実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.13
創業2年でEV発表、ソニー・ホンダモビリティが挑む車内対話AIの共同開発
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 音声で操作するAIの誤認識が多い
- AIとの会話がすぐ途切れる
- 外部パートナーとの開発が噛み合わない
どのようなAIの取り組み?
生成AIを使った対話型パーソナルエージェントを車に載せ、人と雑談できるEVの開発に取り組んだ事例
業種
自動車・EV開発(製造業)
取り組み領域
車載システム開発/対話型エージェント
使ったAI
Azure OpenAI(生成AI・音声AI)
主な成果
創業から約2年で対話AIを搭載したEV「AFEELA 1」を発表
ソニーグループとホンダの共同出資により2022年に設立されたソニー・ホンダモビリティは、開発中のモビリティブランド「AFEELA」に、生成AIを活用した対話型パーソナルエージェント「AFEELA Personal Agent」を搭載する方針を決めました。指示に答えるだけでなく雑談も交わせる相手をつくるため、開発パートナーにマイクロソフトを選び、両社のエンジニアが一つのチームを組んで開発にあたっています。音声認識と発話にはAzure OpenAIを使い、車内で交わされた会話のデータはAzure Cosmos DBに蓄積して次の応答に活かす構成です。意図理解の精度を高める学習用データセットと評価用パイプラインの整備はマイクロソフトのデータサイエンティストとエンジニアが担い、スクラム開発で数週間単位の改善を重ねて、2025年1月のCESで「AFEELA 1」が発表されました。
出典:AFEELA 開発の舞台裏。ソニー・ホンダモビリティが Azure OpenAI で「相棒のような」対話型パーソナル エージェントの搭載を実現 発行元:Microsoft
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
自動運転が現実味を帯びるほど、運転から解放された時間を車内でどう過ごすのかという問いが重くなります。ソニー・ホンダモビリティは移動を手段ではなく目的と位置づけ、電車や飛行機よりも私的な空間である車ならではの価値を探していました。これまでのAIエージェントは音声やテキストで指示を受けて処理するタスク型が中心で、雑談を続けようとすると話題が偏るという壁もありました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は会話性能そのものよりも、AIと人が共有している情報の乏しさにあったのではないでしょうか。指示を正確に処理するだけの関係では、そもそもAIの側から話しかける理由が生まれません。何をどこまで共有する相手として設計するのか——その一点が、対話が続くかどうかを分けていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
会話の速さを最優先に据えた設計が、この取り組みの土台にあります。車内のエッジ側で会話をやり取りし、その内容を常時接続のインターネット経由でAzure Cosmos DBへ蓄積して次の応答に使う構成は、応答の遅れが会話の自然さを直接損なうという判断から逆算されたものと考えられます。エッジ側とクラウド側では設計の勘所が異なり、開発初期には視点の違いから意見のぶつかり合いも起きています。その摩擦を一つのチームとして詰め切った過程こそが、低いレイテンシーという譲れない条件を両者の共通言語に変えた場面だったのではないでしょうか。
音声認識と意図理解を別々の課題として切り分けた進め方も効いています。聞き取りの土台には複数社の音声認識エンジンを比較したうえで認識率の高いAzure AI SpeechのEmbedded Speechが選ばれましたが、聞き取れても「これ止めて」が音楽なのか動画なのか車の機能なのかを判別する問題は残ります。この意図理解には、Azure Machine Learningを用いた学習用データセットと評価用パイプラインの整備をマイクロソフトのデータサイエンティストとエンジニアが担い、ソニー・ホンダモビリティ側のAIモデル開発と組み合わせる分担が採られました。評価の仕組みを先に用意する順番は、精度の議論を担当者の感覚から切り離す効果を持ったと見ています。
会話の材料を音声の外へ広げた発想は、この事例ならではの工夫です。車に搭載したカメラやセンサーのデータを取り込み、「夕日がきれいですね」のようにエージェントの側から話しかけられるようにしたことで、話題が偏るという壁に正面から手が打たれました。生成AIの進化の速さを織り込み、AIモデルを柔軟に変更できるシステム構成にした点も見逃せません。数週間スパンで目標を決めてやりきるスクラム開発の採用も、正解が最初から存在しない対話品質を扱ううえで、計画どおりに作ることより試して直すことを優先した選択と読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年1月のCESで、対話型パーソナルエージェントを搭載した同社初のEV「AFEELA 1」が発表されました。マイクロソフトのプリセールスチームによる約1年間の技術支援と、2024年9月に立ち上がった共同開発チームの協働により、創業から約2年という期間での開発が進んでいます。意図理解は雑談ができる水準まで到達し、さらなる向上が次の目標に置かれました。納車予定は米国が2026年中旬から、日本は2026年中です。
うちでも使える?
応用の余地が大きいのは、応答の速さが体験の良し悪しを直接左右する場面です。手元の端末側で処理する部分とクラウドに置く部分を先に切り分け、どこまでの遅れなら許容できるかを数値で決めてから作り始める進め方は、音声受付や店頭案内など規模の小さい取り組みでも真似できます。聞き取りの精度と意図の判別を別の課題として扱い、それぞれに評価の物差しを用意しておく考え方も同じです。
一方で、この構図をそのまま持ち込みにくい領域もあります。会話の履歴を積み上げて個人に寄り添うという設計は、同じ利用者と長く付き合う製品だからこそ意味を持つもので、接触が一度きりで終わる問い合わせ対応では蓄積の利点が出にくく、集めたデータの扱いを説明する負担だけが残りかねません。カメラやセンサーの情報を会話に混ぜる工夫も、そもそもその機器が現場にあることが前提です。まずは自社で使っている音声入力や自動応答について、うまくいかなかった場面を一週間分だけ集め、聞き取りの誤りと意図の取り違えのどちらが多いかを分けて数えてみる。手を入れる順番は、その内訳が教えてくれます。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:音声AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
マイクロソフト
Azure OpenAI Service、Azure AI Speech、Azure Machine Learning、Azure Cosmos DB、Azure DevOps などのクラウド/AI サービスを提供するテクノロジー企業。プリセールスチームやデータ サイエンティスト、エンジニアによる技術支援・共同開発も行う。
ソニー・ホンダモビリティ株式会社
出典・参考情報
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