実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.15
尼崎市が水道の問い合わせにチャットボット、庁内文書はRAGで検索
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 繁忙期に電話が集中してさばけない
- 同じ内容の質問に何度も答えている
- 必要な資料の在り処が分からない
どのようなAIの取り組み?
市民向けのチャットボットと、庁内の文書を参照して答える生成AIを組み合わせ、問い合わせ対応と職員のナレッジ活用の両面に取り組んだAI事例
業種
地方自治体(公共・公益事業)
取り組み領域
市民の問い合わせ対応/庁内の文書検索・文書作成
使ったAI
チャットボット、生成AI(RAG)
主な成果
問い合わせ手段が電話からWebへ移行(定量的な検証は継続中)
尼崎市は「あまがさき共創DXプラン」のもとで、市民向けと職員向けの取り組みを並行して進めています。市民向けでは、公営企業局上下水道部が水道の使用開始・中止に関する問い合わせを24時間受け付けるチャットボットをホームページに設けました。開発を担ったのはSHIFTで、2023年12月末に着手し2024年3月末に完了、翌4月から本稼働に入り、運用保守も継続しています。職員向けでは、条例や規則、市議会の会議録、内部のマニュアルなどを取り込み、RAG(手元の文書を検索してAIの回答に使う仕組み)で答えを引き出す生成AIサービスを公営企業局のPoC(小規模な試験導入)として立ち上げました。投資対効果が評価され、令和7年度には庁内へ展開されています。
出典:尼崎市様 導入事例 | AIのSHIFT 発行元:SHIFT
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
上下水道部への問い合わせは平日の日中に電話で受ける形が中心で、寄せられたすべてに答えきれない状態が続いていました。転入・転出が重なる3月から4月には水道の使用開始と中止に関する問い合わせが全体の8割を占め、しかもその多くが「お客様番号や水道番号が分からない」という同じ内容です。職員側でも、少子高齢化にともなう人員不足と世代のギャップが生じ、引き継がれてきた情報が古いまま使えなくなる事態が起きていました。
この二つは別々の悩みに見えますが、根にあるものは共通していると編集部は見ています。どちらも、答えはすでにどこかにあるのに、そこへ手が届かないという状態です。市民は自分の番号が書かれた書類の在り処が分からないまま電話をかけ、経験の浅い職員はどの資料を見ればよいか分からないまま前任者を探す。窓口の混雑もナレッジの断絶も、量の問題というより、たどり着けなさの問題だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
コールセンターに寄せられた問い合わせのログを分析し、そこから逆算して答えの置き場所を設計したことが、この取り組みの起点になっています。チャットボットに載せる質問と回答を用意するだけでなく、ホームページの検索のしやすさや説明の書き方まで見直す提案が並行して行われました。電話受付センターの音声ガイダンスでホームページでも受け付けていると案内し、開いた画面ではチャットボットが補足する。ボットを独立した窓口として置くのではなく、電話からWebへの導線の一部として組み込んだ設計です。
資料をAIに合わせて作り直すのではなく、取り込み方のほうを変えた判断も見逃せません。紙やデータの形式によってはうまく取り込めないものがあり、その場合はホームページ内のデータを引用する方法へ切り替えています。庁内文書の側でも、図の矢印が示す意味や表の行と列の関係といった、人には自明でもAIには読み取れない暗黙知が精度を左右すると検証の中で判明し、データの加工とプロンプトの調整、更問を重ねた精度検証が、ほぼ毎日の打ち合わせとともに繰り返されました。
使い始めたあとに手を入れ続ける仕掛けが組み込まれている点も、この進め方の特徴といえます。利用ログを分析して回答精度の低い部分に対策を打ち、アンケートで要望を集め、職員向けの教育や動画の配布で使い方そのものを底上げする。出典名しか返されなかった回答から、引用元の文書の中身まで確認できるようにした改良は、現場の声が仕様に反映された分かりやすい一例です。庁内のイントラネットでは例規情報や議事録を最新化したことを都度知らせ、更新そのものを利用のきっかけに変えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
運用開始から約1年の時点で、オペレーター業務がどれだけ減ったかの定量的な分析はまだ途上にあります。それでも前年の同時期と比べてWebからの問い合わせは大きく伸びており、問い合わせの手段が電話からWebへ移ってきている点で効果が出ていると受け止められています。庁内の生成AIでは、毎月のアンケートで「得たい結果が得られた」という回答が7割ほどを占め、入庁まもない職員が決裁文書の起案で添削に使い作成時間を大きく縮めた例も生まれています。2024年6月の全庁展開を機に利用率は一気に伸び、一度も使ったことのない部門はほぼない状態です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、問い合わせが特定の時期や特定の手続きに偏っている業務です。尼崎市の場合は転入・転出期の水道の開始・中止に集中していたため、答える範囲を絞り込んでも効果が届きやすい構造でした。どの質問が多いかが記録から読み取れる窓口であれば、まず上位のいくつかだけを24時間答えられるようにするだけでも、電話の総量は動きます。
一方で、そのまま持ち込みにくい面もあります。庁内向けのRAGでは、条例や会議録を含む1,000件近い資料を集めて投入し、図や表に潜む暗黙知を扱うためにデータ加工と調整を重ねる工程が欠かせませんでした。参照させたい資料が図表に強く依存していたり、最新版がどれか誰にも分からない状態であれば、AIを載せる前の段階で止まります。手始めとしては、直近1か月の問い合わせ記録を開いて、同じ趣旨の質問が何件重なっているかを数えてみる。そこで上位が数種類に固まるなら、この事例と似た土俵に立っています。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
SHIFT
AIソリューション、ソフトウェアテスト・品質保証、セキュリティ、UI/UX、DX、カスタマーサクセス、コンサルティングなどのサービスを提供。チャットボットや生成AIオペレーション品質向上サービスを提供し、導入後の運用保守フェーズも担当する。
尼崎市
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