実施 2025.03 ・ 更新 2026.08.13
伊藤園、購買ビッグデータAIで動画制作工数33%減 施策立案の属人化に挑む
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- アイデア出しが担当者頼みで進まない
- 新商品のターゲットが絞り込めない
- 施策の良し悪しを判断する根拠がない
どのようなAIの取り組み?
購買ビッグデータとAIを使ったマーケティング支援ツールを商品プロモーションの立案に活用し、動画制作工数33%削減などにつなげたAI取り組み
業種
飲料メーカー(製造業)
取り組み領域
マーケティング/商品プロモーション立案
使ったAI
BestMove(生成AI+購買ビッグデータ分析のSaaS)
主な成果
動画制作工数33%削減、SNS動画の再生回数125%向上
伊藤園のマーケティング本部は、商品企画のアイデア出しが担当者個人に依存し、意思決定に時間がかかる状態にありました。そこでNECが開発したSaaS型のマーケティング支援ツール「BestMove」を活用。NEC独自のAI技術と大手クレジットカード会社の購買傾向分析データを組み合わせ、商品特徴を入力すると反応が見込める顧客クラスターと複数の施策案が提示される仕組みです。高級緑茶「瓶 お~いお茶 山の音」の販促や、インバウンド向け「matcha LOVE 抹茶」のSNS動画づくりに適用し、その過程で伊藤園側から挙がった要望をもとにナレッジ蓄積機能や入力UIを改良する共創も進められました。現在は全社的な導入に踏み切っています。
出典:最善の一手を誰もが打てる時代へ──伊藤園×NECが挑むマーケティングDXのリアル 発行元:NEC wisdom
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
緑茶製品の商品企画では、担当者やチームが一つの商品を受け持つ体制のなかで、アイデア出しや試作立案の進め方が体系化されておらず、一人で考え込んだり、提案と却下を繰り返して疲弊したりする状況が生まれていました。デジタルマーケティングのスキルや知見も組織として不足しており、新規顧客層や高価格帯商品ではターゲティングの精度が上がらないという悩みも重なっています。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは「良いアイデアが出ないこと」ではありません。むしろ社内には妥当な案が出ていたのに、それを選び切る根拠がなかったことのほうが深刻だったのではないでしょうか。実際、「山の音」では茶葉のこだわりを伝える記事広告という案が社内に既にあったにもかかわらず、他案との比較で踏み切れずにいました。判断の材料が勘と経験しかない状態では、案が増えるほど意思決定が止まる。停滞の正体は、発想力ではなく確信の欠如にあったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
顧客像の抽出に個人情報ではなく大手クレジットカード会社の購買傾向データを使う設計が、施策案に「根拠」を与えた点が大きいと考えられます。商品やサービスの特徴を入力すると、反応が見込める顧客クラスターが趣味嗜好性の軸で抽出され、そのターゲットごとに反応率の高い施策がポジショニングマップ上に複数示される。「新入社員で両親にプレゼントをしたい方」といった具体的な顧客像まで降りてくるため、提示された案が誰に向けたものかが担当者に伝わりやすくなります。
最終判断をAIに委ねず、複数案から担当者が選ぶ形にとどめた点も、現場に受け入れられた要因でしょう。「山の音」では、社内で温めていた案とAIの提案が重なったことで、自分たちの考えに確信を持てたという流れになっています。つまりこの使い方は、答えを教わるためではなく、自分の判断を裏打ちするために使われている。マーケターの「想い」を否定せずに支える立て付けが、抵抗感を下げたのではないでしょうか。
もう一つ見逃せないのが、伊藤園からの要望をNECが機能に反映していく共創の進め方です。部門全体の施策状況を確認したり、成功と失敗のナレッジを蓄積したりする機能は伊藤園のリクエストから生まれ、クラウド上のデータベース構造そのものにまで手が入りました。プロンプトの代わりにテキストを入力するUIも、より簡易な形へと改良されています。使い手が改善要望を出し続けられる関係を作れたことが、ツールを「導入して終わり」にしなかった鍵と読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
高級緑茶「瓶 お~いお茶 山の音」は、提案を踏まえた記事広告が奏功し数日で完売しました。「matcha LOVE 抹茶」のインバウンド向けSNS動画では再生回数が前回比125%となり、24時間で3.1万ビューを獲得。絵コンテの提案により動画制作工数は33%削減されています。加えて、個人やチームに閉じていたノウハウや成功・失敗の要因がマーケティング本部全体で共有されるようになり、部内のコミュニケーション活性化や上司の意思決定の速さにも変化が現れています。広告代理店との検討期間短縮については、今後期待する成果として語られている段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、施策案そのものは出るのに「どれを選ぶか」で止まりがちな組織です。会議で案が並ぶだけで結論が出ない、上司を説得する材料がない、といった状況なら、外部データで顧客像を可視化して判断の裏付けを得るやり方は参考になります。逆に、購買データから顧客層を推定しにくい領域、たとえば取引先が限られるBtoBや、購買行動が数値に表れにくい商材では、同じ精度の顧客クラスター抽出は期待しにくいでしょう。この事例の効果は、消費財で不特定多数の購買傾向が蓄積されている前提に支えられています。
もう一点、この取り組みが定着した背景には、使いながら要望を出し、機能に反映させていく関係性があります。ツールを買って配るだけでは同じ結果にはなりにくい。まずは直近で結論が出なかった企画会議を一つ思い出し、そのとき何が足りなくて決められなかったのかを言葉にしてみる。判断を止めていたのが情報なのか、根拠なのか、合意形成なのかがはっきりすれば、AIに任せるべき範囲も見えてきます。
この事例は2025年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NEC
独自のAI技術と大手クレジットカード会社の購買傾向分析データを組み合わせたSaaS型マーケティング支援ツール「BestMove」を開発・提供する企業。市場分析から施策立案、効果予測、ナレッジの蓄積・活用までをカバーするプラットフォームを提供している。
株式会社伊藤園
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