実施 2024.01 ・ 更新 2026.08.13
木村屋とNEC、約100万曲の歌詞と恋愛番組の会話をAI分析した商品開発
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 若い世代に自社の商品が知られていない
- 定番商品ばかりで話題が作れない
- 新商品の企画が担当者の勘頼み
どのようなAIの取り組み?
恋愛番組の会話と約100万曲の歌詞をAIで分析し、恋の感情を味に置き換えた蒸しパン5種の開発につなげたAI取り組み
業種
パン・菓子製造(製造業)
取り組み領域
商品開発・マーケティング
使ったAI
音声認識、データ意味理解による感情スコア分析、大規模言語モデル「cotomi」
主な成果
恋愛感情を味で表現した蒸しパン5種を開発し、2024年2月から順次販売開始
創業155年の木村屋總本店と日本電気(NEC)が、恋愛感情を味で表現した蒸しパン「恋AIパン」5種を開発しました。素材にしたのは、ABEMAの恋愛番組「今日、好きになりました。」3シーズン分、15時間におよぶ出演者の会話と、約100万曲の日本語歌詞データベースです。NECの音声認識サービスで会話を文字に起こし、データ意味理解の技術で32個の感情ワードとの相関を示すスコアを付与。同じ尺度を歌詞側にも当て、食品が登場する約3.5万曲から食品のイメージが持つ感情の傾向を割り出しました。感情の傾向が近い恋愛シーンと食品を突き合わせて上位50種を抽出し、そこから木村屋の職人が組み合わせを決めています。商品解説文はNECの大規模言語モデル「cotomi」が作成し、2024年2月1日から関東近郊のスーパーなどで順次販売が始まりました。
出典:木村屋とNEC、AIを活用して「恋AIパン」を開発ABEMAの番組の会話と約100万曲の歌詞を分析し、恋愛感情を“味”で表現 (2024年1月17日): プレスリリース | NEC 発行元:日本電気株式会社(NEC)/株式会社木村屋總本店
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
木村屋總本店の販売チャネルは百貨店やスーパーが中心で、若年層の新規顧客づくりと認知の獲得が課題になっていました。加えて、ターゲットとした若い世代については市場調査で“恋愛離れ”の傾向が示されており、単に若者向けの商品を出せば届く、という状況でもありません。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとは「新しい味が作れない」ことではなく、「若い世代の話題の輪に入る入口がなかった」ことにあります。155年の歴史と製造力を持つ企業が、その資産をそのまま提示しても、日常的に接点のない層には届きにくい。だからこそ、商品そのものの改良ではなく、若年層が現に見ている番組と、彼らが日々触れている歌詞という素材を分析の入口に据える発想が選ばれたのではないでしょうか。AIはここで、味を最適化する道具というより、届いていない層の言葉を商品側に翻訳する装置として置かれています。
どうやって、うまくいったのか
異なる種類のデータを、同じ「感情のものさし」に載せて突き合わせた設計が、この企画の骨格になっています。番組の会話は出会いや告白、初めてのデートといった恋愛シーンごとに切り分けられ、32個の感情ワードとの相関を表すスコアが付与されました。同じスコアの付け方を、食品が登場する約3.5万曲の歌詞にも適用しています。感情という主観的で言語化しにくいものを、共通の数値の並びに変換したからこそ、「このシーンとこの果物は近い」という比較が成立したと考えられます。
AIの出力を最終決定にせず、候補リストの段階で人に渡した役割分担も効いています。感情の傾向が近い食品は上位50種としてリストアップされるにとどまり、そこから相性の良い組み合わせを選んだのは、多くの蒸しパンを手がけてきた職人でした。データ上は近い食品どうしでも、生地・マーブル・トッピングとして同時に成立するかは製造と味覚の領域です。AIに「探索の広さ」を、人に「実現可能性の判断」を担わせる線引きが、企画倒れを防いだ実務的なポイントに見えます。
分析結果を言葉に落とすところまでデータの流れをつないだ点も見逃せません。パッケージや特設サイトに載る商品解説文は、食品や感情のデータをもとにNECの大規模言語モデル「cotomi」が作成しています。分析で得た感情の傾向が、商品名・素材・説明文という顧客の目に触れる部分まで一本の線でつながる構成です。なお、番組コンテンツはABEMA、歌詞データベースはシンクパワーが提供しており、分析技術をNEC、商品化を木村屋が担う分業のうえに成り立っています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
成果として形になったのは、恋愛感情を味に置き換えた「恋AIパン」5種(運命の出会い味、初めてのデート味、やきもち味、涙の失恋味、結ばれる両想い味)です。希望小売価格は税込200円で、2024年2月1日の第1弾を皮切りに、3月・4月と3回に分けて関東近郊のスーパーや木村屋オンラインショップで順次販売が始まりました。売上や認知度に関する数値はソースには示されていません。感情のレーダーチャートを商品ごとに提示している点からは、分析過程そのものを商品の説明材料として顧客に見せる意図がうかがえます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、自社の商品カテゴリについて世の中に大量のテキストが存在していて、そこから「誰かの気分」と「モノ」の結びつきを取り出せる場合です。歌詞、レビュー、投稿、番組の書き起こしなど、社外にあるデータを使えば、自社に蓄積がなくても着手できます。感情をスコア化して二つのデータセットを突き合わせるという考え方自体は、食品に限らず、香り、色、贈答品の選定といった主観が絡む企画にも移しやすいでしょう。
一方で、そのまま真似しにくい条件もあります。この取り組みは、番組の会話データや商用の歌詞データベースといった外部の素材を、権利関係を整理したうえで使える体制が前提です。また、AIが挙げた50種の候補から実際に作れる組み合わせを選べる製造の知見がなければ、リストは机上のもので終わります。話題化を狙う設計である以上、発信の場がなければ効果も測りにくい。まずは、自社商品が登場する既存のテキスト(口コミやSNSの投稿など)を一つ選び、そこで語られている気分と商品の特徴がどう結びついているかを、小さな範囲で読み取ってみるところから試せるはずです。
この事例は2024年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:音声・音響
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
日本電気株式会社(NEC)
最先端AI技術群「NEC the WISE」や生成AI「cotomi」を開発する企業。音声認識技術を活用した「NEC Enhanced Speech Analysis」、データの補完・拡張を支援する「NEC Data Enrichment」などのサービスを提供し、プリンやクラフトビールなどAIを活用した食品開発の実績を持つ。
株式会社木村屋總本店
出典・参考情報
木村屋とNEC、AIを活用して「恋AIパン」を開発ABEMAの番組の会話と約100万曲の歌詞を分析し、恋愛感情を“味”で表現 (2024年1月17日): プレスリリース | NEC
発行元:日本電気株式会社(NEC)/株式会社木村屋總本店
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