実施 2026.03 ・ 更新 2026.08.17
小学校の授業で生成AIを農家役に、児童が対話しながら考えを深める授業づくり
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 一人ひとりに手が回らない
- 新しいツールが現場に定着しない
- 子どもにAIを使わせる安全面が不安
どのようなAIの取り組み?
学校向けの生成AIを学びの伴走者として授業に組み込み、児童が対話を通じて思考を深める授業づくりに取り組んだ事例
業種
公立小学校(教育サービス)
取り組み領域
授業づくり・児童の個別学習支援
使ったAI
学校向け生成AI「チャッともシンク」・学習伴走型AI(tomoLinks)
主な成果
テンプレート活用で授業準備は15分程度、活用が全学年へ拡大
大阪市は令和5年度に文部科学省のリーディングDX事業へ参加したことを起点に、令和6年度からは市独自の「生成AIパイロット校」を指定し、教員が使ってみせる段階から児童生徒自身が使う段階へと舵を切りました。あわせて大阪市教育委員会とコニカミノルタが、AI等を活用した児童生徒の多様な学びの可能性を探る連携協力の協定を締結し、パイロット校でtomoLinksの生成AI「チャッともシンク」の活用が始まっています。指定校のひとつである大阪市立住吉小学校では、1年目は教員が先に使い、そのうえで全学年の児童へ広げる順序をとりました。2年目は学習伴走型AIも加え、個別最適な学びに絞った使い方へ踏み込み、5年生の社会科では生成AIに農業従事者としてふるまわせ、児童がインタビューする授業を組み立てています。
出典:【導入事例】生成AIは「学びの伴走者」、一人ひとりの子供たちに寄り添う活用をめざして – tomoLinks | コニカミノルタ 発行元:コニカミノルタ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
住吉小学校は、次期学習指導要領の改訂を見据えたとき、従来の一斉授業に加えて自由進度学習や自己調整学習といった個別最適な学びを充実させる必要があると捉えていました。ただし現場の実情はそれほど単純ではありません。作文の授業では、ある程度書ける児童には自力で書かせ、教員は書くことが苦手な児童の支援に回るのが通例でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は教員の熱意や人数の不足ではなく、一人の教員が同じ時間に伴走できる相手の数には限りがある、という構造そのものにあります。限りがあるからこそ支援には優先順位がつき、「今は困っていない」と見える児童は自力に委ねられる。個別最適な学びが理念として共有されていても教室で進みにくかった理由は、この配分の問題にあったのではないでしょうか。校内に慎重な意見があったことも、理念の否定というより、増える負担に対する現実的な警戒だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
1年目の使い方を否定してから設計をやり直した判断が、この取り組みの起点になっています。資料の要約や文章作成という、大人が生成AIを使うときと同じ用途で試したところ児童の思考が深まらず、「大人と同じ使い方ではいけない」という結論に至りました。そこで2年目は、学習プロセスのどこに生成AIを置けばこれまでできなかったことが可能になるか、という問いから授業を組み立てています。5年生の社会科で、教員があらかじめ米農家やみかん農家、JA職員など6種類の立場をふるまいとして設定し、児童が画面上でインタビューする活動は、その発想から生まれた具体です。
出力の扱い方をあらかじめ位置づけた設計も効いています。児童にはファクトチェックの大切さを伝える一方で、実際には出力を検証する時間も能力も十分ではないという現実を直視し、フィルタが働いて学習が逸脱しないよう制御される学校向けのAIを土台に選んでいます。さらに、AIとのやり取りで得た内容は結論として扱わず、自分で調べた情報に新たな視点を加える資料と位置づけ、最終的に児童がプレゼンテーションへまとめる流れに落とし込みました。国語の物語では創造性を重視し、資料がほしい場面では正確性を重視するというように、単元の目的に応じて設定を切り替える運用も、AIの性格を教材側に合わせる工夫です。
広げ方の順序にも読み解く価値があります。まず教員が使い、研究授業を公開したうえで全学年の児童へ移すという段取りに加え、「まずは使ってみよう」「合わなければ立ち止まればよい」という引き返せる前提を最初に置いたことで、慎重な意見を説得で押し切らずに済んでいます。教科ごとのふるまい設定テンプレートが用意されている点も、準備の負担を抑えて次の授業へ進みやすくする支えになりました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
農業従事者としてふるまわせる設定を含む授業準備は、教科別のテンプレートを使うことで15分程度に収まりました。児童からは、実際に大人へ取材するより緊張しない、返答がすぐに得られて文字で残るため見直しやすいという声が挙がり、日本語が得意ではない児童にも内容が理解しやすかったという反応も得られています。1年目に児童の反応が良かったことで教員側から活用案が自然に出るようになり、活用は全学年へ広がりました。一方、生成された成果物や児童に身に付いた力をどう評価するか、低学年ではタイピングや音声入力が難しく日常的な利用のハードルが高い点は、課題として残されています。
うちでも使える?
この事例で応用の鍵になっているのは、AIに「本来なら会いに行かなければ話を聞けない相手」を担わせた点です。専門家や顧客、取引先の立場を役割として設定し、質問しながら理解を深める使い方は、社内研修や提案準備、ヒアリングの練習など教育以外の場面にも移しやすいでしょう。役割と答え方の条件をテンプレート化して、担当者が短時間で用意できる状態にしておけるかどうかが、続くかどうかの分かれ目になります。
逆に、出力の正しさを利用者自身が判断できない領域で、AIの回答をそのまま結論として使う用途には向きません。この事例でも、AIから得た内容は調べた情報に視点を足す資料に留め、最終的な解釈と発表は人が担っています。入力手段そのものに不慣れな人が多い現場でも、日常利用まで持っていくには相応の助走が必要です。
まずは、誰かに聞ければ前に進むのに聞ける相手が身近にいない場面を、自分の仕事の中から一つ挙げてみる。その相手の立場と、答えるときの条件を数行書き出して試すだけでも、使えるかどうかの手応えはつかめるはずです。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
コニカミノルタ株式会社
教育向けサービス「tomoLinks」を提供し、生成AI「チャッともシンク」や学習伴走型AI、AIドリル機能、AIダッシュボードなどの機能を展開。大阪市教育委員会と「AI等を活用した児童生徒の多様な学び等の可能性を探るための連携協力に関する協定」を締結し、大阪市の生成AIパイロット校での活用を支えている。
大阪市教育委員会・大阪市立住吉小学校
出典・参考情報
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