実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.13
生成AIで英作文を平均20秒で添削、ナガセが10万人規模に備えた負荷分散
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 答案の採点や添削に追われている
- 人手不足で練習の機会を絞っている
- 利用が集中する時間帯の遅さが心配
どのようなAIの取り組み?
生成AIによる英作文の自動添削で、人手では数日かかっていた返却をピーク時でも平均20秒に短縮したAI取り組み
業種
予備校・学習塾(教育サービス)
取り組み領域
英語教育/英作文の添削
使ったAI
Azure OpenAI Service(GPT-4)
主な成果
ピーク時でも平均20秒で添削、NPSは50
東進ハイスクールや四谷大塚などを運営する株式会社ナガセが、生徒の書いた英作文を生成AIが自動添削する「英作文1000本ノック」を自社で開発しました。高校の英語教育がインプット中心からアウトプット重視へ移るなか、人手による添削では返却までに日数を要し、演習の回数を十分に確保できない状態が続いていました。2022年11月のChatGPT登場を機に構想が生まれ、2023年3月にGPT-4が登場した時点で精度は実用に足ると判断され、開発が始まっています。10万人規模の同時利用を前提としたため、生成AIの実行基盤にはAzure OpenAI Serviceを採用し、全世界約10リージョンを組み合わせて負荷を分散する構成が組まれました。2023年9月の校舎限定トライアルを経て、2024年4月に製品版がリリースされています。
出典:英作文を生成 AI で添削する「英作文1000本ノック」を Azure OpenAI Service で実現したナガセ、生徒から高く評価され NPS は 50 に | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ナガセでは専任の添削員がチーム体制で英作文の添削にあたっていましたが、生徒に返却するまでには4日程度を要していました。その結果、英作文の演習は高校3年生の途中からしか行えず、取り組む頻度も限られます。加えて高校1〜2年の段階では答案のレベルがまだ低く、人が添削すること自体が難しいという事情も重なっていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は添削できる人が足りないことではなく、添削の手間が重いために、練習の機会そのものを配給制にせざるを得なかった点にあります。書く、直される、また書く、という往復が成立しなければ、アウトプット重視への転換は掛け声で終わってしまう。特に高校1〜2年で人の添削が難しいという指摘は、単に量が足りないという話ではなく、量を積むべき時期がまるごと空白になっていたことを意味しているのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
精度が実用の水準に届いたことを確かめてから開発に着手した、その順序の置き方がまず効いています。ChatGPTを実際に触った段階でアイデア自体は生まれていましたが、着手はGPT-4の登場を待ってからでした。生成AIを使うこと自体を出発点にせず、生徒に返す添削として通用するかどうかを先に見極めています。教育の現場では誤った指摘がそのまま学習の妨げになるため、この見極めを飛ばさなかったことの意味は小さくありません。
実行基盤の選定を「速く返せるか、落ちないか」という運用の問題として扱った点も見逃せません。1分あたりのリクエスト処理能力を調べたうえでAzure OpenAI Serviceを選び、全世界約10リージョンを組み合わせて負荷を分散させています。生徒の利用が夕方に集中するという教育サービス特有の偏りを、あらかじめ設計の前提に織り込んだ構成です。生成AIの導入では出力の品質にばかり関心が向きがちですが、待たされないことを主要な設計課題に据えた判断が、教室で実際に使える道具にしたと考えられます。
長年蓄積してきた添削ノウハウを、AIが返す出力の形式そのものに落とし込んだ設計も、この事例に固有の工夫です。問題は基礎から最難関まで5つのレベルに分かれ、それぞれ200問が用意されています。判定はA〜Eの5段階で、B判定以下では正しい答案と講評、アドバイスが示され、A判定では代わりに別解が提示されます。到達度によって返すものを切り替えるという割り切りが、生徒が次に何をすればよいか迷わない画面を成立させています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
トライアルの段階から実施されたアンケートでは、9割の生徒が「継続して使いたい」と回答しています。「親しい人に薦めたいか」という質問では7割が11段階のうち9以上を選び、推奨者の割合から批判者の割合を引くNPS(顧客の推奨度合いを測る指標)は50に達しました。利用が集中する夕方のピーク時間帯でも添削時間は平均20秒に収まっています。三重県津東高校の夏休み補習でも同様の結果が出ており、2024年8月にはプログラミング演習を対象にした自動添削講座の提供も始まっています。
うちでも使える?
この形が活きるのは、正解の型がある程度定まっていて、評価の観点を言葉にできる作業のうち、人手の処理能力そのものが供給量の上限になっている領域です。書類のチェック、記述の講評、初級者向けの一次レビューなど、返すまでの日数が長いせいで実施回数を絞っている業務があれば、検討の余地があります。
一方で、この事例のように利用が特定の時間帯に一斉に集中する使われ方では、モデルの選定だけでは足りず、複数の実行先に処理を振り分ける構成まで含めて考える必要があります。また、返される講評やアドバイスの分かりやすさは、もともと社内に蓄積された指導の型があってこそのものです。判定基準や返し方の型が社内にない状態では、生成AIの素の出力の域を出にくい点は押さえておきたいところ。
手始めとしては、自社で人が書いている講評やコメントを数件そのまま用意し、同じ入力に対して生成AIが返した内容と並べて食い違いを確かめてみる。どこがずれるかが見えれば、型として書き足すべき観点も見えてきます。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ナガセ
1971年に「ナガセ進学教室」としてスタートし、現在は高校生のための予備校「東進ハイスクール」や「四谷大塚」「早稲田塾」などの学習塾、社会人向けの「東進ビジネススクール」など、教育に関する幅広い事業を展開する企業。「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」を企業理念に掲げ、自社でもAI技術を活用した先進的なコンテンツやサービスを開発・リリースしている。
出典・参考情報
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