更新 2026.08.15
INPEXが経理部門から始めた全階層デジタル研修、数時間の転記が数分に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 今のやり方で回るから改善が進まない
- Excelの作り方が人によってバラバラ
- 研修をやっても現場が変わらない
どのようなAIの取り組み?
役員から新卒までが同じ内容を学ぶデジタルリテラシー講座で、経理部門を起点にしたDX人材育成に取り組んだ事例
業種
石油・天然ガス開発(鉱業)
取り組み領域
財務・経理部門の人材育成・業務改善
使ったAI
AI活用に備えたデータ構造化・ツール活用研修
主な成果
数時間かかっていた転記作業が数分に短縮
石油・天然ガス開発を手がけるINPEXの財務・経理本部は、デジタルを武器に自ら業務課題を解消できる人材の「輩出基地」になることを掲げ、DX研修を提供するキカガクをパートナーに迎えてデジタル・リテラシー講座を実施しました。第1回は別の外部ベンダーとの共同で組み立てており、第2回以降はさらに内容を練り直しています。講座はツール操作の習得を目的とせず、冒頭にBPR(業務プロセス再設計)のワークを置き、複雑化した現状を可視化したうえで無駄を削いだ理想形を描く流れを採りました。演習のテーマには実際の業務データや社内事例を使い、縦持ちデータのような「綺麗なデータ構造」を組織の共通言語にすることへ重点を置いています。受講対象は新卒から役員クラスまで広げ、全階層が同じ講座を受ける形をとりました。
出典:導入事例:株式会社INPEX様 | 経理部門を「DXの種」を蒔く起点に。INPEXが成功体験を連鎖させて実現した、組織カルチャー変革の軌跡 | 法人向けDX研修ならキカガク 発行元:株式会社キカガク
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
この取り組みの出発点にあったのは、業務が滞っているという分かりやすい不具合ではありません。既存業務は問題なく回っており、だからこそ変革の動機が生まれにくい。複雑化した業務フローやExcelの属人化は、痛みが小さいまま手つかずで残されていました。同本部では「忙しくて斧を研ぐ暇がない」木こりの寓話を引きながら、このまま同じやり方を続ければ長期的な沈滞を招くという危機感が共有されていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは、デジタルスキルの不足そのものではなく、「自分の業務のどこが直せるのかを言葉にする枠組みが、現場に用意されていなかったこと」ではないでしょうか。同本部自身が、課題はツールの使い方ではなく業務プロセスの設計が整理されていない点にあると捉えていた通りです。整理されていない業務をそのまま自動化すれば、誰も手を入れられない仕組みが増えるだけ。改善したくてもできないのではなく、何を改善すべきかを判断する物差しが共有されていなかった、という構図が読み取れます。
どうやって、うまくいったのか
ツールの操作を教える前にBPRのワークを置いた順番の設計が、この講座の性格を決めています。現状の業務フローを可視化し、無駄を削いだ理想形を描いてから「その業務は本当に必要か」を問い直す構成にしたことで、受講者は自動化の対象を選ぶ段階から自分の頭で考えることになります。整理されていないプロセスを急いで自動化すれば、メンテナンス不能な仕組みが増えるだけ。手を動かす前に業務そのものを疑わせるこの順番が、成果物の質を左右したと考えられます。
演習の題材に実際の業務データと社内事例を据えた設計も効いています。架空の例題では「自分ごと」になりにくいという判断から、受講者が日々触れているデータを自らの手で可視化・自動化する経験へ差し替えました。ツール習得はあくまで課題解決の手段だという位置づけが、説明ではなく体験として伝わる構造になっています。あわせて、属人化したExcelから離れ、縦持ちデータのような扱いやすい構造でデータを持つ理由を理論から説く設計にしたことで、目の前の作業を楽にする話と、将来のデータ活用に備える話が一本の線でつながりました。
役員から新卒までが同じ講座を受ける形にした点も、この事例に固有の判断です。指示を出すマネジメント層がデジタル技術でできることを把握していなければ、現場に適切な指示は出せません。全階層が同じ語彙を持つ設計は、学んだ側が動きやすい環境を同時につくる仕掛けと読めます。発案者がCFOであり経営層が旗を振り続けた一方で、浸透は現場からじわじわ広げるという役割分担も、参加への心理的な壁を下げる方向に働いたはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
数時間を要していたデータ転記が、研修中に作成した改善施策によってボタン一つ、わずか数分で完結するようになった事例が生まれています。停滞していた開発プロジェクトが学びを機に再始動した例もあり、回を重ねるごとに参加希望者が増え、応募締め切り後に入社した新入社員から「どうしても受けたい」と直訴があって急遽枠を広げた回もありました。成果発表会ではCFOから驚きと激励の声が上がり、年末の本部イベントでは優秀事例の表彰も行われています。表の作り方や項目の命名規則といった地味な部分が共通言語になったことは、後から効いてくる種類の成果です。
うちでも使える?
この形が効きやすいのは、数値データを大量に扱い、反復的な処理が多い部門です。経理や購買、生産管理のように処理の型が決まっている業務では、受講者が自分の担当業務から改善テーマを持ち込みやすく、演習がそのまま実務の成果物になります。社内標準のツールがすでに配られているのに使いこなされていない、という状態の組織とも相性がよいでしょう。
一方で、そのまま真似るのが難しい条件もあります。この事例は、経営層が発案者として旗を振り続けたことと、役員から新卒までを同じ講座に集められる規模と体制に支えられています。少人数で一人が複数業務を兼務する会社では、階層をまたいで同時に業務時間を確保すること自体が壁になります。案件ごとに手順が変わる業務や、そもそも反復作業の蓄積が薄い業務では、演習から実用的な改善が出てくるまでに時間がかかる点も見込んでおきたいところです。
最初の一歩としては、手元でよく使うExcelを1枚開き、1つのセルに複数の意味が詰め込まれていないか、結合セルで人が読む前提になっていないかを確かめてみてはどうでしょうか。この確認だけで、自動化の前に整えるべき箇所が見えてきます。
プロジェクト解析
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
プロジェクト実施・導入企業
株式会社キカガク
法人向けDX研修を提供する企業。業界業種を問わず1000社以上の企業に導入され、DX人材育成における課題解決を支援している。
株式会社INPEX
出典・参考情報
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