実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.13
日本郵政が内製した生成AIポータル、半年でミニアプリ70個超
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内にAIを配っても使われない
- 現場の困りごとが予算の壁で止まる
- 使い方の研修から始めるのが負担
どのようなAIの取り組み?
プロンプトを書かずに使える用途別の「ミニアプリ」を内製で積み上げ、社内に生成AIを広げたAI取り組み
業種
郵便・金融グループ持株会社(公共・公益事業)
取り組み領域
全社共通の汎用業務/社内DX
使ったAI
Azure OpenAI Service(生成AI)
主な成果
半年でミニアプリ70個超、実行回数は月間2万回超
日本郵政は、グループ全体のDXを担うJPデジタルと、社内に設けたDX戦略部を軸に、生成AIの活用を内製で進めています。2024年6月に公開した生成AI活用ポータルは、要約やメール作成といった用途ごとに機能を切り分けた「ミニアプリ」を並べた画面で、利用者はアプリを選んで文章を貼り付け、ボタンを押すだけで結果を受け取れます。基盤にはAzure OpenAI Serviceを採用し、JPデジタルが管理するAzure環境の内側に閉じた形で構築しました。マイクロソフトは、厳しいセキュリティ確認への対応と技術面の助言を担う立場で関わっています。同年10月には画面を改善したβ版を公開し、次の段階として社内データを参照させるRAG(外部データを検索してAIの回答に活用する仕組み)の環境を整え、評価・検証に入っています。
出典:DX 文化への変革に取り組む日本郵政。Azure OpenAI Service で生成 AI 活用ポータルをリリースし、半年で 70 以上のミニアプリを作成 | Microsoft Customer Stories 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
創業から150年を超え、従業員は約40万人。日本郵政グループでは、長く積み上げてきた仕事の進め方そのものが、スピードを重視して試行錯誤を繰り返すDXの足枷になっていた面がある、と経営側も認めています。新しい技術要素の取り込みが遅れがちだったという自己認識もありました。IT活用の場面では、これまでベンダーへ導入を依頼し、時間をかけて構築してユーザーに届ける流れが基本で、現場が課題を抱えていても予算や投資対効果の説明という高いハードルが立ちはだかっていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な問題は「生成AIをどう使うか」以前に、思いついた困りごとを試せる形にするまでの距離が遠すぎたことにあります。要件を固め、投資判断を仰ぎ、外部に発注するという道筋しかなければ、担当者一人が感じている小さな不便は着手の順番が回ってこない。生成AIは、その距離を縮めるための手段として位置づけられたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
用途ごとに小さなアプリへ切り分け、利用者にプロンプト(AIへの指示文)を書かせないという設計が、この取り組みの起点になっています。要約したい文章を貼り付けてボタンを押せば結果が返る形にすれば、「プロンプトとは何か」を学ぶ入口で足踏みする人が生まれません。経営幹部から出た要望も、研修やトレーニングを受けないと使えないものではなく、スマートフォンのアプリと同じように誰でも扱えるものにしてほしいというものでした。汎用の対話画面をそのまま配るのではなく、使い方を考える負担を作り手側が引き受ける割り切りです。
内製に踏み切った判断は、機能の作り込み以上に速度の面で効いています。利用者に話を聞いてその場でミニアプリを作り、使ってもらって出た要望をそのまま改良へ反映するというサイクルは、外部に発注して要件を固める進め方では成立しません。ミニアプリがすべてAzure OpenAI Serviceを使ったプロンプトベースで作られていることも重要で、作る側の敷居が下がったぶん、開発の担い手を専門チームの外へ広げる余地が生まれました。実際、日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険からグループ内インターンとして加わったメンバーが、自分たちの業務を題材にミニアプリを作る側に回っています。
広め方を号令ではなく口コミに委ねた点も、この取り組みらしい選択です。便利だと感じた人が率直な感想を周囲に伝える形をとると、関心を持つのは課題感を抱えている人から順になり、本社の枠を超えて支社からの相談にもつながりました。週に100回以上使うユーザーを100名以上にするという目標も、単なる利用量の管理ではなく、伝道師となる担い手を数える指標として置かれています。基盤をJPデジタルのテナントのAzure環境に閉じ、マイクロソフトが細かなセキュリティ確認へ迅速に応じたことで、安全安心を最重視する組織でも歩みを緩めずに済んだ構造だと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
α版の公開から2024年12月までの半年間で、ミニアプリは70個を超えました。10月のβ版公開直後の1カ月間には実行回数が月1万9,000回に達し、直近では月間2万回を超えています。利用者アンケートでは回答者の8割が効果を実感したと答え、週100回以上利用するユーザーを100名以上にするKPI(重要業績評価指標)も130名で達成しました。グループ内インターンのメンバーだけで20個のミニアプリが作られています。2025年春には本格リリースし、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険でも利用できる環境にする計画で、全国の郵便局への展開方針も検討されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、部署をまたいで似た作業が繰り返されている組織です。要約、メール作成、Excel関数の組み立て、文書の書き換えといった用途は業種を選ばず、入力と出力の形が決まっているぶん、小さなアプリへ切り出しやすいという性質があります。反対に、案件ごとに前提が変わり、なぜその答えになったのかを追跡する必要がある業務では、指示文を隠した簡易アプリは扱いにくい。日本郵政が社内データを参照させるRAGを別のステップとして切り離し、評価・検証から入っているのも、そこの難しさの表れと読めます。
もう一つの前提は、作り手が社内にいることです。要望を聞いてその日のうちに形にできる体制がなければ、この速さは再現できません。まず試すなら、自部署でよく使い回されている指示文や定型文を一つ選び、担当者が入力欄に貼り付けるだけで完結する形に整えてみる。使った人の反応を、その場で次の版へ反映できるかどうか。そこが分かれ目になります。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本郵政株式会社
全国約2万4000の郵便局ネットワークを基盤に、リアルな郵便局とデジタル上の体験を融合し、お客様と地域社会を支える「共創プラットフォーム」を目指す日本郵政グループの持株会社。創業150年を超える歴史を持ち、従業員は約40万人。2021年にグループ全体のDXを支援するグループ会社「JPデジタル」を設立し、2023年度には日本郵政にDX戦略部を設置。2024年度から生成AIの活用に着手し、内製化による生成AI活用ポータルの開発・展開を進めている。
出典・参考情報
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