実施 2024.03 ・ 更新 2026.08.17
特別養護老人ホームの音声入力による介護記録、職員1人の受け持ちが2.4人に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 記録のたびに介護の手が止まる
- 少ない人数で現場が回らない
- 新しい機器を現場が使えるか不安
どのようなAIの取り組み?
介護記録の音声入力とモバイル入力により、職員1人が受け持つ利用者を1.8人から2.4人へ広げたAI取り組み
業種
特別養護老人ホーム(介護・福祉)
取り組み領域
介護記録・ユニット間の情報共有
使ったAI
ハナスト(音声入力)/ケアカルテ(介護記録システム)
主な成果
職員1人が受け持つ利用者が1.8人から2.4人に
福岡市西区で特別養護老人ホーム「美の里」を運営する社会福祉法人今山会は、限られた人数でも介護の質を保てる体制づくりを目指し、介護記録システム「ケアカルテ」と音声入力サービス「ハナスト」を取り入れました。ソフト選定の前に現場スタッフへ聞き取りを行い、業務の詰まりが記録にあることを突き止めたうえで、介助をしながら声で記録できる点を決め手としています。導入のおよそ1年前から職員へ告知し、展示会への参加や先行導入施設の見学を経て決定。運用開始後は若手職員が先に操作を覚え、その若手が作ったマニュアルを通じてベテラン職員へ広げていきました。記録と情報閲覧の両方が端末上で完結するようになり、職員1人が受け持つ利用者の比率は1.8人から2.4人へと変化しています。
出典:より少人数で、お客様に手厚い介護を。全員で進めるシステム導入プロセスの”工夫” - 週刊CAREKARTE 発行元:CARE CONNECT JAPAN INC.(週刊CAREKARTE)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
介護の現場は慢性的な人手不足と向き合っており、美の里でも限られた人数で質の高いケアを続けられる体制をどう作るかが課題になっていました。ICT化を検討する段階でスタッフに聞き取りを行ったところ、業務の足を引っ張っている当事者として記録が浮かび上がります。導入前の記録は基本的にアナログで、排泄確認表のような手書きのチェックシートも多く使われていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は記録の量ではなく、記録するたびに介護の手をいったん止めなければならないという中断の構造にあったと考えられます。書く行為そのものは数分でも、利用者のそばを離れて所定の場所へ戻り、紙とペンに持ち替えて、また現場へ戻る。この往復が一日に何度も積み重なると、実際の作業時間よりはるかに大きな時間と集中力が失われます。人手が足りないという表面の悩みの下に、人手の使われ方が細切れになっているという別の問題が隠れていた、という読み方ができます。
どうやって、うまくいったのか
道具を選ぶ前に現場へ聞き取りを行い、詰まっている工程を先に特定したという順序が、この取り組みの土台になっています。ICTを入れること自体を目的にすると、機能の多さやカタログの見栄えで製品を選びがちですが、ここでは「記録業務がネック」という現場発の一点に照準が定まっていました。だからこそ、選定の決め手が「ながら記録ができる」という、業務の中断を解消する一機能に絞り込まれます。課題の特定を先に済ませ、その解消可否だけで判断するという選び方は、機能比較に迷いにくい進め方です。
決定のプロセスに現場を巻き込んだ設計も見逃せません。およそ1年前という早い段階での告知、何が問題でどんなソフトなら解消できそうかという聞き取り、展示会への参加や先行導入施設への見学。上層部だけで決めずに意見を出し合い、こまめに対話を重ねる進め方は、導入時の抵抗を事前に薄めていくやり方だと言えます。実際に触れて体感する機会を挟むことで、未知の道具への不安が具体的な使用感に置き換わっていく点も効いています。
社内への広げ方を、若手を起点とした二段構えにしたことも固有の工夫です。新しい機器に慣れた若手職員が先に習熟し、その若手が作ったマニュアルと説明を介してベテラン職員へ渡していく。ベンダーの標準マニュアルではなく、同じ現場の同僚が自分たちの言葉で書いた手順書が橋渡しになるため、機器への不安を抱く層にも受け入れられやすい構造ができあがります。習熟の速い層と慎重な層を同じスピードで走らせない、という割り切りが定着を支えたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
皿洗いや介助の最中でもハンズフリーで記録できるようになり、記録にかかる時間が大きく節約されています。音声入力には多少の変換ミスが生じるものの、入力後の確認はすぐ済むため運用上の支障にはなっておらず、日本語が流暢でない外国人従業員でも問題なく入力できています。3つのユニットのどこにいても情報を確認できるようになり、閲覧のための移動も不要に。ハナストがインカムのように使えたことで携帯する機器が減り、ポケットや腰から機械が減ったという副次的な効果も生まれました。こうした積み重ねにより、職員1人が受け持つ利用者の比率は1.8人から2.4人へと変化し、利用者と関わる時間の増加や休暇の取りやすさにもつながっています。現在は見守りカメラの配置も進んでおり、映像で緊急かどうかを判断できるため、センサーの反応による不要な訪室を減らす方向へ動いています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、作業の途中で手を止めて紙に書き写す場面が繰り返し発生し、記録する内容がある程度決まっている業務です。清掃や点検、配送、飲食の現場など、両手がふさがった状態で報告を残す必要のある仕事であれば、声で入力して後から確認するという流れは移植しやすいと考えられます。一方で、記録内容が長文の判断や機微な表現を含む場合や、利用者・顧客のそばで声を出しにくい環境では、同じ形はそのまま当てはまりません。変換ミスを前提に確認の手順を織り込めるかどうかも、実運用に耐えるかの分かれ目になります。
もう一つ参考になるのは、道具そのものより導入の進め方です。使う人へ早めに知らせ、意見を集めてから選び、実機に触れる場を設け、覚えの速い人から広げる。この順序は業種を問わず再現できます。まずは現場の数人に、一日のどの瞬間にいちばん手を止めているかを聞いてみてはいかがでしょうか。答えが記録に集中するなら、それが最初の照準になります。
この事例は2024年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
社会福祉法人 今山会 美の里
出典・参考情報
より少人数で、お客様に手厚い介護を。全員で進めるシステム導入プロセスの”工夫” - 週刊CAREKARTE
発行元:CARE CONNECT JAPAN INC.(週刊CAREKARTE)
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