実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.15
車載カメラのAIで無申告の道路工事を検知、発見件数4倍の岡山ガス保安巡回
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの退職で巡回の担い手がいない
- 見回りや現地確認に時間を取られている
- Excel台帳と現場情報の突き合わせが手作業
どのようなAIの取り組み?
路線バスやタクシーの車載カメラ映像をエッジAIで解析し、事前申告のない道路工事の発見件数を4倍に高めたAI取り組み
業種
都市ガス供給(エネルギー・インフラ)
取り組み領域
保安・工事パトロール
使ったAI
AI道路工事検知ソリューション(エッジAIによる映像解析)
主な成果
未照会工事の発見件数が週0.1件から0.4件へ4倍に向上
岡山県で都市ガスを供給する岡山ガスは、ガス管が埋まる道路上の工事を見つけて指導する工事パトロール業務を、NTTドコモビジネスとの共同開発で組み替えました。土台になったのは、市街地を走る車両のカメラ映像を集めて提供する映像分散管理プラットフォーム「モビスキャ」です。岡山県で旅客運送業を営む両備グループのバス・タクシー80台にドライブレコーダーを設置し、走行中の映像から道路工事を車載側のエッジAIが検知します。岡山ガス側では、ガス管の埋設位置を扱うGIS(地理情報システム)と連携する保安管理システムを構築し、申請済みの工事情報と検知結果を突合して、確認すべき未照会工事(事前申告のない工事)だけを抽出する仕組みを組み込みました。着手から約2年で現場実装に至り、発見件数は週0.1件から0.4件へと伸びています。
出典:導入事例 岡山ガス株式会社 | NTTドコモビジネス 法人のお客さま 発行元:NTTドコモビジネス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
道路上のガス管に影響しうる工事は、工事事業者からの事前申告が推奨されてはいるものの義務ではなく、申告漏れが一定数残ります。これを見つけるため、岡山ガスでは週に一度、3名が1日がかりでクルマを走らせて工事状況を確認していました。その3名が立て続けに退職して補充が利かず、派遣社員への委託は派遣業法上難しく、関係会社への打診も収益性で折り合わない。巡回そのものを中断せざるを得ない状態に追い込まれています。
編集部の見立てでは、この行き詰まりの核心は人数の不足そのものではなく、業務が「作業は単純なのに判断だけは熟練を要する」という組み合わせだった点にあります。走って目視すること自体は誰にでもできますが、現場を見て対応の要否を見極める部分にはガス供給の経験が必要になる。だから代替要員も外注先も見つからなかった。しかも人を足す発想では、採用できたとしても単純作業を別の誰かに移すだけで、同社が掲げる「社員が活かせる時間を創出し、クリエイティブな業務に専念できる環境づくり」からは遠ざかります。切り分けるべきだったのは人員ではなく、作業と判断のほうだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
巡回用の車両も映像を集めるサーバーも自前で持たない構成にしたことが、この取り組みを成立させた最初の分かれ目だと考えられます。岡山県内でバス・タクシーを運行する両備グループの車両80台にドライブレコーダーを載せ、日常の営業運行のついでに県内を撮り続ける形にしました。モビリティのパートナーを自ら探す必要がないこと、設備を導入せずサービスとして利用できることが選定の決め手として挙げられており、映像を集める負担をすでに毎日走っている事業者の動線に相乗りさせた点がこの設計の要です。
検知結果をそのまま人の目に流さない仕組みも効いています。AIが拾うのは道路上の工事全般で、その多くは申請済みの工事ですから、そのままでは確認対象が膨れ上がってしまう。そこで、通常業務で使うGIS上に申請済み工事の情報を展開できる保安管理システムを構築し、AI道路工事検知ソリューションの出力と突合して、確認が必要な未照会工事だけを残す流れを作りました。従来は手入力のExcelで管理していた工事情報をデータとして投入したことが、この突合を機能させています。
実装の可否を、検知率と網羅率がともに8割という具体的な線で判断した進め方にも注目したいところです。何台のバス・タクシーを走らせれば道路の網羅率が上がるのかを検証しながらAIの学習を重ねる手順は、完成を待たずに区切りを置く判断であり、通常業務を回しながらのチームが息切れせずに続けられた理由でもあるでしょう。運用側にも、カラーコーンや矢印看板、重機、作業員といった要素に点数を付けて高スコア案件から確認するスコアリングや、誤検知を戻せばAIが学ぶ流れが組み込まれています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本格実装後、未照会工事の発見件数は週0.1件から0.4件へと4倍に増えました。事前申請の呼びかけを続けてきたことで見つかるべき工事自体が減っている中での4倍であり、人手頼りだった頃と比べた実質的な発見率の改善はこの数字以上と受け止められています。工事パトロール用の業務車両を廃止したことで、年間約1トンのCO2排出量削減にもつながりました。検知率・道路の網羅率はいずれも当初目標の8割に到達しています。運用面では10秒程度の映像確認で工事の有無を判断し、タブレットで現場担当者に位置情報を共有して即座に向かえるようになりました。工事事業者の間にも申請せずにいるとすぐ見つかるという受け止めが広がり、事前申請の徹底という本来の目的にも効いています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、確認したい対象が公道や公共空間など「誰でも通りかかれる場所」にあり、かつ自社側に照合できる台帳データが揃っている業務です。この事例が回ったのは、走行する第三者の車両から映像が得られたことと、申請済み工事という突合相手が社内にあったことの両方が揃ったためで、片方だけでは確認対象を絞れません。逆に、対象が私有地や屋内にある場合、あるいは判断材料が現場での聞き取りや触診に依存する場合は、映像からの検知に置き換えるのは難しくなります。台帳が手入力のExcelのまま散らばっている状態も、そのままでは突合の相手になりません。
検討するなら、まず自社の現地確認業務を「見つける」と「見極める」に分けて、どちらがAIに任せられる部分かを線引きしてみることです。そのうえで、突合に使える台帳が社内のどのシステムにあり、位置情報として扱える形になっているかを確かめる。地域を走るバス・タクシー事業者や配送事業者との連携余地があるかどうかも、早い段階で見ておきたい観点です。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NTTドコモビジネス
市街地を走行するモビリティに搭載されたカメラから収集した映像を提供する映像分散管理プラットフォーム「モビスキャ」を提供。モビリティ・技術・データ活用の各分野のパートナーとの協創により、市街地映像データを活用した課題解決に取り組む。
岡山ガス株式会社
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