実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.15
日本製紙が生成AIを入れ替え、1,500名規模へ広げた社内展開の進め方
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内にAIを入れたのに使われない
- 利用料が読めず使用を制限している
- 社内文書を探させても的外れな回答
どのようなAIの取り組み?
操作性・料金体系・社内文書検索の精度を軸に生成AIツールを入れ替え、関連会社を含む1,500名規模へ利用を広げたAI取り組み
業種
製紙・パルプ製造(製造業)
取り組み領域
全社の生成AI活用/情報システム部門
使ったAI
Lightblueの生成AIツール(RAG搭載のチャット型AI)
主な成果
関連会社を含む1,500名規模で運用し、利用者が継続的に増加
日本製紙は2024年度から生成AIの本格活用に着手し、全社展開に向けたトライアルとして、まず別の生成AI基盤を250名規模で導入しました。ところが操作の入り口が重く、使うほど費用が積み上がる料金体系や、社内文書を参照させたときの回答精度にも壁があり、ライセンスを渡した250名のうち約100名はほとんど使わない状態にとどまりました。そこで情報システム部が中心となってツールの見直しに動き、2025年4月にLightblueの生成AIツールへ切り替えたうえで、関連会社を含む1,500名規模での運用を開始しています。導入にあたっては、公式な意見交換の場をあえて設けず現場の口コミに任せる、生成AIの得意・不得意を丁寧に伝える、関心の高い部門から順に広げる、といった進め方が取られました。
出典:「RAG活用断念」「コスト超過で活用にストップ」そんな“失敗AI”からV字回復。日本製紙の全社導入に向けた生成AIツール、選定の決め手とは? | Lightblue 発行元:株式会社Lightblue
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
最初の生成AI基盤でつまずいた原因は、機能が足りなかったからというより、使う人の側に判断を迫る場面が多すぎたことにあったのではないでしょうか。個人向けChatGPTとは異なるUIはプロンプトの心得を前提とした設計で、目的別テンプレートが揃っていても最初の一歩は重くなります。費用面でも、どの作業で高性能モデルが動き、いくらかかるのかがユーザーからは見えにくく、推進担当者は利用を促しながら同時に利用を控えるよう呼びかけるという矛盾を抱えました。月半ばで高性能モデルが使えず、月末はエコノミー版だけという状況も続いています。社内文書の参照についても、本部単位のフォルダに所属部署の資料がまとめて置かれる構造では無関係な情報まで拾われてしまい、検証そのものが早々に打ち切られました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は「生成AIが使えない」ことではなく、操作・費用・回答精度という三方向で従業員に迷いを生む設計だった点にあります。迷いが重なれば、最後まで残るのは関心の高い一部の人だけになる。
どうやって、うまくいったのか
うまくいった要因としてまず挙がるのは、アシスタントごとに参照する知識(ドキュメント)を分離できる設計です。以前の環境では本部単位のフォルダに部署の資料がまとめて集約され、質問と関係のない文書まで検索対象に入り込む構造でした。用途ごとに知識の範囲を区切れば、AIが探しに行く先が絞られ、返ってくる答えの的確さは素直に上がります。RAG(社内の文書を検索して回答に使う仕組み)の精度は、モデルの賢さよりも「何を読ませるか」の設計に左右される部分が大きく、その勘所を突いた切り分けだったと考えられます。
費用の見え方を作り替えた選定も効いています。使った分だけ請求が積み上がる形では、社員が高性能モデルを選ぶたびに管理側が身構えることになり、推進役が自らブレーキを踏む構図から抜け出せません。従量課金を意識せずに済む料金体系へ移したことで、「とりあえず触ってみる」という行動の心理的な負担がほぼ消えました。ChatGPTに近い操作感の画面にWeb検索機能まで載っていた点も、別の検索ツールを案内する手間を省いています。
広げ方の設計も見逃せません。意見交換の場を公式に用意すると、詳しい一部のメンバーの高度な話題で場が埋まり、他の社員が発言しづらくなる——その経験を踏まえ、今回は場をあえて設けず、現場の口コミに委ねる判断が取られました。「10年分の販売データをすべて入れたら売上傾向が分かるのか」といった期待にはBIツールなど別の専門ツールの役割だと説明し、生成AIの守備範囲を先に共有しています。工場のようにまだ導入が進んでいない部門にはトップダウンで下ろさず、アンケートでニーズを把握したうえで関心の高い拠点からワークショップを開く段取りが組まれており、熱量のある場所から順に広げる進め方が採られています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
これまでITツールに触れる機会が限られていた役員層が経営資料の要約などに使い始め、「時短になる」「これは使える」との評価とともに所属部門へ推奨する動きが生まれています。社長自身もユーザーとして利用しており、以前のツールに寄せられていた否定的な意見は届かなくなりました。評判は関連会社にも伝わり、話を聞かせてほしいという問い合わせが発生しています。利用時間の削減幅を数値化する作業はこれからの段階で、現時点では挙手制で利用者が増え続けていること自体が最大の効果と位置づけられており、120名規模のワークショップには各事業所から開催要望も上がっています。
うちでも使える?
この進め方が応用しやすいのは、社内に文書が蓄積されていて、部署や用途ごとに「この質問にはこの資料群を見れば足りる」という線を引ける組織です。逆に、参照すべき資料が部門をまたいで混ざり合い、切り分けの基準自体を決められない状態では、ツールを替えても回答精度の悩みは残ります。全社に配る前提で費用の見通しを立てられない場合も、従量課金への警戒がそのまま利用のブレーキになりやすいところは変わりません。
もうひとつ、この事例の広がり方は経営層が自ら使い始めたことに支えられている面があり、経営層の関心が薄い組織でそっくり再現できるとは限らない点は差し引いて読む必要があります。試すのであれば、すでに使っている社員が「これは助かった」と感じた具体的な場面を数件集め、社内にそのまま流してみるのはいかがでしょうか。旗を振る前に、実際に効いた使い方が一つ見えているかどうか。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社Lightblue
東京大学発のAIスタートアップ。企業向けに生成AIツールを提供している。
日本製紙株式会社
出典・参考情報
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