実施 2024.02 ・ 更新 2026.08.13
口コミ分析に生成AIを取り入れた店舗支援SaaS、日本語の前処理を省いた開発
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ネットの口コミを読む時間がない
- 返信文を毎回考えるのが負担
- 顧客の声を改善に活かせていない
どのようなAIの取り組み?
生成AIによる口コミ分析と返信サポートを自社の店舗支援SaaSに組み込み、店舗スタッフの作業負荷軽減につなげたAI取り組み
業種
店舗支援SaaS(IT・通信)
取り組み領域
口コミ分析・店舗向けマーケティング支援
使ったAI
Vertex AI(生成AI・LLM開発基盤)
主な成果
口コミ返信や投稿文作成など店舗スタッフの作業負荷を軽減
インバウンド向けメディアと店舗支援の二事業を手がける株式会社movは、Googleマップをはじめ国内外19サイトの口コミを集約して可視化・分析する店舗向けSaaS「口コミコム」を2020年に正式リリースしました。生成AIの活用検討は2022年に始まり、当初はGoogle CloudのAutoMLなどの機械学習で検証を重ねています。2023年にVertex AIが公開されると、これをAI開発の基盤として採用し、口コミコムを作り直す判断を下しました。開発は2023年春に検証を兼ねて動き出し、夏から機能単位で順次公開、2024年2月末にメジャーバージョンが出ています。口コミの感情判定や返信文・投稿文の作成支援、言語判定などを提供し、分析用の口コミデータをBigQueryに集める仕組みも合わせて構築されました。
出典:mov の導入事例 | Google Cloud 発行元:Google Cloud
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
口コミコムに生成AIを組み込む前提にあったのは、店舗の経営者が本業に追われ、ウェブ上に積み上がっていく口コミを読む時間を取れないという事情です。店舗情報の更新や追加でも、作業ミスと工数が発生していました。mov自身も、データにどのような文脈が含まれているかを可視化する機能を他社のクラウド基盤で開発した経験がありますが、期待した成果には届いていません。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は口コミの量そのものではなく、すでに手元にある評価情報が現場の次の一手に変換されないまま滞留していた点にあります。人手でレポートにまとめる案も検討されていましたが、それでは読む負担が店舗から代行者に移るだけで、店舗が動けない状態は変わりません。読む工程ではなく、読んだ結果を判断材料の形へ変える工程を機械側に持たせる必要があったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
日本語の口コミを扱ううえで避けて通れない分かち書きやベクトル化といった前処理を、開発側で抱え込まずプラットフォームに預けた判断が、この取り組みの起点になっています。学習済みモデルを土台にした機械学習機能が揃っているため、口コミの感情を判定するネガポジ分析はプロトタイプから小さく立ち上げられ、Vertex AI StudioやGoogle Cloudのコンソール上で検証も手軽に回せます。この身軽さが、2023年夏から機能ごとに順次公開し、翌年2月のメジャーバージョンへ積み上げていく開発の進め方を成立させたと考えられます。
分析対象のデータを、AIを動かす場所と同じクラウド上にあらかじめ揃えていたことも効いています。BigQueryやDatastoreは2022年以前から使われ、行動ログや口コミの傾向を社内向けのBIツールとして眺める土台がすでにできていました。そこへSQLから大規模言語モデルを呼び出せるBigQuery MLが加わり、専門知識を持たないマーケティングやカスタマーサポートの担当者でもデータ分析に手を伸ばせます。AIの使い手をエンジニアに閉じ込めない構えは、機能改善の着想を現場側から拾い上げる回路として働いている、というのが編集部の読みです。
基盤の選定基準を、機能の多さではなく預けるデータの扱いに置いた点も見逃せません。企業向けにサービスを提供する立場では情報漏えいが顧客のビジネスへ直接跳ね返るため、学習に使われるデータをコントロールできるかどうかが採用の決め手になりました。運用面では、億単位まで蓄積した大規模言語モデル向けのデータをすべて順番に処理すると時間が足りないため、並列処理を組み合わせる工夫が重ねられています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
口コミコムを利用する企業の店舗担当者からは、口コミを見るのが楽になった、口コミの返信や投稿文の作成といった作業の負担が大幅に軽くなった、といった評価が出ています。店舗によっては、品質・サービス・清潔さ・雰囲気の4観点にネガティブとポジティブを掛け合わせた8パターンで分析し、その結果を顧客と共有して店舗運営に反映することで、顧客体験の価値向上につなげた例も生まれています。開発側では、前処理の手間から解放されたことによる効率化と、大量データの高速処理が確認されました。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、顧客の声が口コミサイトやアンケートの形ですでに溜まっていて、読み切れないまま置かれている業務です。第三者が勝手に書き足してくれるテキストは、自社でデータを作る手間がかからないぶん、分析の初期投資も小さく収まります。良し悪しの判定のように評価軸がはっきりした処理から着手し、機能単位で少しずつ出していく進め方も取り入れやすいはずです。
一方でこの事例が回っているのは、19サイトから口コミを集めてくる連携部分と、それを蓄積する分析基盤を自前で持っているからでもあります。顧客の声が手元の紙やExcelにしか残っていない場合や、評価の観点が店舗・担当者ごとにばらばらで共通の分析軸を決められない場合は、同じ形には収まりません。まずは自社の店舗やサービスに寄せられた直近1か月分の口コミを、良い評価と悪い評価の2列に分けてみてください。人の手で迷わず分類できる程度に軸が定まるかどうかが、AIへ渡せるかどうかの分かれ目になります。
この事例は2024年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社mov
「日本のポテンシャルを最大化する」という使命に基づき、インバウンド事業と店舗支援事業の2つの事業を展開。インバウンド事業ではインバウンド対策支援としてコンサルティングやデジタルマーケティング支援、プロモーション設計などを行い、「業界最大級のインバウンドビジネスメディア 訪日ラボ」を運営。店舗支援事業では店舗事業者向けにAI店舗支援SaaS「口コミコム」を提供している。
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