実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.13
ウーブン・バイ・トヨタ、AI3体の分業で車載ソフトのコード修正8割自動化の実証
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 決まりごとの確認作業に人手を取られている
- ルールに詳しい人が社内に数人しかいない
- AIの答えの根拠が分からず採用できない
どのようなAIの取り組み?
役割の異なる3つのAIエージェントを連携させ、車載ソフトウェアの規約対応で発生するコード修正の約8割を自動化した実証の取り組み
業種
車載ソフトウェア開発(IT・通信)
取り組み領域
ソフトウェア開発/コーディング規約対応のコード修正
使ったAI
AIエージェント連携(Azure OpenAI Service、AutoGen)
主な成果
実証実験で規約エラーの81.5%を自動修正
自動運転や先進運転支援システムを開発するウーブン・バイ・トヨタは、車載ソフトウェアの安全性と信頼性を高めるためのコーディング規約「MISRA」への準拠作業に、大きな工数を割いていました。2024年6月、AD/ADAS開発のワークフローで生成AIを活用するプロジェクトが立ち上がり、その一環として、Azure OpenAI ServiceのGPT-4oに規約エラーの修正を任せる実証実験が始まります。一定の手応えを得て正式プロジェクトへ昇格した後は、日本マイクロソフトの超短期実装ハッカソン「Azure Light-up」を2回挟みながら、GitHubやVisual Studio Codeから使える形へと作り込みが進みました。最終的には、推論を重ねてから答えるo3-miniを採用し、コードを直すAI、レビューするAI、評価するAIの3体が分担して動く構成へ発展しています。
出典:ウーブン・バイ・トヨタがマルチエージェント化された Azure OpenAI Service を車載ソフトウェア「MISRA」準拠に活用、コード修正の約 80% を自動化 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
MISRAはC/C++で組み込み制御ソフトウェアを書くためのガイドラインですが、PDFで数百ページに及び、全体を理解するには相当な時間がかかります。C/C++を扱えるエンジニア自体が減っているなかで、規約まで完全に把握している人となると、その数はさらに限られます。実証実験レベルで作ったソフトウェアを製品水準へ引き上げる際には、静的解析ツール(コードを動かさずに規約違反を検出する仕組み)にかけ、エラーとなった箇所を一つずつ直さなければなりません。先進運転支援の認識モジュールでは、その修正が約6万件に達しました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は件数の多さそのものではなく、直し方の判断根拠が規約文書と一部の熟練者の頭の中にしか存在せず、他の人が肩代わりできない状態にあったことです。6万件という数字は、その構造が目に見える形で現れたものと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
日本マイクロソフト側の提案を起点に組まれた、Coder・Reviewer・Evaluatorという3つの役割へAIを分ける構成が、この取り組みの中核にあります。まずCoderが修正を書き、Reviewerが点検して改善提案を返し、そのやり取りを繰り返したうえで、Evaluatorが変更理由と確信度を生成します。単一のAIにすべてを任せると避けにくい出力のばらつきを、別のAIによる評価で抑え込みつつ、何をどう直したのかを第三者が読める形にする狙いが読み取れます。採択するかどうかの最終判断を人の側に残した線引きが、失敗の許されない規約準拠の工程へ生成AIを差し込むことを可能にしたのではないでしょうか。
小さく始めて、確かめた分だけ前へ進める段取りも効いています。業務時間の1割程度を充てるサイドプロジェクトとしてサンプルコードで試し、社内で開発中のコードでも同じ手応えが得られることを確認したうえで、正式プロジェクトへ格上げする順序を踏んでいます。土台となる仕組みを先に整え、そこへ新しいモデルを差し替えていける構造にしておいた点も見逃せません。この設計により、生成AIモデルの進化がそのまま自分たちの成果に流れ込む通路ができたと考えられます。
現場が普段使う道具の側に寄せた作り込みも、要因として挙げられます。元のコードとエラーレポートをGitHubのIssue(ソースコードの課題を管理する機能)で指定すれば規約準拠のコードが生成される流れを整え、社内から寄せられたVisual Studio Codeで使いたいという要望にも短期間で応えました。しかもその実装自体を生成AIの支援を受けて進めており、ツールを作る側の工程でも同じやり方が機能することを示しています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
社内で開発中のコードを用いた実証実験では、コード生成の成功率が97.1%、MISRA準拠エラーのうち81.5%を自動修正できるところまで到達しました。単一の生成AIではブラックボックスだった修正理由や確信度が示されるようになり、エンジニアが提案を採るかどうかを判断できる状態になっています。さらに、挙動を変えずに内部構造を整えるリファクタリングをAIが自律的に行い、将来メンテナンスする人へのコメントや、今後の改善に向けたTo-Doとその理由まで書き出す様子も確認されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、守るべきルールが文書として明文化されていて、なおかつ直せたかどうかを機械的に判定できる領域です。この事例では、規約という文書と、静的解析ツールが出すエラー判定という二つの手がかりが揃っていたため、AIの出力を検証しながら回すことができました。逆に、判断基準が文書化されておらず案件ごとに現場の裁量で決めているような作業では、AIの直しが妥当かどうかを確かめる術がなく、同じ形はつくりにくいはずです。提案を採るかどうかを見極める人の目を確保できるかも、実行可能性を分ける条件になります。
試すなら、手元の規約やチェックリストと、自動判定ツールが吐き出したエラーを1件分そろえ、修正案と「なぜそう直したのか」の説明をセットで出させてみるところから。理由が読める形で返ってくるかどうかが、その業務にこの型が合うかを見分ける手がかりになります。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
モビリティの進化を推し進める企業。自動運転(AD)や先進運転支援システム(ADAS)、ソフトウェア プラットフォーム「Arene OS」、モビリティのためのテスト コース「Woven City」、トヨタのグロース ファンド「Woven Capital」などを通じて、人・モノ・情報・エネルギーの移動の進化に取り組む。
出典・参考情報
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