実施 2024.10 ・ 更新 2026.08.13
日立が熟練者の勘を生成AIで再現、品質保証の検索時間9割削減を実証
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランしか答えられない問い合わせ
- 過去の事例を探すのに時間がかかる
- 熟練者の勘を若手に引き継げない
どのようなAIの取り組み?
熟練者の暗黙知を生成AIとAIエージェントに取り込み、問い合わせ対応の情報検索時間を約9割削減できることを確かめた実証実験の取り組み
業種
情報制御システム開発(製造業)
取り組み領域
品質保証/トラブル・問い合わせ対応
使ったAI
生成AI・AIエージェント(既存の業務支援ツールへ組み込み)
主な成果
実証で情報検索時間を約9割削減
日立製作所は、電力・鉄道・上下水道など社会インフラを支える情報制御システムを手がける大みか事業所で、品質保証業務にAIエージェントを適用する実証実験を2024年10月から2025年3月まで実施しました。機器故障などの問い合わせを受けた際、発生事象と過去の類似事例やマニュアルを突き合わせて対策を導く作業は、熟練者の経験と勘に支えられていました。そこで社内のGenerative AIセンターに所属する生成AIの専門チームが熟練者への聞き取りを重ね、情報の探索パターンや業務プロセスをプロンプトへ落とし込み、従来から使われてきた品質保証業務支援ツールに生成AIを組み込みます。鉄道システム分野を対象とした実証では検索・分析・レポート作成の各業務で作業時間の大幅な短縮が確認され、2026年度を目標に事業所全体へ適用範囲を広げる計画が示されています。
出典:日立、品質保証業務へのAIエージェント適用で、お客さまへの対応力・対応品質を強化:日立 発行元:株式会社日立製作所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
大みか事業所には、10年以上にわたり稼働する顧客システムの保守運用情報が蓄積され、トラブルの概要を文章で入力すれば過去の類似事象を引き出せる支援ツールも以前から動いていました。それでも経験の浅い担当者は、顧客からの第一報とツールの検索結果だけでは状況を正しく素早くつかめない、という実態が残っていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は知識やデータの不足ではありません。足りなかったのは、膨大な情報のどれを、どんな順番でたぐり寄せれば答えに近づくのかという探索の道筋であり、それが熟練者の記憶の中にしか存在していなかった点にあるのではないでしょうか。データベースと検索機能を整えても属人化が解けなかったのは、情報資産そのものではなく、資産への近づき方が個人に張り付いていたからだと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
形式知化の対象を、答えではなく探し方に定めた切り分けが、この取り組みの起点になっています。熟練者がどのようなキーワードを選び、どんな順番で情報をたどっているのかというパターンや業務プロセスそのものを聞き取り、生成AIのプロンプトへ落とし込んでいます。正解の知識を覚えさせるのではなく、正解にたどり着く手順を移すという発想であり、すでに蓄積されたデータベースを作り直さずに済む点でも、現実的な選択だったと考えられます。
精度を高める工程に、熟練者の目線を組み込んだ評価の仕組みを置いた点も見逃せません。実際の業務を想定した質問と模範解答のペアを100件以上、熟練者と生成AIの専門チームが一体となって作り上げ、品質保証業務を網羅する共通の評価基準に仕立てています。判断の物差しが共有されれば、出力の良し悪しを感覚で語らずに済み、改善・評価・チューニングの往復が回り始めます。曖昧になりやすい暗黙知を扱いながら、半年ほどで現場水準まで精度を引き上げられた背景には、この測れる形にする工夫があったのではないでしょうか。
対象を鉄道システム分野の品質保証業務に絞り、既存の支援ツールへ組み込む形をとった進め方にも意味があります。担当者から見れば使う道具は変わらず、これまでの業務の流れの中で、精度の上がった検索や分析に触れることになります。新しいツールを覚え直す負担を生まないやり方は、その後も使われ続けるかどうかを大きく左右する部分です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
鉄道システム分野の品質保証業務を対象とした実証では、問い合わせへの回答に必要な情報を検索する時間が約9割削減されました。発生件数などの特徴量抽出・分析、および初報レポートのドラフト作成についても、それぞれ8割以上の時間削減が確認されています。担当者の経験値に関わらず適切な類似事例を引き出せるようになったことは、速さだけでなく回答のばらつきが縮んだことも意味します。将来的には顧客自身がトラブル情報にアクセスできるようにし、24時間体制での初動対応につなげる見込みです。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、参照すべき記録がすでにデータベースへ溜まっていて、そこから何を引き当てるかの判断が特定の人に偏っている業務です。修理履歴、クレーム対応の記録、施工トラブルの報告書など、蓄積はあるのに探せる人が限られる領域なら、探索の手順を言語化するという切り口はそのまま持ち込めます。一方、記録が個人のメモや紙のまま散らばっている段階では、同じ順序では進みません。現物を見なければ判断がつかない業務や、判断の根拠が文章として一切残っていない業務でも、聞き取りだけで手順を写し取るのは難しくなります。
小さく試すなら、直近の問い合わせを一件選び、ベテランがどの資料を、どんな言葉で、どの順に開いたのかを本人の隣で書き留めてみる。数件分を並べれば、共通する探索の型が輪郭を持ち始めます。そのうえで、良い回答とは何かを測るための質問と模範解答のペアを、まず数件だけ作ってみてはどうでしょうか。
この事例は2024年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を展開する企業。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出する。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社。大みか事業所では電力や鉄道、上下水道など社会インフラを支える情報制御システムを提供している。
出典・参考情報
日立、品質保証業務へのAIエージェント適用で、お客さまへの対応力・対応品質を強化:日立
発行元:株式会社日立製作所
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