実施 2025.12 ・ 更新 2026.08.13
キリンの嗜好AI開発、ビールのおいしさを成分の寄与度に分解する仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- お客様の評価を商品づくりに活かせない
- 良し悪しの判断がベテラン頼み
- 調査結果と測定データがつながらない
どのようなAIの取り組み?
お客様調査データと成分分析データをAIで統合し、ビールのおいしさに効く成分を特定できるようにしたAI取り組み
業種
ビール類・飲料製造(製造業)
取り組み領域
香味開発・商品開発(研究開発)
使ったAI
嗜好AI「FJWLA」(官能評価を予測する自社開発AI)
主な成果
香味に効く重要成分を成分レベルで特定し、試作設計の迅速化を見込む
キリンホールディングスの飲料未来研究所が、香味開発に使う嗜好AI「FJWLA(フジワラ)」を自社で開発しました。長年にわたり蓄積してきたお客様調査データと、商品の成分分析データを一つに統合し、人が実際に味わって評価した結果(官能評価)をAIが予測したうえで、どの成分がその評価にどれだけ効いているかを数値で示す仕組みです。醸造家が理想とする香味に近づけるために着目すべき成分を即時に把握できる設計になっています。2026年3月以降に発売するビール類から順次導入し、その後はRTD(そのまま飲める缶入りの酒類)やワイン、清涼飲料へと適用範囲を段階的に広げる計画が示されています。
出典:ビールの香味成分を特定する嗜好AI「FJWLA」を独自に開発 | 2025年 | KIRIN - キリンホールディングス株式会社 発行元:キリンホールディングス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
これまでの香味の改善点探しは、醸造家の知見と限られた範囲のデータ分析を突き合わせる形で進められてきました。
困りごとの本質は、分析の手数が足りないことよりも、お客様の評価とつくり手が動かせるものとの間に翻訳の断絶があった点にあると考えられます。調査から返ってくるのは人の感覚を通した「好ましさ」の評価である一方、実際に手を入れられるのは成分の量や工程の条件です。この二つを結びつける作業が個々の経験則に委ねられていれば、試作と評価の往復は増え、蓄えたデータも次の一手には直結しません。長年データを持ち続けてきたからこそ、「持っていること」と「使えること」の差が課題として立ち上がったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
性質の異なる二つのデータを同じ土俵に載せた点が、この仕組みの中核にあります。お客様調査で集まるのは「おいしい」という人の感覚の評価であり、成分分析で得られるのは客観的な測定値です。前者を予測する対象、後者を説明する側に置いたことで、本来つながりにくい二種類の情報が一つのモデルの中で結びつきました。
予測で止めず、各成分の寄与度を定量化するところまで出力を設計したことも見逃せません。試作品の評価が高いか低いかを当てるだけでは、つくり手は次に何を変えればよいのか分からないままです。どの成分がどれだけ効いているかを示す形にしたことで、AIの出力が試作設計や工程条件の検討という具体的な次の作業に直結します。
AIを醸造家の代わりに置かず、蓄積された知見と組み合わせる前提で位置づけている点も特徴的です。適用範囲もまずビール類に定め、RTDやワイン、清涼飲料へ段階的に広げる進め方をとっています。商品カテゴリが変われば評価の軸も関わる成分も変わるため、一つの領域で運用を固めてから横に展開する順序は、精度と現場の納得の双方を確保するうえで理にかなった判断でしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
公表されている効果は、現時点では見込みの段階にとどまります。示されているのは、醸造家が理想の香味に重要な成分を即時に把握でき、試作設計や工程条件の検討を迅速化できるという内容で、実運用にもとづく削減時間などの数値は示されていません。導入は2026年3月以降に発売するビール類から順次進める計画で、効果の実像が見えてくるのはこれからです。
うちでも使える?
応用の可否を分けるのは、主観的な評価と客観的な測定値が、同じ対象について対になって残っているかどうかです。食品や化粧品の官能評価、塗装や印刷の仕上がり判定のように、人の感覚で採点する工程と、成分値や測定値を記録する工程の両方を持つ現場であれば、同じ考え方を検討する余地があります。
一方、評価者が少人数で採点基準が年ごとに変わっていたり、評価コメントは残っていても対応する測定データがそのつど破棄されていたりする場合は、そのままの形では持ち込めません。この事例で効いているのは高度なモデルというより、調査と分析を長い期間そろえて残してきたことです。まずは直近の一製品について、評価者の採点と測定記録を一枚の表に並べ、両者がロットや試作番号といった同じ単位で突き合わせられるかを見てみる。ここが噛み合わないうちは、AIの検討はその次の話になります。
この事例は2025年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
キリンホールディングス株式会社
キリングループの持株会社。社長COOは南方健志。飲料未来研究所(所長 森木博之)を有し、ビール類をはじめとする飲料の香味開発・研究開発を行う。「KIRIN Digital Vision 2035」を掲げ、食から医にわたる領域でのCSV先進企業を目指す。
出典・参考情報
ビールの香味成分を特定する嗜好AI「FJWLA」を独自に開発 | 2025年 | KIRIN - キリンホールディングス株式会社
発行元:キリンホールディングス株式会社
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