実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.13
電話自動応答AIの基盤をGeminiへ移行、返事の認識精度85%→97%
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 電話が鳴りやまず本業が止まる
- 予約の名前を聞き間違えて困る
- 夜間や休日の電話を取りきれない
どのようなAIの取り組み?
音声を文字に書き起こさず直接扱えるGeminiへ運用基盤を移し、電話応答の聞き取り精度と応答の速さを両立させたAI取り組み
業種
対話型音声AI SaaS(IT・通信)
取り組み領域
電話応答・予約受付の自動化
使ったAI
Gemini(音声を直接扱う生成AI)
主な成果
肯定・否定表現の文脈認識率が85%から97%へ向上
株式会社IVRyは、電話の一次応答を担う対話型音声AI「アイブリー」を提供しています。2020年6月の提供開始時点から、高額な機器投資を前提にしていた従来の音声自動応答を、飲食店や薬局といった小規模店舗でも使える価格帯に置き換える設計をとってきました。転機となったのが2023年の生成AIの登場で、まず自然言語で受け答えするAIを組み込み、複数のモデルを比較したうえで、2024年には運用基盤そのものをGoogleの生成AIであるGeminiへ移しています。音声をテキストに書き起こす工程を挟まず、そのままモデルへ渡す構成に変えたことで人名や商品名の聞き取りに手が入り、処理の速い軽量モデルを組み合わせることで、電話で不可欠な応答の速さも確保する構成になっています。
出典:株式会社IVRyの導入事例 | Google Cloud 発行元:Google Cloud
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ボタンを押して番号を選ぶ従来型の電話自動応答は、レストランの予約で名前を伝えるような場面に対応しきれません。音声でのやり取りに踏み込もうとすれば、レストランやホテルなど業種ごとに専用のシステムを組む必要があり、しかも音声を文字に書き起こしてから処理する方式では、発音や表記が似ていたり口ごもったりした人名で誤りが生じやすい状態が続いていました。
困りごとの本質は、電話が取れないことそのものよりも、業種ごとに作り込まなければ会話が成立しないという構造にあったのではないでしょうか。作り込みが前提である限り、開発費を回収できる規模の相手にしか届けられず、電話対応に人手を割けない小さな事業者ほどサービスから遠ざかります。学習データなしで多様な業種へ横展開できるモデルを設計できるようになったことが革命的だと語られているのは、精度の話である以上に、この費用構造が崩れたことを指していると考えられます。
どうやって、うまくいったのか
音声を文字に書き起こしてから処理するという中間工程を外し、モデルへ音声をそのまま渡す構成に切り替えた点が、この移行の中心にあります。書き起こしを挟む方式では、聞き取りにくい人名がいったん文字として固定された時点で誤りが確定し、後段のAIがどれだけ賢くてもその誤りを引きずります。音声を直接扱えば、発音そのものから最も近い候補を選び直せます。中間データの形式を一つ減らすだけで誤りの入り込む余地が減るという、地味ながら効きの大きい設計判断です。
一つの大きなモデルに会話全体を任せず、インテント(相手の用件・意図)の認識フローを細かく分岐させ、複数のAIコンポーネントへ処理を分散させた構成も効いています。分岐ごとに軽い処理を割り当てれば、待ち時間を抑えたまま日時などの必要情報を同時に取り出せるためです。電話は数秒の沈黙でもかけた側が不安になる媒体で、賢さより速さが体験を左右する場面が多く、処理の速いモデルが揃う基盤を選んだ判断は、この分散構成と表裏一体だったと見ています。
生成AIの出力をそのまま利用者に返さず、いったん構造化データとして受け取り、そこから先は自社のルールベースで処理する切り分けも見逃せません。確率的にしか振る舞えないモデルを、業務システムとして扱える形に閉じ込める考え方です。さらに、仮想エージェントが実際に電話をかけて100パターン近くの会話を最後まで通すエンドツーエンドのテストをCI(変更のたびに自動でテストを走らせる仕組み)へ組み込み、他サービスや別モデル、別リージョンへの切り替え先も用意されています。新しい業種へ広げるたびに会話が壊れていないかを人手で確かめずに済むこの体制が、横展開の速度を裏側で支えているのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
「はい」「OK」のように短く、場面によって意味の変わる肯定・否定表現の文脈認識率は、従来の生成AIでの85%からGemini移行後は97%へ上がり、人名や商品名など固有名詞の認識精度も大きく改善しています。2025年8月時点で累計アカウント発行数は40,000件以上、累計着電数は6,000万件を超え、日本標準産業分類の中分類99業種のうち96業種で利用されています。2025年7月にはレストラン予約検索のTableCheckと業務提携し、提携店では24時間365日の電話予約が可能となり、予約のタスク完了率は約8割に達しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、かかってくる電話の用件がある程度決まっていて、そのなかに人名・店名・日時のような取り違えの許されない語が繰り返し出てくる業務です。予約の受付、営業時間や在庫の確認、担当者への取り次ぎといった範囲なら正解が一つに定まるため、AIの答えを構造化データとして受け取り、最終的な判断は自社のルールに委ねる形へ落とし込みやすいはずです。
一方、相手の事情を聞き取りながら判断そのものが変わる相談業務や、一度の聞き間違いが直接損害につながる領域では、同じ構成をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。この事例で効いているのはモデルを選ぶ目よりも、100パターン近い会話を自動で通し続けるテストや切り替え先の用意といった運用側の作り込みで、そこまで自前で抱えられないなら、既製のサービスを使いながら自社向けの設定に力を注ぐほうが現実的です。まずは直近でかかってきた電話を数本思い返し、AIが一語でも取り違えたら仕事が止まる言葉がどこに現れるか、確かめてみてはいかがでしょうか。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社IVRy
2019年3月設立。生成AIを活用した対話型音声AI SaaS「アイブリー」を開発・提供。24時間365日稼働するAIが電話応答を要約・分析し、FAQ自動生成、意図分類、KPIモニタリング、営業支援システムやCRM、主要データ基盤との即時連携を可能にしている。Geminiの採用により高精度な音声認識と迅速な応答、幅広い業種への汎用性を実現し、レストランなどの小規模事業者から大企業のコールセンター、全国チェーンのブランドまで導入が拡大している。
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