実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.13
LPガス配送計画をAIで自動化、毎日30分の手作業が5〜10分に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 配送ルートづくりがベテラン任せ
- 担当者が休むと業務が回らない
- 紙の伝票の印刷と管理が負担
どのようなAIの取り組み?
AIによるガス残量予測と配送計画の自動作成で、配送計画づくりの属人化解消に取り組んだ事例
業種
LPガス供給・配送(エネルギー・インフラ)
取り組み領域
配送計画作成・配送業務
使ったAI
Routify(AIによる残量予測・配送計画自動作成)
主な成果
毎日30分の訪問順づくりが5〜10分の見直しのみに
高知県でLPガスを供給する土佐ガスは、2024年4月から、AIがガス残量を予測して配送計画までを自動作成する「Routify」の運用を開始しました。開発はソフトバンクが九州大学と共同で進めたもので、導入前の効果検証やチューニングもソフトバンクが担っています。同社はLPWAという省電力の無線通信に対応した機器をガスメーターに取り付け、検針データを毎日自動で受け取る体制を整えており、そのデータを土台に残量予測と配送順・ルートの自動計算を組み合わせました。全7名の配送員が毎日利用し、紙の配送伝票はタブレット上の管理へ切り替え。管理者側の画面では各配送員の計画と進捗、ガス切れが近い物件が一覧で確認できます。
出典:土佐ガス株式会社 | 導入事例 | 法人のお客さま | ソフトバンク 発行元:ソフトバンク株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
スマートメーターの設置によってガス残量の予測精度は上げられていた一方、従来のシステムでは配送する順番やルートまでは決められず、その判断は配送員一人ひとりに任されていました。1週間分の配送指図顧客リストを見ながら、移動距離や積載状況を考えて訪問順を組む作業に、毎日平均30分から1時間。加えて配送員の高齢化が進み、現在の担い手が引退した後も同じやり方で配送を続けられるのか見通しが立たない状況にありました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は作業時間の長さそのものではなく、「配送の良し悪しを決める判断が、社内のどこにも記録されていなかったこと」にあります。誰がどの順で回るかが個人の頭の中だけで完結していれば、担当替えのたびに引き継ぎが難しくなり、急な欠勤の代替手配も成り立ちません。時間削減より先に、判断を見える形に置き換える必要があったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
残量予測から配送タイミングの決定、ルートの自動計算までを一つの流れとしてシステム側に持たせた点が、導入判断の中心に置かれています。残量が分かるだけでは配送員の判断作業は残り、ルート作成ツールだけでは「いつ行くべきか」が埋まりません。予測と計画のあいだに人の手作業を挟まない構成にしたことで、属人化していた判断そのものを置き換える道筋がついたと言えます。
地域特性に合わせた事前のチューニングも効いています。高知市内の市街地と、配送先が点在して移動距離が長い郊外エリアでは、最適な回り方の考え方が変わります。残量だけを重視するのではなく残量と移動距離の両面を見てほしいという現場の要望に対し、ソフトバンク側が地域性を踏まえて調整し、導入前に効果検証を行ったうえで運用に入るという段取りが取られました。この「入れる前に自社の地形で試す」順序が、ベテランの納得感を得る前提になったのではないでしょうか。
導入後も課題を一つずつ潰す並走型の運用が続いている点は見逃せません。稼働当初はデータ連携の不具合が起き、事前の検討事項に入っていなかった原因もあったものの、ソフトバンクと共同で調査・解消を重ねる形で対応しています。さらに管理者画面のダッシュボードで、1週間以内にガス切れになる物件や3日以内に片側が切れる物件、各配送員の計画と進捗を見える状態にした設計が、AIの出力を管理側が日々点検できる仕組みとして働いていると考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
配送員が毎日30分ほどかけていた訪問先の選定と順番づけは、その日回る顧客リストとルートが自動で出る形に変わり、担当歴の長い地区で自分なりに順番を見直す5〜10分程度の作業を残しつつも、手作業だった頃と比べて負荷は明確に下がっています。紙の配送伝票が不要になり、印刷コストと紛失リスクも減少。人の面では、2024年6月頃に土佐清水の拠点で業務を始めた新人配送員が問題なく配送を行えており、インフルエンザによる急な病欠が出た際も応援配送を速やかに手配できています。今後は導入後初の繁忙期となる冬に向け、安定運用と効果の最大化に取り組む段階で、配送車の走行距離短縮によるCO2排出量の削減も期待されています。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、訪問先の「行く時期」と「回る順番」を担当者の経験で決めており、しかもその判断材料になるデータ(使用量や検針値、訪問履歴など)が日々たまっている業務です。この事例では、メーターから毎日自動で検針データが届く状態を先に整えていたことが、残量予測を成り立たせる土台になっています。逆に、予測のもとになる数値が月次の紙記録しかない、あるいは訪問頻度が顧客ごとにばらばらで記録も残っていない場合は、まずデータを取る側の整備が先になります。
もう一つの条件は、地域の事情に合わせて調整できる余地があるかどうかです。市街地と郊外で最適な回り方が異なるように、標準設定のままでは現場感覚と食い違い、ベテランが使わなくなる懸念があります。この事例でも、当初はAIの示すルートと自分の考える回り方の違いにストレスを感じる場面があったと語られています。小さく始めるなら、直近1週間分の訪問記録を使って「誰がどんな理由でその順番にしたのか」を1件ずつ聞き取ってみるところから。判断の根拠が言葉になれば、それが自動化の要件書そのものになります。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ソフトバンク
九州大学と共同で、AIを活用したLPガス容器の配送最適化を可能にするシステムを開発。LPガス事業者が保有する検針データや配送データなどをもとにガスの残量予測と配送計画を自動作成するサービス「Routify(ルーティファイ)」を提供している。
土佐ガス株式会社
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