実施 2024.07 ・ 更新 2026.08.13
AIアバターが球場VIP席で試合解説、福岡ソフトバンクホークスが1か月半で公開
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 新しい取り組みが試作で終わってしまう
- デジタル施策が来場客に響かない
- 案内や解説を人手に頼りきり
どのようなAIの取り組み?
球団OBの姿と声を再現したAIアバターが進行中の試合をその場で解説し、球場VIPルームでの観戦体験を作り替えたAI取り組み
業種
プロ野球球団(スポーツ・エンタメ)
取り組み領域
球場VIPルームの来場者体験・法人営業
使ったAI
AIアバター(Azure OpenAI Service、映像・音声合成)
主な成果
2024年の40試合分と2025年シーズンまでの予約が充足
福岡ソフトバンクホークスは、本拠地みずほPayPayドーム福岡のVIPルーム一室に、球団OBで野球解説者の五十嵐亮太氏を元にしたAIアバターを設置しました。大型ディスプレイに映る五十嵐氏の姿が、利用者の質問への回答、選手情報の一言コメント、目の前で進む試合の解説や応援を、本人の声と身振りで話します。開発が始まったのは2024年5月で、翌6月に日本マイクロソフトの紹介で開発パートナーのアバナードが参画。会話の生成にAzure OpenAI Service、映像と音声の合成にAzure AI Servicesを用い、1週間のスプリントを5回重ねて同年7月にリリースされました。設置場所は日本マイクロソフトとのネーミングライツ契約により「Microsoft Premium Suite」と名付けられ、法人向けの商談拠点を兼ねる場として運用されています。
出典:福岡ソフトバンクホークスが Azure の AI 機能を活用し、みずほPayPayドーム福岡に「AI アバター」を設置、新しい「球場での野球観戦の楽しみ方」を実現 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
球団はソフトバンクグループの一員としてスタジアムDXに以前から取り組んできましたが、テスト段階で止まり実装まで進まないものが少なくありませんでした。技術面でいかに優れていても、ドームに足を運ぶ人が楽しめなければ意味がない、という線引きがそこにはあります。同時に、ソフトバンク竹芝本社にあるEBC(Executive Briefing Center、顧客に自社の提案を紹介する法人向け施設)のサテライトを球場内に置きたい、というグループ側の要望も以前から存在していました。
困りごとの本質は、技術の不足ではなく、来場客に楽しんでもらう娯楽と、グループの商談拠点という別々の要求を一つの形に収める答えがなかったことにあるのではないでしょうか。AIアバターという案がこのとき実装まで進んだのは、野球好きの利用者が面白がる対象であると同時に、最新技術を体感してもらう展示物としても成り立つ、その二重性が見えたからだと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
3Dモデルを作らず、本人の映像そのものを学習データにする方式を選んだことが、この企画を現実の日程に乗せた要因でしょう。収録は東京のスタジオで約2時間、素材は約30分の映像と約15分の音声にとどまり、学習は音声だけなら1時間程度、映像を含めても3〜4日で完了しました。実在の人物を題材にする取り組みでは本人のスケジュール確保が最大の制約になりますが、負担を数時間まで圧縮した設計は、その制約を実質的に外しています。加えて、学習される本人が承認の言葉を読み上げたデータがなければ学習が始まらない仕組みが備わっており、許諾を運用上の約束事ではなく技術側の条件として固定した点も見逃せません。
外部データの取り込み方をプル型からプッシュ型へ切り替えた判断も、体験の質を大きく左右しています。当初はアバター側から試合データを取りに行く方式で、1分ほどの遅れが生じていました。データを送り出す側から流す形に変え、生成AIのチューニングと不要な処理プロセスの削除を重ねることで、遅延はおよそ10秒まで縮んでいます。目の前のプレーについて話すという体験では、遅れがそのまま違和感に直結するため、この10秒への到達こそが企画の成立条件だったと見ています。
短い区切りで作りながら決めていく進め方も効いています。1週間のスプリントを5回、仕様検討の開始から1か月半で最初のリリースに到達し、その裏では出演者の人選が並行して動いていました。現役選手の起用をシーズン中の時間確保の難しさから見送り、知名度のあるOBへ切り替えた判断は、日程の制約を企画の魅力を落とさずに回避した例といえます。負荷の重い映像生成をクラウド側で処理し、設置端末の負担を最小化した構成も、球場という現場に置く前提から逆算された選択。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
完成したアバターは、話し方の抑揚やスピード、リップシンクが整い、ときおり瞬きもする仕上がりで、本人が目の前にいるようだと評価されています。最初に利用した企業の担当者が感動したことから口コミが広がり、2024年シーズンの40試合分に加えて2025年シーズンまでの予約が埋まる状況となりました。ソフトバンクグループ全体の見込客創出への貢献という位置づけも生まれています。今後は他の部屋への展開や、公式アプリの顧客IDと紐付けた飲食・物販のオーダーなどが検討されています。
うちでも使える?
この手法が生きるのは、特定の人物の語り口そのものに価値があり、その人を常時その場に置けない、という条件がそろう場面です。映像と音声の収録が2時間程度、学習が数日で済む方式であれば、著名人でなくても、社内のベテラン説明員や施設のガイド役を題材にできる余地があります。
一方で、応用が難しい条件もはっきりしています。本人の姿と声を扱う以上、承認と利用範囲の取り決めが前提になり、契約が終わった後の扱いまで決めておく必要があります。またこの事例の面白さは、刻々と変わる試合データに乗って話せる点にあり、参照できるデータが日次更新の資料しかない業務では同じ驚きは生まれにくいでしょう。設置が1室に限られていたように、体験できる人数が絞られる形では、効果の確かめ方も口コミのような間接的なものになります。
まず試すなら、自社で人が同じ内容を繰り返し話している場面を一つ選び、その説明が何のデータを見ながら行われ、どれくらいの鮮度を必要としているかを確かめるところから。鮮度の要件が見えれば、アバター化に向くかどうかの判断もつきます。
この事例は2024年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
福岡ソフトバンクホークス株式会社
出典・参考情報
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