実施 2025.08 ・ 更新 2026.08.15
イオンリテール、約10万人が使う従業員マニュアルの生成AI化を店舗で検証
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 覚える手順が多すぎて新人が育たない
- ベテランに質問が集中している
- 担当者ごとに案内の内容がばらつく
どのようなAIの取り組み?
Azure OpenAI を使った次世代型の従業員マニュアル「AIアシスタント」を、店舗のサービスカウンターで検証しているAI取り組み
業種
総合スーパー(小売・流通)
取り組み領域
店舗運営/サービスカウンター業務
使ったAI
AIアシスタント(Azure OpenAI の生成AI)
主な成果
数店舗で検証中、マニュアルを探す時間の短縮に手応え
イオンリテールは、約400店舗・約10万人の従業員を抱える総合スーパーで、店舗従業員の業務を支えるデジタル施策を進めています。その一環として、業務ごとに分かれていた端末を1台にまとめ、1回のログインで複数の業務システムを横断利用できる専用端末「オールインワン デバイス」と「従業員アプリ」を開発しました。あわせて、Azure OpenAI を用いた次世代型の従業員マニュアル「AIアシスタント」の検証を進めています。対象になったのは、免税対応やポイントの仕組みなど80種類程度のオペレーションを覚える必要があるサービスカウンター業務です。開発では日本マイクロソフトが現場の声を踏まえた提案を行い、現在は数店舗での検証段階にあります。
出典:現場の声から生まれたイノベーション。イオンリテールが実現した Microsoft AI 活用の次世代型従業員マニュアル「AIアシスタント」 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
サービスカウンターは、通常の売り場が50種類程度であるのに対し、免税やポイント制度を含めて80種類程度のオペレーションを覚える必要があり、内容の更新も頻繁に発生します。育成に割けるリソースは限られるため、専門知識を持つベテラン従業員への依存が強まり、人によって回答の精度にばらつきが出る状態が生まれていました。以前にチャットボットで回答の標準化を試みたものの、店舗ごとに立地も規模もオペレーションも異なるなかでは、うまく機能しませんでした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は覚える項目数の多さそのものではなく、知識の「鮮度」と「店舗ごとの差」を、人の記憶と教育だけで吸収し続けようとしていた構造にあります。免税の知識は訪日客の多い店舗では法改正まで自然に追いかけられる一方、そうでない店舗では優先度が下がるという現場の指摘は、ばらつきが個人の努力不足ではなく、店舗が置かれた条件から生まれていることを示しています。
どうやって、うまくいったのか
答えをあらかじめ作り込むのではなく、その都度マニュアルを参照して回答を組み立てる方式を選んだ点が、設計上の要になっています。立地も規模もオペレーションも異なる約400店舗を、全店共通の想定問答で覆おうとすれば、現実の質問と噛み合わないまま更新の手間だけが積み上がります。生成AIを使う判断は、回答そのものを固定するのをやめ、参照される資料の側を整えることで店舗差を吸収する方向への転換だったと読めます。基盤に Azure OpenAI が選ばれたのも、多くの業務システムをすでに Azure 上で動かしていた延長線上にあり、検証に入るまでの距離を縮める現実的な選び方でした。
回答と一緒に根拠となるマニュアルを示す作りも、接客現場での使い勝手を左右する部分です。お客さまを前にした場面では、AIの回答をそのまま伝えてよいのか迷う瞬間が必ず生まれますが、出典が併記されていれば、担当者は自分の目で確かめたうえで案内できます。正確さの最終判断は人に残し、探す作業だけを機械に肩代わりさせる。この切り分けが、対面業務でAIを使える形にしたのではないでしょうか。
使う人の側から作り始める進め方も、この事例に固有の要素です。全店の従業員から Microsoft Forms で要望や困りごとを集め、経営幹部が店舗を訪ねて対話する仕組みがあり、そこで最も多く挙がった「業務端末の一体化」という声がオールインワン デバイスの出発点になっています。筐体デザインを女性中心のチームが担当し、複数のカラーバリエーションと持ちやすさを両立させたのも、支給されたから使う道具ではなく、手に取りたくなる道具にするための判断です。開発を支援した日本マイクロソフトの側も、営業担当が店舗に足を運んで従業員の声を聞き、それを提案に反映する関わり方をしており、要望を伝えて作ってもらう受発注型とは異なる形が採られています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現在は数店舗のサービスカウンターでの検証段階で、定量的な効果は示されていません。検証に参加した従業員からは、咄嗟にマニュアルを思い出せない場面でも回答と根拠のマニュアルが同時に示されるため、正確な案内ができるうえに探す時間も短くなるという評価が出ています。端末についても、明るい色で他のデバイスと見分けやすいという声があり、デザインとAIアシスタントの精度の両面で好意的な反応が寄せられています。今後は検証で得たフィードバックを反映して改善し、全国の店舗へ範囲を広げる計画です。
うちでも使える?
この形が効きやすいのは、手順が文書として存在し、量が多く、しかも更新が頻繁な業務です。加えて、拠点や担当者によって扱う頻度に差があり、その差が案内の質に直結している場合には、根拠付きで答えを引き出せる仕組みの価値が出やすくなります。
一方で、そもそも手順が文書化されておらず、店舗や担当者の口伝で運用が分かれている状態では、参照先がないため根拠を示す作り自体が成立しません。また、この事例では答えを引く場面が接客の最中であるため、片手で扱える端末や1回のログインで済む導線といった道具立てが伴っていました。同じ仕組みをパソコンの前でしか開けない形で置いても、現場では使われないまま終わる可能性があります。まず試すなら、直近1か月で「ベテランに聞かないと分からなかった質問」を数件そのまま書き留め、その答えが今どの文書のどこに載っているのかを実際に辿ってみてはどうでしょうか。辿れない質問がどれだけあるかが、着手できる状態かどうかの目安になります。
この事例は2025年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本マイクロソフト
Microsoft AI のソリューションである Azure OpenAI などを提供する企業。本事例では営業担当が店舗に赴いて従業員の声を聞き、現場のニーズに合わせたシステムを提案・助言する形でイオンリテールの「AIアシスタント」プロジェクトを支援した。
イオンリテール株式会社
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
