実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.13
JALの空港業務、ナレッジAIで9割が回答速度向上を実感 全国56空港へ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 分厚いマニュアルから答えを探すのに時間がかかる
- ベテランのメモや経験に業務が依存している
- 新人が自信を持って接客できない
どのようなAIの取り組み?
空港の現場知識を検索できるAIを構築し、全国56空港のグランドスタッフへ展開したAI取り組み
業種
航空運送業(運輸・物流)
取り組み領域
空港地上業務/グランドスタッフのナレッジ検索・案内文作成
使ったAI
ナレッジ支援システム『空港JAL-AI』(生成AI・社内文書検索)
主な成果
回答速度の向上をグランドスタッフの90%以上が実感、全国56空港へ展開
日本航空(JAL)の空港現場で、グランドスタッフの知識と業務を標準化するためのナレッジ支援システム『空港JAL-AI』が構築されました。対象として選ばれたのは「危険物検索」「ラウンジ入場条件検索」「イレギュラーアナウンス文作成」の3業務で、経験豊富なスタッフや本部へのヒアリングから、特に時間と労力を要する領域を絞り込んでいます。プロトタイプを成田・羽田で2〜3週間試したうえで、選択式の操作画面や回答根拠となる文書の引用表示、担当者が知識を追加できる仕組みなどを追加。開発はアクセンチュアが着手し、JAL向け生成AIアプリを導入していたアバナードと連携する体制へ移行しました。2025年4月に全国56空港への一斉展開が行われています。
出典:Accenture-Client-Story-Jal.pdf 発行元:アクセンチュア
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
空港の現場では労働人口の減少による人財不足が深刻化し、従来の人海戦術では運営の維持が難しくなっていました。危険物の可否を調べるには膨大なマニュアルを追う必要があり、それでも判断がつかず内線で問い合わせる場面もある。ラウンジの入場条件は独自契約や空港ごとのルールが絡み、習得に時間がかかる。イレギュラー時のアナウンス文は、複雑な状況説明と多言語対応を短時間で求められる。いずれも日常業務の負担になっていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質は「知識が足りない」ことではなく、必要な知識が個々のスタッフの経験と手元のメモに散らばり、組織として取り出せる形になっていなかった点にあります。人員が潤沢なうちはベテランが補える構造ですが、人が減れば、その属人的な支えごとサービス品質が揺らぐ。AI化の狙いは検索の高速化そのものより、答えの拠りどころを個人から組織側に移すことにあったと読み取れます。
どうやって、うまくいったのか
対象業務を3つに絞り込んだ設計が、まず効いていると考えられます。空港業務全体をAIで置き換えようとせず、経験者や本部へのヒアリングを通じて「時間と労力がかかる」領域を特定し、危険物、ラウンジ入場条件、イレギュラーアナウンスに限定した。範囲を狭めたぶん、参照すべき知識の範囲も評価の基準も明確になり、現場が使って良し悪しを判断しやすくなります。
次に、実証で出た不満をそのまま改修に流し込んだ進め方です。成田と羽田での2〜3週間の試行では、iPadの操作性、回答スピード、回答の信頼度、知識追加といった論点が挙がりました。これに対し、チャットにプロンプトを打ち込む形式だけに頼らず選択式の画面を用意し、回答の根拠となる文書を引用表示し、担当者が知識を追加できる導線を整えています。当初あった「操作が煩雑」「AIは現場向きでない」という声を、機能追加ではなく入力と検証のしかたの設計で解いた点が要点でしょう。特に根拠表示は、案内の正しさを自分で確かめられる安心材料として、接客の最前線では欠かせない要素だったのではないでしょうか。
展開のしかたも成否を分けたはずです。開発はアクセンチュアが単独で始め、その後JAL向け生成AIアプリを導入していたアバナードと連携する形に移り、全国展開では各空港にAI普及のキーパーソンを置いて教育と導入支援を厚くしました。56空港へ同時に配るだけでは、質問の仕方が分からないまま放置される拠点が出ます。拠点ごとに聞ける相手を先に用意した体制づくりは、ツール配布を定着に変える現実的な手当てと言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
導入後のアンケートでは、危険物検索とイレギュラーアナウンス文作成についてグランドスタッフの90%以上が「お客さまへの回答速度が向上した」「アナウンス文作成速度が向上した」と回答し、ラウンジ入場条件検索でもラウンジスタッフの70%以上が回答速度の向上を実感しています。現場からは、マニュアルを探す手間が消えたこと、詳細を説明しながら丁寧に案内できること、新人や外国籍スタッフでも自信を持って対応できることが挙がっています。同じ基準と根拠に基づく案内が可能になり、経験差による対応のばらつきや誤案内のリスク回避につながった点は、速度以上に大きい効果と受け取れます。今後も現場ニーズを吸い上げ、機能拡張と品質向上が続けられる方針です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、参照すべき規程やマニュアルが文書として存在しているのに、探すのに時間がかかり、結局ベテランへの問い合わせで処理されている業務です。危険物やラウンジ条件のように、答えが規程に書かれていて正解が確認できる領域であれば、根拠表示とセットで組めば現場の納得も得やすいでしょう。窓口対応、受付、保守サービスなど、接客しながら即答を求められる仕事とは相性が良いはずです。
一方で、明文化された根拠がなく、その場の状況判断や交渉で決まる業務には、この形はそのまま持ち込めません。またこの事例では、拠点ごとにキーパーソンを置く教育の体制と、担当者が知識を追加し続ける運用がセットになっています。作って配って終わりにできる仕組みではない、という前提は押さえておきたいところです。まず試すなら、直近の内線問い合わせや相談のうち「マニュアルのどこかに書いてあるのに聞かれた」ものを数件拾い、その回答根拠が一つの文書に特定できるかを確かめてみる。そこが曖昧なら、AI化より先に文書側の整理が必要だという判断材料になります。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本航空株式会社
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