実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.13
服薬指導の録音から十数秒で薬剤師の記録を自動作成する生成AIの仕組み
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 聞き取った内容の入力に時間を取られている
- 記録の書き方が人によってばらつく
- 会話をそのまま記録に残したい
どのようなAIの取り組み?
服薬指導の会話を録音するだけで、十数秒で決まった形式の薬歴を自動生成する、音声認識AIと生成AIを組み合わせたAI取り組み
業種
医療IT・電子薬歴システム開発(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
薬局の薬歴入力・服薬指導記録
使ったAI
Azure OpenAI Service(生成AI)とAzure AI Speech(音声認識AI)
主な成果
音声録音から十数秒でSOAP形式の薬歴を自動生成
ウィーメックスは、医事コンピューターや電子カルテ、薬局向けの電子薬歴システムを手がける医療IT企業です。薬剤師が服薬指導のあとに記録を手入力する負担を軽くするため、会話の音声をAzure AI Speechでテキストに変換し、Azure OpenAI ServiceでSOAP形式(主観的情報・客観的情報・評価・計画に分けて書く医療現場の記述作法)の薬歴へ組み立てる「生成AI薬歴入力支援サービス」を開発しました。雑音の多い薬局環境での音声認識の精度と、医療情報システムの指針である3省2ガイドラインへの準拠のしやすさを判断材料に、基盤はAzureへ統一しています。2023年10月の初期版から学術大会への参考出展と実証実験を重ね、ツルハホールディングスやサエラ薬局の協力を得た合計約3,000件の服薬指導を材料に調整を進め、2024年9月に製品版をリリースしました。
出典:ウィーメックスが Azure OpenAI Service を活用した「生成AI薬歴入力支援サービス」を実現、音声録音から十数秒で SOAP 形式のテキストを自動生成 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft(Microsoft Customer Stories)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
薬歴は、患者から聞き取った内容や指導した内容を、ほかの薬剤師が読んでも理解できるように書き残す記録です。以前から薬剤師の要望を受けて省力化への挑戦は続けられ、定型文をあらかじめ用意する方法も試されましたが、記録の中身が患者ごとに異なるため定型化は難しいと判断されています。
編集部の見立てでは、困りごとの中心は入力の分量そのものではなく、聞いた話を第三者が読める形へ組み立て直す編集作業のほうにあったと考えられます。定型文が機能しなかったのは、薬歴の主要な部分が毎回異なる会話でできていて、選ぶだけで済む選択肢に落とし込めないからです。厚生労働省が掲げる「対物から対人へ」という方向と、患者に向き合うはずの時間が記録づくりに吸われていく現実とのずれが、この課題を押し上げたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いているのは、SOAPという医療・看護の現場で共有された記述作法を、そのままAIの出力仕様として据えた設計です。文面そのものは定型化できなくても、主観的情報・客観的情報・評価・計画という枠組み自体は患者が変わっても動きません。会話という自由な入力を、枠の決まった出力へ流し込む形にしたことで、生成AIに任せる仕事が漠然とした要約ではなく、情報の仕分けと整形へ絞り込まれています。
基盤選定では、雑音混じりの音声からどれだけ正しいテキストが得られるかという精度面と、3省2ガイドライン(厚生労働省・経済産業省・総務省が定めた医療情報システムの指針)への準拠という規制面が、同じ土俵で比較されました。薬局の窓口は物音や周囲の声が入りやすく、音声の取りこぼしは記録の質にそのまま響きます。学習に関するルールが明示されていること、問題が起きた際に国内の裁判所を使えることまで判断材料に置かれた点も見逃せません。セキュリティ確保のための非機能要件に開発の時間を吸われない状態をつくることが、機能そのものを磨く時間を確保する近道になっています。
作り方の面では、いきなり製品化へ進まず、学術大会への参考出展で現場の反応を確かめてから実証実験に入る順序が取られました。ツルハホールディングスやサエラ薬局の協力を得た検証では、合計約3,000件の服薬指導を材料に、テキストをSOAP形式へ変換するためのプロンプト(AIへの指示文)の調整が積み重ねられています。応答速度についても、従量課金の共有リソースでは待ち時間にばらつきが出てタイムアウトが起きたため、処理能力をあらかじめ確保するプロビジョニング スループット ユニット(PTU)へ切り替え、インフラにはAzureのベアメタル インフラストラクチャが採用されました。患者を目の前で待たせられない業務では、平均的な速さよりも「遅いときの遅さ」を潰す作り込みが効くという判断が読み取れます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
服薬指導のときに音声を録音するだけで、十数秒後にはSOAP形式のテキストが自動で生成されます。Azure OpenAI Serviceの応答時間は平均10秒未満で安定しており、薬剤師の作業は自分で書き起こすことから、生成された記録を確認して必要な箇所を直すことへ移りました。教育面では、経験の浅い薬剤師が書き方を学ぶ手がかりになり、ベテランが自分の服薬指導の分かりやすさを振り返る材料にもなると期待されている段階です。製品版リリース後の第57回日本薬剤師会学術大会での展示でも高い評価を得て、多くの引き合いが寄せられています。
うちでも使える?
応用が利くのは、口頭のやりとりが業務の中心にあり、その内容を決まった型の記録として残す必要がある仕事です。介護の記録、設備点検の報告、面談の記録のように、書くべき項目の枠が先に決まっている業務ほど、会話から記録への変換をAIに預けやすくなります。逆に、記録の型が担当者ごとにばらばらだったり、書き手の判断そのものが記録の結論になるような文書では、同じやり方をそのまま持ち込むのは難しい。音を拾いにくい現場や、扱う情報に業界固有の規制がかかる場合は、機能の検討より先に、どの基盤なら要件を満たせるかを確かめる段取りが要ります。
まず試すなら、直近の記録を数件そろえ、そこに共通する見出しの構造、たとえば何を聞いたか、何を観察したか、どう判断したか、次に何をするか、を引けるかどうかを確かめてみる。型が引けた業務から、会話の録音を素材に下書きを作らせる小さな検証へ進めるのが現実的です。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ウィーメックス株式会社
1972 年に日本初の医事コンピューター「メディコムMC-1」を発売し、レセプトの電子化をいち早く実現した医療IT企業。電子カルテなどの医事情報システム、遠隔医療ソリューション、総合健康ソリューションなど日本の医療と健康を支える幅広いソリューションを提供する。電子カルテシステムは診療所シェア No.1、医事コンピューターは診療所・病院ともにシェア No.1。薬局向けには 2018 年 6 月に保険薬局用電子薬歴システム「PharnesV-MX」、2023 年 11 月に「PharnesX (ファーネスクロス)」シリーズを発売している。
出典・参考情報
発行元:Microsoft(Microsoft Customer Stories)
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