実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.13
日立、メタバース×AIで危険予知支援 変電所で活動時間20%短縮を実証
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 紙の危険予知活動が形だけになっている
- 過去の事故事例が現場で活かせていない
- ベテラン頼みの安全確認から抜け出したい
どのようなAIの取り組み?
AIエージェントとメタバース上の現場再現を組み合わせ、危険予知活動の所要時間が約20%短縮することを実証したAI取り組み
業種
社会インフラ設備の建設・メンテナンス(建設・土木)
取り組み領域
現場の安全管理/リスク危険予知(RKY)活動
使ったAI
AIエージェント「Naivy」+現場拡張メタバース
主な成果
実証実験でRKY活動の所要時間が約20%短縮
日立製作所と日立プラントコンストラクションは、現場作業を支援する次世代AIエージェント「Naivy」を中核に据えたRKY支援システムを新たに開発しました。RKY(リスク危険予知)は、作業に潜む不安全な状態や行動を事前に洗い出し、労働災害を防ぐための現場活動です。従来は紙やホワイトボードで進められてきたこの活動に対し、新システムは作業現場をメタバース空間へ再現したうえで、過去の災害事例やノウハウ集、直近の作業写真といった別々に管理されてきた情報をNaivyが横断して集め、現場ごとの潜在リスクと対策案を可視化します。日立プラントコンストラクションが顧客の変電所で複数回の実証実験を行い、作業者の安全意識の変化とRKY活動の所要時間短縮を確認しました。
出典:1007a.pdf 発行元:株式会社日立製作所/株式会社日立プラントコンストラクション
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
従来のRKY活動は紙やホワイトボードによる運用が主流で、過去の災害事例やリスク情報を参照できる範囲が限られていました。そこへ労働人口と熟練者の減少が重なり、現場ごとの状況に応じた潜在リスクや最適な安全対策を共有しづらい状態が残っていた、というのがこの取り組みの出発点です。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は安全情報が足りないことではなく、蓄積された情報が「いま目の前にある作業」と結びつく形になっていなかったことにあります。災害事例集もノウハウ集も作業写真も、それぞれ別の場所に別の目的で保管されていれば、限られた活動時間の中で必要な一件を引き当てるのは難しくなります。その結果、リスクの見落としや思い込みは個人の注意力の問題として扱われやすい。ホワイトボードの前で交わされる会話の質が、その場に集まった人の記憶と経験に左右される構造そのものが、解くべき課題だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
作業現場をメタバース空間に再現し、そこへ情報を集約するという設計が、この取り組みの軸です。過去の災害事例、ノウハウ集、直近の作業写真といった従来はばらばらに管理されていた情報ソースを、Naivyが統合・検索して同じ空間上に可視化します。情報を探す場所を文書棚ではなく現場の風景に揃えたことで、作業者は「どこで、何が起こりうるか」を位置と結びつけて捉えられる。リスクを自分ごととして考えられる状態を、意識づけの呼びかけではなく画面の作りで用意した点が、この設計の要と考えられます。
作業者が出した対策案をAIが置き換えるのではなく、補強する形で提示する組み立ても効いています。挙げられているクレーン作業の例では、転倒リスクに対して作業者が発案した敷鉄板での養生に対し、地盤が柔らかい可能性を指摘したうえで、より広い敷鉄板を敷くという具体案をNaivyが上乗せします。答えを先に出さず、現場の判断を起点にして足りない視点だけを足す。この順番が、提案を受け取る側の主体性を損なわないまま対策の精度を引き上げる働きをしているとみられます。
AI技術を持つ側と現場ノウハウを持つ側が組んで開発した体制も、この仕組みを成り立たせている要素です。日立製作所がグローバルに蓄積してきたドメインナレッジとAI技術に、日立プラントコンストラクションが発電所や受変電設備の建設・メンテナンスで培ったノウハウを重ねる分担がとられています。加えて、作業者とNaivyの協働から得られる新たなドメインナレッジを蓄積してNaivyの進化につなげる構想が置かれており、使われるほど提示内容が現場に寄っていく循環を初めから見込んだ組み立てになっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
顧客の変電所で行われた実証実験では、潜在リスクへの気づきや具体的な対策の積極的な発案といった、作業者の安全意識の向上が確認されました。過去の災害事例やノウハウ集、作業写真をNaivyが即時に解析・抽出することで気付きやすさが高まり、必要な情報へのアクセスが速くなったことからRKY活動の所要時間は約20%短縮、意思決定もスムーズに進んでいます。作業者アンケートでは、災害事例やノウハウ集の分かりやすさ、作業写真による不安全行動の発見しやすさ、メタバース空間での安全・危険な場所の直感的な把握が評価されました。あくまで実証段階の結果ではありますが、安全性と効率性の両立が成り立ちうることを示す材料になっています。
うちでも使える?
応用が利きそうなのは、事故やトラブルの記録が部署ごと・書式ごとに分かれて残っていて、なおかつ危険の中身が場所や当日の状況によって変わる現場です。この事例の肝は高度な予測ではなく、散らばっていた情報を作業の場面に紐づけて出し直したところにあるため、点検や設営、搬入作業のように毎回条件が変わる業務とは相性が良いと考えられます。
一方で、そのまま持ち込むのは簡単ではありません。現場をメタバース上に再現するには対象現場のデータ収集と再現の工程が必要ですし、提示されるリスクの妥当性は、突き合わせる災害事例やノウハウ集がどれだけ形になって残っているかに左右されます。記録が個人の頭の中や口頭の申し送りにとどまっている段階では、AIに解析させる材料そのものが不足します。
まず試すなら、直近の作業写真を数枚並べ、過去のヒヤリハット記録のどれと結びつくかを現場の数人で突き合わせてみてはいかがでしょうか。手元の記録が「場所」と結びつく形になっているか、その一点だけでも見えてきます。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を展開。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出する。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点の連結子会社は618社。本事例では、社会インフラ設備の建設・メンテナンスを手がける株式会社日立プラントコンストラクションと共同で、次世代AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」を活用したRKY(リスク危険予知)支援システムを開発した。
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