農地を同じ重みで扱う必要がなくなります。確認作業を「行くか、行かないか」の二択として抱え込むのではなく、疑わしさの高い順に並べ替える問題へ置き換えたこと。これが省力化の道筋を具体的にした最大の要因と考えられます。
システムが弾き出した数値をそのまま採用せず、地域ごとに基準線を引く工程を最も大切な作業と位置づけた運用も効いています。生育状況も土地柄も地域ごとに違う以上、どこでも通じる一律のしきい値は現場の実感と噛み合いません。職員が実際に足を運んで確かめた結果と算出値を突き合わせ、自分たちの地域で「ここまでなら見に行かなくてよい」と言い切れる線を自力で定める。この地道な検証があるからこそ、精度の向上に合わせて基準を引き下げ、省力化の幅を年々広げていくという継続的な改善が設計として成立します。
導入の進め方にも工夫があります。いきなり本格導入に踏み切らず、国の推進事務費の範囲で実証実験として始めたため、市の独自予算を通す手続きを経ずに現場で試し、判断材料を集められました。あわせて、システムを使っても一定の農地は職員が抽出して自分の目で確かめる方針が明示されており、確認の全量を機械に預けない切り分けが、制度の適正性を保つという行政側の要請にも応えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
麦では乖離率50%以下の農地がおおむね申請どおりに作付けされていることが確認され、この水準を基準に据えれば全体の54%で現地確認が不要になるという試算が得られています。これは実証段階での見込みであり、確定した実績ではありません。費用面では、農会長への現地確認の依頼に年間およそ260万円を支払っており、これがデタバの利用料とほぼ同じ規模にあたるため、依頼の一部をシステムに置き換えれば追加の費用をかけずに省力化を進められる、という道筋が描かれています。来年度は本格導入を目指し、農会長への依頼を希望制へ切り替える構想も示されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、申請書や届出に書かれた内容と現地の実態を突き合わせる業務のうち、対象が広い範囲に散らばっていて、その違いが外から観測できる形で表れるものです。全件を回るしかなかった確認作業に、優先順位という概念を持ち込めるかどうかが分かれ目になります。
一方で、屋内の作業や、外部から取得したデータでは判定しようのない項目が確認の中心を占める場合には、この形はそのまま持ち込めません。基準づくりの面でも注意が必要です。丹波市が示しているとおり、システムの数値を自分たちの地域の実態に照らして検証する工程を踏まなければ判断の根拠にならず、初年度から省力化が立ち上がると見込むと当てが外れます。突き合わせに使える現地の記録が手元にあるかどうかを、先に確かめておきたいところ。
はじめの一歩としては、昨年の確認作業を振り返り、実際に問題が見つかった件が全体のどれくらいだったのかを数えてみてはいかがでしょうか。その比率がはっきりするだけで、どこに確認の労力を寄せるべきかの議論が始められます。
この事例は2025年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
サグリ株式会社
衛星データを活用した作付け調査アプリ「デタバ」を提供する企業。丹波市からは地元企業として認識されている。
兵庫県丹波市
出典・参考情報
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