実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.17
竹中工務店が法務AIに自社の審査基準を登録、若手の育成期間は約3分の1に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの判断基準が引き継げない
- 契約書のチェックが担当者任せ
- 年間何千件もの書類確認に追われている
どのようなAIの取り組み?
法務特化型AIに自社独自の契約審査基準を登録し、年間2000件規模の契約審査の標準化と若手育成の加速に取り組んだAI活用事例
業種
総合建設業(建設・土木)
取り組み領域
法務/契約審査
使ったAI
法務特化型AI「LegalOn」(AIレビュー・AIアシスタント)
主な成果
自社基準による契約審査の標準化と、若手の育成期間が従来比約3分の1に
株式会社竹中工務店は、本社だけで年間約2000件にのぼる契約審査を抱えてきました。2021年にAI契約レビューのLegalForceを導入して紙の目視審査から切り替え、2025年4月には自社で定めた審査基準をシステムに登録できる「プレイブック」機能を備えたLegalOnへ移行しています。現在は「レビュー」「LegalOnテンプレート」「ユニバーサルアシスト」「LegalOnアシスタント」の各モジュールを、本社法務室だけでなく全国の拠点へ広げて利用中。建築事業で頻出する契約類型を中心に6種類ほどのプレイブックを整え、契約書の要約や版の比較、リーガルリサーチにもAIを使い分けています。
出典:株式会社竹中工務店 | LegalOn(リーガルオン)導入事例 発行元:LegalOn Technologies
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
取り扱う契約は数万円規模の改修工事から1000億円を超える案件まで幅があり、建設関連に加えて業務委託、知財、会社法関連、出向契約と、非定型な類型が多くを占めます。本社だけで年間約2000件、事業部では1日に30件を審査することもありました。紙の契約書を目視で確認していた時期には、記載内容の是非は判断できても、合意管轄や解除条項といった「本来あるべき条項の欠落」に気づきにくいという弱点も残っていました。
ただ、編集部の見立てでは、この組織が向き合っていた困りごとの中心は件数の多さではありません。「どこまで許容し、どこを譲らないか」という線引きが、担当者個人の経験の中にしか存在していなかったこと。ここが本質だったと考えられます。法務部のメンバーは施工事務や工務部といった他部門を経て配属された人が多く、経験値の幅も大きい。そこへボリュームゾーン世代の退職が重なれば、基準そのものが会社から失われていきます。
どうやって、うまくいったのか
AIに読ませる審査基準を、若手が素案を書き、経験豊富なベテランが厳しく指摘を返すという手順で作り上げた点が効いたと考えられます。長年言語化されてこなかった判断の勘所を、既存の文書からではなく、若手の問いとベテランの反応のやり取りを通じて掘り起こす作り方です。弁護士の助言も交えて修正を重ねているため、出来上がった基準は個人の主観ではなく、法務職能として公式に認められたものになります。基準づくりの工程がそのまま知識移転の場を兼ねており、AIの精度を上げる作業と人の育成が同じ流れの中で進みます。
二つ目は、AIが示す一般的な法務の視点と、自社基準に沿った指摘を切り分けて併存させた設計です。汎用的なリスク検知だけでは「この会社としてどう判断するか」に届かず、逆に自社基準だけでは条項の抜け漏れという一般論を拾い切れません。運用でも、論理の矛盾はAIアシスタント、自社基準によるレビューや表記揺れの形式チェックは専用のレビュー機能と、性質の違う確認を別の道具に割り当てています。
対象を建築事業で頻出する類型の6種類程度から始め、使用感を見ながら内容を磨く進め方も見逃せません。全類型を一度に整えようとすれば作成負荷で息切れしますが、頻度の高いところから着手すれば投じた労力が日々の審査で回収されます。入力データが学習に使われないクローズドな環境であることを利用の前提として確認している点も、秘匿性の高い契約情報を扱う部門でAIを日常使いするための土台になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
自社基準に沿った標準化されたレビュー体制が整い、審査の効率と品質の両面で手応えが得られています。特に育成面の変化は大きく、以前は3年ほどかけて一人前になっていた若手が今は1年ほどで成長できるようになった、という実感が示されています。若手が事業部と交渉する場面でも、法務職能が公式にまとめた基準を根拠に「社内ルールに基づく判断」だと自信を持って説明できるようになりました。法人内規程の検討では、ひな形とAIが作ったドラフトを組み合わせることで、ゼロから作る場合に比べ工数を大幅に削減しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断のばらつきが個人の経験に由来していて、その判断を文章のルールとして書き下せる業務です。契約審査に限らず、社内規程の確認や取引条件の可否判断など、「どこまでなら許容できるか」を言葉にできる領域であれば、既製のAIツールに自社基準を載せる形は取りやすいでしょう。
一方で、案件ごとに前提が変わり、相手との関係性や過去の経緯で結論が動く判断は、基準として固定しにくい部分が残ります。この事例でも、最終的な意思決定は人が責任を持って担うという線引きが明確に置かれています。さらに、チェックリストの作成にはベテランが素案に手を入れる時間が要ります。その時間を確保できない組織では、基準づくり自体が途中で止まりやすい点も見ておきたいところです。
始めるなら、直近で判断が割れた条項をひとつ選び、ベテランに「どこまで譲れて、どこは譲れないのか」を聞いて一枚のメモにする。着手はその大きさで十分です。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:バックオフィス・管理部門(人事・経理・法務)
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
LegalOn Technologies
契約審査AI「LegalOn」および前世代サービス「LegalForce」、eラーニングサービス「Legal Learning」など、法務業務に特化したAIサービスを提供する企業。
株式会社竹中工務店
出典・参考情報
株式会社竹中工務店 | LegalOn(リーガルオン)導入事例
発行元:LegalOn Technologies
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