実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.13
保健師の面談記録を生成AIで自動作成、記録業務1/3以下をめざす日立の実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 会話しながらの記録作業に追われている
- 担当者によって記録の質がばらつく
- 確認事項の聞き漏らしが心配
どのようなAIの取り組み?
音声認識と生成AIで住民との面談記録づくりを支え、紹介先となる地域資源も対話形式で探せるようにした、自治体の保健指導業務で実証に入った取り組み
業種
自治体の保健指導(公共・公益事業)
取り組み領域
保健指導の面談記録作成/地域資源の紹介
使ったAI
音声認識と生成AI(リアルタイム文字起こし・項目別要約・対話型検索)
主な成果
面談記録の作成・確認業務を1/3以下に軽減できる可能性(2025年9月から試行導入して検証)
日立製作所と新潟大学は、住民を地域の栄養・運動教室や通いの場などにつなぐ「社会的処方」の担い手であるリンクワーカー(支援が必要な人と地域の活動やサービスをつなぐ役割の人)の業務を支える仕組みを共同で開発しました。中心にあるのは、保健師などが住民と行う面談の音声をその場でテキストにし、生成AIが健康状態や生活状況、希望する支援内容といった項目別に整理・要約してレポート作成につなげる機能です。あわせて、蓄積した地域資源の情報をもとに、住民の課題や要望に合う紹介先の候補を対話形式で提示する機能も備えます。2025年9月1日からは新潟県十日町市の特定保健指導業務に試行導入し、有効性の検証が始まる段階にあります。取り組みはJST-RISTEXの研究開発プロジェクトの一環として進められています。
出典:生成AIで面談業務を効率化し、住民支援の質を高めるリンクワーカー業務支援システムを開発:日立 発行元:株式会社日立製作所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
十日町市の協力を得て先行して進められた小規模実証「とおかまち健康の処方箋」では、糖尿病患者に地域の栄養指導やスポーツクラブを紹介する取り組みによって、血糖コントロールの有意な改善と生活習慣の持続的な変化が確認されました。そこで次に見えてきたのが、住民と地域資源をつなぐ側の負担です。面談記録の作成に多くの時間と労力がかかること、そして紹介できる地域資源の数や種類が広がったときに紹介先をどう選ぶのかという方法論が、課題として残されていました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は作業量の多さそのものではなく、会話をしながら同時に記録を残さなければならないという構造のほうにあります。十日町市の担当課長のコメントでも、会話をしながらの記録が大きな負荷になっていたことが述べられています。住民の話に耳を傾けるほど記録は追いつかず、記録を優先すれば対話が痩せる。効果が確かめられた取り組みほど、対象者を広げようとした瞬間にこの二律背反が重くのしかかります。
どうやって、うまくいったのか
記録づくりを面談の後工程に置かず、面談の進行そのものを支える機能として組み立てた点が、この仕組みの核心だと考えられます。会話は音声認識でその場でテキストになり、生成AIが項目別に要約して画面に表示し、まだ確認できていない項目はリマインドとして示されます。事後にまとめ直す手間を減らすだけでなく、聞き漏らしたまま面談を終える事態を面談中のうちに防ぐ設計です。
整理・要約する項目をカスタマイズできるようにした判断も、単なる設定の自由度以上の意味を持っています。社会的処方は保健指導にとどまらず介護予防の通いの場なども含む広い概念で、必要な記録項目は適用分野ごとに変わります。項目の定義を差し替えられる構造にしておけば、分野が変わっても仕組みを作り直さずに済み、同時に「何を必ず聞くべきか」という現場の暗黙の基準が形になって残ります。経験年数やスキルの差が記録の水準に出にくくなるのは、この項目定義を仕組みの外側に出した設計によるところが大きいのではないでしょうか。
地域資源のデータベースに、施設の名称や所在地、活動内容といった基本情報だけでなく、リンクワーカーや住民から寄せられた情報も蓄積できるようにした設計にも注目したいところです。紹介先の選定が難しくなるのは、資源の数が増えるからというより、実際につないでみてどうだったかという現場の感触が担当者個人の記憶にしか残らないためでしょう。現場で得た情報を戻す先を用意し、その蓄積を生成AIが参照して候補を示す構成にすれば、使われるほど提案の材料が増えていきます。開発は日立が研究開発を担い、新潟大学が地域に密着した研究と実践モデルづくりを担い、十日町市が実際の保健指導の現場を提供するという役割分担で進められました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
開発した機能を確認した「とおかまち健康の処方箋」のリンクワーカー担当者からは、面談記録の作成や確認の業務を1/3以下に大幅軽減できる可能性がある、との評価が示されています。ただし現時点ではあくまで見込みで、2025年9月から始まる特定保健指導の面談業務にレポート作成支援機能を試行導入し、業務負荷の低減、確認漏れの防止、記録の均一化について評価が行われます。数値の確定はこれからですが、軽減幅が現場感覚として大きく見積もられていること自体が、記録作業の占めていた比重の大きさを示しています。
うちでも使える?
応用の当たりがつけやすいのは、対面や電話での聞き取りをその場で決まった様式に落とし込む業務です。面談、訪問相談、初回ヒアリング、点検の立ち会いなど、聞くべき項目があらかじめ決まっていて、しかも会話しながら書かなければならない場面ほど、項目別の即時要約と未確認項目のリマインドは効きます。記録の均一化が課題になっている現場でも、検討する価値はあるでしょう。
一方で、この事例の性質から見て相性が悪い場面もあります。会話の中身が毎回大きく変わり、何を記録項目とするか事前に定義できない業務では、要約の枠組みそのものが作れません。紹介先や選択肢がもともと数えるほどしかない業務では、対話形式の候補提示に手間をかける意味は薄くなります。さらに、地域資源データベースにあたる蓄積が乏しい段階では提案の材料が足りず、この事例のように現場から情報を戻す仕組みまで含めて考える必要があります。音声を扱う以上、相手への説明と同意の取り方も設計の一部です。
手はじめとして、直近の面談や相談を1件だけ録音して文字起こしにかけ、今の記録様式の項目がそのテキストからどこまで埋まるかを突き合わせてみてはどうでしょうか。埋まらなかった項目こそ、AIに要約させる前に定義をはっきりさせるべきところです。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を展開する企業。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出する。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社。
新潟県十日町市
出典・参考情報
生成AIで面談業務を効率化し、住民支援の質を高めるリンクワーカー業務支援システムを開発:日立
発行元:株式会社日立製作所
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