実施 2025.08 ・ 更新 2026.08.16
理化学研究所の医療データをインターネットを介さず分析するクラウド基盤の構築
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 機密性の高いデータをクラウドに置けない
- データの受け渡しに現地作業が必要
- 守りを固めると現場が使いにくくなる
どのようなAIの取り組み?
専用線とVPNでインターネットを経由しない通信経路を確保し、機微な研究データをクラウド上で分析できる環境を整えたAI取り組み
業種
医科学研究機関(公共・公益事業)
取り組み領域
研究データ基盤/ネットワーク・セキュリティ
使ったAI
Google Cloudによるデータ駆動型解析基盤(クラウドAI基盤)
主な成果
仮想デスクトップ経由の安全なデータ活用を確立し、現地搬入の手間を解消
国立研究開発法人理化学研究所の生命医科学研究センターとアイレットは、2024年からGoogle Cloudを使った共同研究を進め、医科学研究向けのデータ駆動型解析基盤を構築してきました。今回はその延長線上で、研究に使う機微情報を安全に持ち込み、扱うための通信環境の整備が行われています。オンプレミス環境とGoogle CloudはCloud Interconnectの専用線で結ばれ、その他のパブリッククラウドとはCloud VPNで接続することで、インターネットを一切経由しない通信経路が確保されました。研究者がデータに触れる場所は、パブリッククラウド上に用意された仮想デスクトップだけに限定されています。Google Cloudの内部にはVPC Service Controlsなどで通信の境界が作り込まれ、BigQueryなどを使った自由な分析と、操作ログの確保が同時に成り立つ構成になりました。
出典:オンプレミス×マルチクラウドのハイブリッド構成によるデータ通信基盤構築を専用線接続と VPN 接続でセキュアに実現!|国立研究開発法人理化学研究所様の導入事例 発行元:KDDIアイレット株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
これまで研究データは、データセンターのある現地へ出向いて物理的に搬入されていました。この研究では、将来的に患者の臨床データや血液・ゲノム情報、画像データといった機微情報を扱う可能性があり、インターネットを介さない通信環境が求められていた一方で、研究者が仮説に応じて柔軟にデータを抽出・分析できる自由度も同時に必要とされていました。
困りごとの本質は、データ量や作業の手間そのものではなく、「守るために閉じる」ことと「使うために開く」ことが同じ環境の上で両立できていなかった点にあると、編集部は見ています。人が現地へ運ぶという方法は、安全策としては確実です。ただ、思いついた仮説をすぐ試したい研究のテンポとは、明らかに噛み合いません。安全側に倒した結果として現場の動きが鈍る構図が、整備を急ぐ理由になったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いているのは、データが通る道そのものをインターネットから切り離した設計です。オンプレミス環境とGoogle Cloudは専用線であるCloud Interconnectで、その他のパブリッククラウドとはCloud VPNで結ばれ、機微な研究データが公衆網を通らない閉域の経路が確保されました。さらにGoogle Cloud内部ではVPC Service ControlsとVPC Firewallで仮想ネットワークの周囲に境界が設けられ、各サービスへの接続にはPrivate Service Connectが使われています。守りを規程や運用ルールではなく経路と境界の構造で担保したため、研究者側が安全確保のために何かを我慢する必要がない点が大きいと考えられます。
もうひとつの要は、データに触れる出口を仮想デスクトップ一つに絞り込んだ判断です。ローカル端末からの直接アクセスやデータの持ち出しが構造的に断たれる一方、その中では研究者がBigQueryなどを使って自由に分析できます。制限をかける場所を「操作の中身」ではなく「入口」に置いたからこそ、厳格なアクセス管理と操作ログの確保が、分析の自由度と衝突せずに済んだのではないでしょうか。
将来の広がりを前提に置いた作り方も見逃せません。仮想デスクトップ環境は要件を細かくヒアリングしたうえでカスタマイズされ、他の研究にも使い回せる再利用性の高いテンプレートとして整備されました。運用面でも、オンプレミスサーバーのログをリアルタイムでCloud Loggingへ転送しCloud Monitoringで監視する形に寄せることで、環境が増えても管理が分散しない土台が用意されています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
研究者はクラウド上の仮想デスクトップから、安全かつ自由にデータを扱えるようになり、研究活動の柔軟性が大きく向上しました。機微な医療データの取り扱いにも対応できるセキュリティ環境が確保され、既存のオンプレミス環境と比べて現地対応の手間が省けたことで、業務効率も改善されています。将来的には、多様な患者データを統合したうえでの機能実装に向けて、データ基盤をさらに高度化することが目指されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、扱うデータの機密性が高く、かつ利用者に自由な分析をさせたい業務です。医療や研究に限らず、顧客の個人情報や設計情報を抱えながらクラウドの分析環境を使いたい組織であれば、通信経路を閉域に寄せ、データに触れる出口を仮想デスクトップなどの一点に絞るという考え方はそのまま参考になります。手元にデータを落とさせない構造にしておけば、利用者の操作を細かく縛らずに済むためです。
一方で、この構成は専用線の敷設や複数クラウドの境界設計を前提にしており、社内に扱えるシステム担当がいない、あるいは既存のオンプレミス設備を持たない場合は、同じ形をそのまま持ち込むのは現実的ではありません。分析対象が公開情報や社内の一般文書にとどまる規模であれば、ここまでの閉域構成は過剰になります。まず試すなら、自社のデータを「外に出しても困らないもの」と「経路ごと分けたいもの」の二つに仕分けし、後者が実際に誰の手元へコピーされているかを追ってみる。その一往復だけでも、守るべき出口がどこかは見えてきます。
この事例は2025年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
KDDIアイレット株式会社(アイレット)
クラウド支援サービス「cloudpack」を提供し、AWS・Google Cloud・OCI の構築・移行、セキュリティ、開発、運用保守、生成 AI 導入支援などを手がける企業。
国立研究開発法人理化学研究所
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
