実施 2023.07 ・ 更新 2026.08.13
電通デジタルが半年で本番化、2年超とみられた生成AIマーケティング基盤
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 試したAIが本番で使えない
- AI開発の期間が読めない
- エンジニア以外がAIを触れない
どのようなAIの取り組み?
生成AIの開発基盤にクラウドAIサービスを採用し、マーケティング支援AIブランドを約半年で本番リリースしたAI取り組み
業種
デジタルマーケティング支援(メディア・広告)
取り組み領域
マーケティング支援AIサービスの開発
使ったAI
Vertex AI・PaLM 2(生成AI開発基盤)
主な成果
2年以上とみられた開発を約半年で本番リリース
電通デジタルは、企業の次世代マーケティング活動を統合的に支援するAIサービスブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」を立ち上げ、その開発プラットフォームにGoogle CloudのVertex AIと言語モデルPaLM 2を採用しました。∞AIは、商品やサービスを知ってもらう「∞AI Ads」、内容を正しく理解してもらう「∞AI Chat」、ロイヤリティを醸成する「∞AI Contents」、顧客インサイトを導き出して営業活動を支える「∞AI Chat for Sales」という4つのソリューションと、それらや外部システム・データをつなぐ基盤「∞AI Marketing Hub」で構成されています。開発は2023年7月に着手し、PoC(本格開発の前に小さく試して見極める検証)を繰り返しながら、約半年で本番環境のリリースに至りました。
出典:株式会社電通デジタル の導入事例 | Google Cloud 発行元:Google Cloud
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
∞AIの構想が動き出した当初、開発チームは最新版の生成AIを対象に約3か月をかけた検証を行っています。そこで直面したのは、求める精度に届かないことに加えて、開発環境そのものが使いにくいという壁でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は、モデルの賢さが足りないことよりも、試した結果を製品へ運ぶ道筋が描けない状態にあったのではないでしょうか。精度の不足は学習や調整で埋められる余地が残りますが、開発環境の使いにくさは、検証のたびに作り直しが発生して時間だけが消えていく構造を生みます。約3か月という検証期間は、その構造のなかで積み上がった時間とも読めます。クライアント企業に提供するサービスとして世に出す以上、精度と同じくらい「いつ出せるか」が重みを持つ。技術選定の問題であると同時に、事業の時間軸の問題でもあったわけです。
どうやって、うまくいったのか
検証で組んだ仕組みをそのまま本番環境へ移せることを、基盤選定の判断軸に据えた点が大きかったと考えられます。他のプロジェクトですでに使われていたVertex AIを選び、PoCで求める性能が得られることを確かめたうえで実装に進む流れをとったため、「試すための実装」と「売るための実装」を二度書く工程が生まれません。開発の速さは作業量を削って稼いだのではなく、作り直しの工程そのものを設計段階で消した結果と見るのが妥当でしょう。
モデルを選ぶ基準を、日本語の性能と後から調整できることの二点に置いた判断も効いています。ファインチューニング(特定の業務向けにAIを再学習させる手法)の機能が備わっていたことで、クライアントごとに異なる個別課題へ、モデルを作り直さずに寄せていく余地が残りました。リリース当時に入力できるトークン数の上限が少なかったという制約も、基盤側の継続的な機能改善によって解消しており、外部の進化を自社サービスの伸びしろとして取り込める構図になっています。
サービスを4つのソリューションに分け、それらをつなぐ役割を∞AI Marketing Hubという別の層に持たせた構成も見逃せません。∞AI Adsはシステム全体をGoogle Cloud上に置く一方、∞AI Chatは社内のセキュリティポリシーとの兼ね合いから他社のクラウドサービス上に構築し、生成AIの部分だけをGoogle Cloud側の機能に連携させています。要件の異なるサービスを一つの基盤に無理やり揃えず、生成AIの機能だけを切り出して接続する形にしたことが、制約を抱えたまま前に進む余地を生んだと言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2023年7月の開発着手から約半年で本番環境のリリースに到達しました。この基盤を使わずに開発していれば2年以上はかかったというのが当事者の評価です。2023年10月にリリースされた∞AI Adsはすでに100社以上で採用され、利用社数は月に10〜20社ほど増加しています。∞AI Chatは国内最大級のポータルサイト運営企業に導入され、販売からアフターフォローまでをチャットで支える運用が動き、他社からの問い合わせも増えています。一方で∞AI Contentsはまだ実験レベルにあり、本格展開はこれからの計画です。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、AIの機能を自社の商品やサービスに組み込んで外部に提供したい場合です。検証環境と本番環境が地続きになっている基盤を選ぶという判断は、開発規模の大小を問わず時間の読みやすさに直結します。日本語の性能と、後から調整できるかどうかを選定の物差しにする考え方も、そのまま持ち込めるでしょう。
一方で、同じようにはいかない条件もあります。既存システムのセキュリティ要件を動かせない場合は、∞AI Chatのように生成AIの部分だけを切り出して連携させる設計が必要になり、その接続の作り込みが別途のしかかります。また、∞AIが短期間で多くの採用に届いた背景には、広告やマーケティングという業種をまたいで横に展開しやすい領域を選んだ事情もあり、業務の中身が会社ごとに大きく異なる領域では同じ広がり方は期待しにくいところです。
まずできることとして、いま検討している、あるいは試作中のAIについて、「本番に載せるとき何を作り直すことになるのか」を開発担当者やベンダーに具体的に聞いてみてはいかがでしょうか。その答えの長さが、そのまま開発期間の読みにくさになって返ってきます。
この事例は2023年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社電通デジタル
2016年7月に設立した電通グループにおける総合デジタルファーム。「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」というパーパスに基づき、生活者に寄り添うクリエイティビティと高度なテクノロジーを軸に、トランスフォーメーション、テクノロジー、クリエイティブ、コミュニケーションという4つのサービスを統合的に提供することで、クライアント企業の成長を支援。デジタル広告以外にも「成長伴走」「変革支援」の2領域で事業を展開し、AIサービスブランド「∞AI」を提供している。
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