実施 2026.03 ・ 更新 2026.08.15
伊藤忠食品の受注数予測AI、約4,500品目で誤差率28.9%の実証結果
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 発注数の判断が担当者頼み
- 毎日の発注作業に時間を取られている
- 季節や販促で需要が読めない
どのようなAIの取り組み?
機械学習で倉庫別・商品別の受注数を予測し、発注自動化に向けた精度水準を検証した実証実験の事例
業種
食品卸売業(小売・流通)
取り組み領域
発注業務/需要予測
使ったAI
受注数予測AI(機械学習・深層学習のアンサンブル)
主な成果
一部倉庫で重み付き平均誤差率(WAPE)28.9%を記録(実証実験段階)
伊藤忠食品とDATAFLUCTは、発注業務の自動化を見据えた実証実験として、受注数を予測するAIモデルを共同で構築しました。対象となったのは5か所の物流倉庫、約4,500アイテムです。伊藤忠食品が保有する過去の出荷実績や各種マスタデータに、DATAFLUCTのデータ活用プラットフォーム「Airlake」を通じて取得した気象情報やイベント情報などの外部データを組み合わせ、倉庫別・商品別・日別に受注数を予測する仕組みが組まれました。モデルには深層学習アルゴリズムとツリー系のLightGBMなどを掛け合わせた独自のアンサンブル手法が採られ、複数のモデル分割パターンや特徴量エンジニアリングもあわせて検証されています。一部の倉庫では重み付き平均誤差率(WAPE)28.9%を記録し、実務利用を見据えた精度水準が確認された段階です。
出典:DATAFLUCT、伊藤忠食品と「受注数予測AI」の実証実験を完了。複雑な食品卸の現場で実務利用に向けた有望な精度水準を確認 | DATAFLUCT[データフラクト] 発行元:株式会社DATAFLUCT
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
伊藤忠食品は約4,000社のメーカーと約1,000社の小売業をつなぎ、約50万アイテムを扱う食のインフラを担っています。そこで課題になっていたのが、物流効率化の取り組みを背景とした発注業務の煩雑化と、それに伴う発注担当者の負担増でした。
もっとも、負担の本質はアイテム数の多さそのものではなかったのではないでしょうか。食品卸の発注では、季節性や販促による急な需要増を読むと同時に、メーカーごとに異なるリードタイム、大型連休の休配、最低発注ロット、賞味期限といった制約を満たす必要があります。つまり「どれだけ売れるか」を見積もる作業と、「その数量が物流や商習慣の条件に収まるか」を確かめる作業が、担当者一人の頭の中で同時進行していた。編集部の見立てでは、この二つが分離されないまま人手に残っていたことが、業務を重くしていた構造だと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
需要予測と発注ロジックを切り分け、担い手まで分けた役割設計が、この実証の骨格になっています。予測モデルはDATAFLUCTが伊藤忠食品と連携して開発し、その予測結果を用いた発注ロジックの設計・実装は伊藤忠食品が自社の業務ノウハウを踏まえて進める形が取られました。休配や最低ロットといった制約の知識は、データそのものではなく業務側の経験に蓄積されているため、そこを外部に委ねずに手元へ残した切り分けは合理的です。予測の精度と、制約を満たす発注数の妥当性を別々に検証できる形になった点も見逃せません。
不規則な需要に対して、モデルの作り方そのものを検証対象に据えた進め方も効いています。単一のアルゴリズムに賭けるのではなく、最新の深層学習アルゴリズムと汎用性の高いツリー系モデルであるLightGBMなどを組み合わせた独自のアンサンブル手法を用い、加えて複数のモデル分割パターンと特徴量エンジニアリングが検証されました。約4,500アイテムともなれば、定番品と季節品、回転の速い商品と遅い商品で需要の癖はまるで違います。どの単位でモデルを分けるかという探索を、アルゴリズム選定と同格の検証項目に置いた設計が、食品卸特有の不規則さに向き合う土台になったと読めます。
社内の実績データと外部データを一つの基盤に集約した準備も、分析の前提を支えました。データ活用プラットフォーム「Airlake」を用いて出荷実績を統合したうえで、気象情報やイベント情報といった社外の要因を取り込む構成が採られています。季節性や販促に伴う変動は、社内データだけを眺めていても説明のつかない部分が残るため、変動要因を外から補う設計は予測の説明力を左右する分かれ目だったのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証は5拠点の倉庫、約4,500アイテムを対象に実施され、一部の倉庫では重み付き平均誤差率(WAPE)28.9%が記録されました。食品卸で自動化の障壁とされてきた季節性による急激な変動や、販促施策に伴う突発的な需要増についても、一定の傾向を捉えられることが確認されています。ただし現時点は実証実験を完了した段階であり、物流制約を組み込んだ発注ロジックの実装や全国拠点への展開はこれからです。数字そのもの以上に、どの拠点なら実務に載せられそうかの見極めがついたことに意味があると考えられます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、商品別・拠点別・日別の出荷や受注の履歴が過去分まで残っていて、需要が動く理由を気象やイベントのような外部の情報である程度説明できる業務です。逆に、扱う商品の入れ替わりが激しくて履歴が数か月しか溜まらない、あるいは数量が取引ごとの個別交渉で決まるような業務では、同じ手つきをそのまま持ち込んでも精度は伸びにくいはずです。拠点が一つしかなく、モデルの分割パターンを比べる余地がない場合も、この事例ほどの検証は組みにくいでしょう。
今日できる一歩としては、直近の発注のうち、担当者がシステムの数字を手で書き換えた分を数件だけ拾い出し、書き換えた理由を一行ずつ添えてみることを挙げておきます。休配だったのか、最低ロットに届かなかったのか、販促の連絡が入ったのか。その理由の並びが、AIに渡せる予測の材料と、人が引き受けるべき制約との境界線を示してくれます。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社DATAFLUCT
「データを商いに」をビジョンに掲げ、埋もれていたデータから新たな価値を生み出すデータビジネスパートナー。非構造化データを含むマルチモーダルデータ活用に強みを持ち、データの収集・蓄積・加工・分析を一気通貫で実現する。事業内容はデータプラットフォーム構築・運用支援事業、DX推進支援・運用支援事業、サステナブルデータビジネス事業。データ分析・AIエージェント構築を支援するプラットフォーム「Airlake」を提供。2019年JAXAベンチャー認定企業。資本金14億9,712万円(資本準備金含む)。
伊藤忠食品株式会社
出典・参考情報
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