実施 2024.10 ・ 更新 2026.08.13
USB端末で動く軽量AI、CTCが進める日本語モデルの共同開発と社内検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 機密データをクラウドに出せない
- 自社サーバー構築の費用が重い
- 通信が不安定な現場でもAIを動かしたい
どのようなAIの取り組み?
端末単体で動く軽量な基盤モデルの日本語対応を共同で進め、社員のノートPCで試用しながら実用性を見極めている共同検証の取り組み
業種
システムインテグレーター(IT・通信)
取り組み領域
基盤モデルの日本語対応と社内検証/新規事業開発
使ったAI
Liquid Foundation Models(端末で動く軽量な基盤モデル)
主な成果
日本語対応モデルが4サイズで登場し、社内検証を進行中
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2024年10月、米マサチューセッツ工科大学発のスタートアップLiquid AI, Inc.の日本法人であるLiquid AI株式会社へ出資したことを発表しました。Liquid AIは、線虫の神経系に着想を得た独自アーキテクチャLiquid Neural Network(LNN)を用い、Liquid Foundation Models(LFMs)と呼ばれる基盤モデルシリーズを開発しています。LFMsは、生成AIで多く使われているTransformer型のモデルと比べて計算量とメモリ消費が少なく、小型のコンピュータやエッジデバイス上でも動く点が特長です。両社はこのモデルの言語版について日本語対応を共同で進め、あわせてCTC社内での試用による検証に取り組んでいます。2025年5月時点で1B・3B・7B・40Bの各サイズの日本語対応テキストモデルが登場しており、社員が通常業務で使うノートPCにモデルを載せて使い勝手を確かめる実験フェーズも想定されています。
出典:生成AIを経営資源に変える | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ 発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
クラウドサービスとして生成AIを使えば、学習データや生成結果が社外に出ていきます。かといって自社で仕組みを抱え込もうとすると大規模なサーバ構築が必要になり、その投資を回収できるのかという不安が経営陣に残ります。CTCがこの協業の出発点として挙げているのは、この二者択一の窮屈さです。
編集部の見立てでは、困りごとの本質はセキュリティでもコストでも単独ではなく、その中間に置ける選択肢が存在しなかった点にあります。企業にとっての問いは「AIを使うか使わないか」ではなく、機密性を保ったまま、投資判断に耐える規模でAIを動かす手立てが見つからないことでした。柘植会長が語る日本企業の意思決定の遅さも、単なる慎重さというより、極端な二択しか用意されていない状態で判断を迫られてきた結果という面があるのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
計算量とメモリ消費の少なさをモデルの構造そのものから設計し直した点が、この取り組みの土台になっています。Liquid AIが用いるLiquid Neural Network(LNN)は、線虫の神経系に着想を得た動的な数理モデルで、固定的な構造を持つ従来のニューラルネットワークとは異なり、内部状態を柔軟に変えながら処理を進めます。この構造を基礎に開発された基盤モデル群LFMsは、Transformer型のモデルより処理にあたっての計算量とメモリ消費が少なく、非常にコンパクトな設計になっています。30億パラメータ規模のモデルをUSB端末のような小型デバイスで扱えるところまで小さくできれば、データを外部に送る必要も、大規模なサーバを抱える必要もなくなり、二つの制約が同時に外れます。
売る前に自分たちが最初のユーザーになるという検証の順序も、この事例の特徴です。日本語対応を共同で進めながら、CTC社員が通常業務で使っているノートPCにモデルを載せて社内で使ってみる、という進め方がとられています。ここで見ようとしているのは性能の数値だけではなく、使う人のスキルによって結果にどれだけ差が出るかという、実務に置いてみないと分からない部分です。先進技術をそのまま輸入するのではなく「使える形」に整えてから市場に届けるという方針が、この順序に素直に表れています。
フィードバックと改善のループを速く回す前提で役割を分けた設計も、見逃せない要素。基礎研究とモデル開発を担う技術者集団の側と、日本市場への理解や大規模な企業運営の経験を持つ側が、互いに欠けているものを持ち寄る形になっています。完成品を届けるのではなく、まず使ってもらい、そこで出た良し悪しを受けてモデルを反復的に改良するという進め方も、両社の共通認識として置かれています。欧米のベンチャーキャピタルが運営するテック系ファンドへ出資し、有望なスタートアップと先行して関係を築くNAPPという入口の仕組みが、この距離の近さを支えている点も押さえておきたいところです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現時点で示されているのは導入前後を分ける数値ではなく、検証を進められる土台が整ったという事実です。2025年5月時点で1B・3B・7B・40Bの各サイズにおいて日本語対応のテキストモデルが登場しており、社内での試用と検証はこれを使って進む段階にあります。市場側でも既に数社が関心を示し、1業種1社ずつで4〜5件の事例づくりが当面の目標に据えられています。なお、開発コストを1/10から1/1000以上に抑えられるという水準は、Liquid AIのRamin CEOが自社技術の効果として述べたもので、今回の検証で確かめられた実績ではありません。
うちでも使える?
応用の見込みが立ちやすいのは、扱う情報の性質上どうしてもクラウドに預けられない業務です。この事例でも、情報をオンプレミス(自社内の機器)で保持し機密性が求められる法律・金融・医療といった規制の厳しい分野が、有望な適用先として挙がっています。通信環境が安定しない場所や、そもそもネットワーク接続を前提にできない現場で、端末側だけで完結させたい処理を抱えている場合も、検討の対象になります。
一方で、慎重に見ておきたい条件もあります。日本語対応モデルはまだ検証が進行している最中で、業務品質を裏づける公開実績がそろっているわけではありません。広い知識の参照や込み入った推論を前提にする用途では、小さく速いという利点が必ずしも生きず、大きなモデルを使うほうが素直な場面も残ります。端末ごとにモデルを配って更新していく運用を誰がどう管理するのか、という論点も付いて回ります。まずは、クラウドに出せないという理由で見送ったままの業務を一つ思い出し、そこで必要な処理が要約や検索の範囲で足りるのかを確かめてみるところから。
この事例は2024年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)
1980年代から北米を中心に最新テクノロジーの市場調査や新製品・サービスの発掘、パートナー連携を通じて技術力とノウハウを蓄積してきたIT企業。1990年に米国でCTC Americaを設立し、先端技術を国内ビジネスに取り込んできた。近年は海外スタートアップとの共創プログラム「NAPP(North American Partnership Program)」を通じ、欧米のベンチャーキャピタルが運営するテック系ファンドへの出資などで新規ビジネスの創出に取り組んでいる。
出典・参考情報
生成AIを経営資源に変える | CTC - 伊藤忠テクノソリューションズ
発行元:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
