更新 2026.08.13
20年分の設計データをAIに読み込ませ、竹中工務店が作業時間を大幅短縮した手法
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 過去の類似案件を探すのに時間がかかる
- ベテランの勘に頼った目安付け
- 検討時間が足りず提案を練れない
どのようなAIの取り組み?
自社に蓄積された20年以上の構造計算データを学習させ、類似事例の自動探索と部材断面寸法の推定を行うAIを共同開発した取り組み
業種
総合建設業(建設・土木)
取り組み領域
構造設計(設計本部)/設計初期検討
使ったAI
類似事例探索AI「AI建物リサーチ」・部材断面推定AI「AI断面推定®」(機械学習)
主な成果
過去事例検索と断面寸法の目安付けにより設計作業時間を大幅短縮
竹中工務店は、構造設計の業務負担を軽くしながら付加価値のある提案に使う時間を確保するため、HEROZと組んで構造設計を支援するAIを共同開発しました。設計の初期段階で建物の規模や階数、柱のスパンなどの条件を入れると類似する過去の建物を自動で探し出す「AI建物リサーチ」と、建物のボリュームや柱・梁の位置が固まった段階で断面寸法や材料を推定する「AI断面推定®」が中心です。学習のもとになったのは、自社の構造設計システム「BRAINNX」に蓄積された20年以上分の構造計算データでした。現在は社内で使い方を広めている段階で、利用者から寄せられた「なぜ似ていると判断したのかを知りたい」という声を受け、判断プロセスを可視化する機能の追加実装も進められています。
出典:株式会社竹中工務店 - HEROZ株式会社(ヒーローズ) 発行元:HEROZ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2005年の構造計算書偽装事件を受けて建築確認申請が厳格化され、構造設計では提出後の手修正や改変が一切できなくなりました。設計者にはより速く、より正確な設計が求められ、業務量が膨らんでいきます。加えて、業界全体で高齢化と人手不足が進むなか、DXで解決したいという方針はあってもそのためのツールを社内に持っていない、という状態が続いていました。
ただ、困りごとの中心は作業量だけではなかったように見えます。一つの建物に対して構造の答えは無数にあり、使い勝手や作りやすさといった計算では表せない判断が、先輩たちの試行錯誤として積み重なってきた。その蓄積が個々の経験の中に閉じていて、次の案件で素早く引き出せる形になっていなかったこと——これが負担を重くしていた本当の理由だったのではないでしょうか。若手がベテランと同じ速さで目安をつけられない状況は、能力差というより、参照できる仕組みの不在から生まれていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、AIに学ばせる材料を新たに集めに行かず、すでに社内にあるものを教師データとして使い切った点だと考えられます。自社の構造設計システム「BRAINNX」には20年以上分の構造計算データが蓄積されており、それが優れた教師データとして機能したことで、早い段階で実用に持ち込めています。AI活用の現場では、データを整えるところで止まってしまう例が少なくありません。過去の業務が同じシステム上に同じ形式で残り続けていたこと自体が、この取り組みの土台になっています。
もう一つは、AIを使う場面を設計の工程に合わせて切り分けた設計です。条件から類似建物を探すのは企画・初期検討の段階、断面寸法や材料を推定するのはボリュームや柱・梁の位置が見えてきた段階と、役割が重ならないように分けられています。何にでも使える万能ツールを1つ作るのではなく、「この工程のこの困りごとに効く」という粒度で分けたことが、現場が使いどころを判断しやすい状態を生んだと見ています。社内で「初期段階で使ってみる」といったタイミングの伝え方から広めているのも、この切り分けと地続きです。
三つ目に、AIの出力を最終判断ではなく「目安」に位置づけた考え方が挙げられます。設計者は根拠を問われる立場であり、「AIが出した答えです」では責任を果たせない、という前提がプロジェクトの中に明確に置かれています。だからこそ、なぜこの建物が似ていると判断したのかを知りたいという利用者の声が、そのまま判断プロセスの可視化機能の追加実装につながっている。使い手が納得できる形へ作り替え続ける回路を、開発パートナーであるHEROZとの共同開発体制の中に組み込めたことは、業務系AIの定着を考えるうえで見逃せないポイントです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
過去事例の検索が効率化され、断面サイズの目安付けができるようになったことで、設計作業にかかる時間が大幅に短縮されています。若手でもベテランと同じように素早く目安をつけられるようになった点は、属人化の緩和という意味でも大きいでしょう。社内では利用者からの改善要望が増えており、建築設計者版・設備設計者版を求める他部署の声や、社外から構造AIについて聞きたいという反応も生まれています。一方で、特徴量の重みづけはAIが自動で調整してくれるものではなく、人が考えて調整する必要があるという気づきも得られました。特徴量を増やすほど結果が平均値に近づき、どれも似た出力になってしまうため、より少ない特徴量で構造体をどう表現するかを考える機会になっています。
うちでも使える?
応用の見込みがあるかは、「過去の判断結果が、同じ形式でまとまって残っているか」でおおよそ判断できます。この事例では、自社システムに20年以上分の計算データが揃っていたことが決定的でした。逆に、過去案件の条件や結果が紙や個人のフォルダに散らばっていて、案件ごとに項目の書き方も違う状態では、まず整える作業に時間が取られ、同じ進め方はそのまま持ち込めないと思われます。
もう一つの条件は、AIの出力に対して人が根拠を説明できる状態を保てるかどうか。判断の理由が問われる業務では、答えを出させるより「候補や目安を示させ、最後は人が決める」という設計のほうが受け入れられやすいでしょう。逆に、結果だけ受け取れば済む定型的な処理なら、可視化にこだわらず自動化を進めたほうが早い場面もあります。着手の第一歩としては、直近の数案件を取り上げて、検討時に参照した条件と最終的に採用した仕様が、あとから同じ形で並べられるかを確かめてみる。そこで並べられないなら、記録の残し方から見直すのが先です。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
HEROZ株式会社
AIサービスを提供する企業。「世界を驚かすサービスを創出する」を経営理念に掲げ、建設業界のドメイン知識と多数の実績を有する。AI(BtoC)、AI(BtoB)、HEROZ ASK、BLOOMWORKS などのサービスを展開している。
株式会社竹中工務店
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